11, Jun 2010


&ARTは「京都で活躍するアーティストと社会をつなぐ」ことを目的としたWEBサイトで“アーティストの紹介”、“アーティストによるリレーブログ”、“京都のアートについての特集記事”の3コンテンツを中心に展開している。
私自身がアーティストとして活動しており、本サイトを提案した経緯も、1アーティストとして、このようなメディアの必要性を感じたからだ。
サイトを立ち上げた理由は大きく分けて2つある。
まず一つ目は現在、現代アート、舞台芸術、音楽などの分野で活動する数多くのアーティストが、京都を拠点として全国、そして世界を舞台に活躍しているにも関わらず、京都のリアルタイムなアートを発信するメディアがなかったこと。
私は東京発信のメディアの影響も受けて育ったし、それら自体に疑問を持っているわけではない。しかし「東京の企業に所属しているアーティストや、海外のアーティストには興味を持ちながら、同じ街で活動し、生活している優れたアーティストを知らない」というのは、やはり自然なことではないと思う。
&ARTへのアクセスは当然ながら京都市内のユーザーが最も多いが「京都の人が京都のアーティストを知る」ということは「地域の文化のポテンシャルを知る」ことであるし、個々の生活をよりよいものにする可能性を持っているのではないだろうか。

関西・関東で活躍する京都の作家 ヤマガミユキヒロ氏の作品「SynchroniCity」
Photo by OMOTE Nobutada

京都を代表するアーティストかなもりゆうこ氏の映像インスタレーション「ヴィオレ」
photo by 北岡慎也
もう一つの理由としては、(これはWEBというメディアで立ち上げた理由にも関わってくるが)「文化の在り方を変えたい」という思いだ。
以前ドイツから留学してきた友人と、ある京都のミュージシャンのライブに行ったとき、そのミュージシャンの音楽がひどく気に入った友人が「音源を購入したい」言った。それに対して私は「持っているから貸してやる」という意味のことを伝えたが、友人が「このアーティストが好きで支援したいから購入したいんだ」と答えたことが今でも印象に残っている。
私は海外で生活した経験はないので国籍で比較することはできないが、少なくとも私の周りでは、好きなミュージシャンの音源を購入したり、劇団/演出家の舞台公演に行く時に自分自身の満足のためにお金を払う場合が一般的だ。
「アーティストを支援するためにお金を払う」という認識は、「メディアが与える」という文化の在り方から、「アーティストと鑑賞者のコミュニケーションで作りあげていく」という文化の在り方に主流をシフトしていくための最も現実的な方法ではないだろうか。
それが「創作活動で生計を立てる」というところまで及ばなかったとしても、金銭という社会的な方法で自らの作品がリアクションを受けるということは、創作活動を続けていく上でアーティストにとってモチベーションとなるし、作品に他者に対する責任が生まれるきっかけにもなる(アーティストの社会的な自立とは、生計を立てるという意味のみではないはずだ)。
こういった意識は多くの場合実際に作品を見たり、時に直接アーティストと会話したりという、ダイレクトなコミュニケーションによって作られていくし、そういう意味では地域に目を向けることは必然だった。このようなコミュニケーションを具体化していくためにはWEB制作の技術であるCMS※は重要な役割を持つ。
&ARTではこのCMSを導入し、“展示・イベント情報”も“アーティストブログリレー”もそれぞれのアーティストごとにアカウントを作り、アーティスト自身に更新していただいている。
これによりアーティストが取材対象として存在するのではなく、アーティスト自身にリアルタイムに情報を発信していただくことで、メディアを一緒に作り上げていくことができる(WEBの技術もそうだが、あるテクノロジーが一般的となった時には、それらをダイレクトなコミュニケーションを補うものとしてどのように活用していくべきかということを考えなければ発展はない)。
アーティスト自身が発信する情報がそのまま地域の文化情報となり、それがダイレクトなコミュニケーションにつながる可能性がある、というのはメディアの一つのあるべき姿ではないだろうか。
もちろん&ARTは面白いコンテンツを作りだすことが最終的な目的ではない。
いかに「作品と鑑賞者との直接の出会いを作り出すか」ということが最大の目的であるし、今後も長期的な課題として取り組んでいく。
※コンテンツマネジメントシステム(Content Management System)の略称。WEBサイトで使用する画像やテキストなどのデジタルコンテンツを一元的に管理できるシステム。複数のユーザーがコンテンツをブログのような感覚で更新することができる。
今年の4月に行われた&ART企画、株式会社フィールド主催の"&ART EVENT vol.1"パフォーマンス風景
写真上:PsysEx(糸魚健一氏) × 宮永亮氏 写真下:林勇気氏 × Polar M(村中真澄氏)
photo by Yoshikazu Inoue

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。京都嵯峨芸術大学造形学科油画専攻修了。京都のデザイン会社、株式会社フィールドにプランナー/デザイナーとして所属。2009年同会社で「京都で活躍するアーティストと社会をつなぐ」ことをコンセプトとしたWEBサイト"&ART"を立ち上げ、企画・編集・広報などを担当している。また自身もアーティストとして"なかもと真生"名義で活動。廃棄物を使用した大型作品の発表を中心に、大原美術館(倉敷)での『AM倉敷Vol.6 なかもと真生 Structure of nothingness』や、家屋全体を利用した空間展示など、精力的に活動を展開している。
Photo by OMOTE Nobutada
株式会社フィールド
http://www.fieldcorp.jp/
なかもと真生WEBサイト
http://www.nakamotomasaki.jp/
京都のアートを発信するもう一つのWEBサイト「&ART」
Category: Column