07, Jan 2018

映像作品“utakata (seine, kamo) ”について
―都市風景における時間の集積を浮かび上がらせる

映像と音楽を使って、さまざまなものと音楽とを結びつけて表現するアーティスト・ユニット 井浦崇+大島幸代。"utakata (seine, kamo)"は同ユニットの映像作品であり、作品によって、鴨川の河岸とセーヌ河岸の風景を対比し、都市風景における時間の集積を浮かび上がらせることが試みられている。AMeeTでは、同作のトレーラームービー及び、作品ステートメントを掲載する。

文:井浦崇+大島幸代(アーティスト・ユニット)

"utakata (seine, kamo)" トレーラー・ムービー

"utakata (seine, kamo)" に寄せて

わたしたちは2014年の夏、パリに滞在していた。パリにおいてセーヌ川の存在は大きく、川沿いに歩くとそこに建ち並ぶ橋や美術館などの魅力的な建造物が次々と目に映る。古代の文明は河川の近くで誕生し、そこでは複雑な人間社会が形成されてきた。旅人が知らない街で河岸の風景に心惹かれるのは、人の営みを象徴する何かを見るからかもしれない。川のほとりの散策路で過ごしていた時のこと、ふと「方丈記」の一節が頭に浮かんだ。

“ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。・・・”

すると、眼の前の光景がすっと後退して、自分の周りが別の時代、あるいは別の都市へと繋がったような感覚になった。河岸の「うたかた」を映すことで、そこに層になって存在するものを映像化できるかもしれない。そう考えて、船に乗って河岸の風景の撮影を始めた。

乗船中はほとんどカメラを回して、セーヌにまつわる歴史的な局面の舞台だけでなく、古い石壁や行き交う人々などを映した。カメラのアングルは街と川の関係を撮るために、街並みと水面が同じくらいの比率になるようにセットした。結果として昼間/夕暮れ/夜のシーンのそれぞれに輝かしくユニークな時間の集積が記録されたように思う。

音楽は、映像を音響に変換するシステムを作って風景を音楽化した。用意したプログラミングはとてもシンプルなものだ。画面の中心付近の明度変化で音階を決めていて、全体の平均明度変化でリズムとテンポを変化させている。水面のきらめきや街の建築など、川沿いにスクロールする風景を楽譜に見立てて音楽化すると、その時間の街のゆらぎを演奏しているかのようだ。

本作"utakata (seine, kamo)"では京都の鴨川をもう一つのモチーフに選んで河岸を撮影し、同じシステムで音楽化した。鑑賞者は歴史的建造物で美しく整えられたセーヌ川と、日常のノイズを受け入れて流れる鴨川の音響を比較することができる。河岸の調和(ハーモニー)が語りかけてくるのは文化や風土の差異だけではない。二つの"utakata"は、自然と共生してきた人々の記憶がわたしたちと共に在ること、「ゆく河の流れ」が今ここに繋がっていることを示唆している。


井浦 崇 + 大島 幸代
IURA Takashi + OSHIMA Sachiyo
井浦 崇 + 大島 幸代 ポートレート

映像と音楽を使って、さまざまなものと音楽とを結びつけて表現している。 これまでに、植物の生長、都市の風景、古典絵画などから音楽的要素を見つけ出して作品化してきた。主な個展に「images and beyond展」(2017、アートスペース虹[京都])、「THE STREAM GLIDES ON CALMLY: 展」(2014、LAMPE STUDIO[パリ])、主なグループ展に「ARS ELECTRONICA FESTIVAL 2015」(2015、リンツ)、「日本の美意識の原点 京都~伝統と革新~展」(2015、EXPO Milano 2015 Japan Pavilion[ミラノ])がある。
過去にAMeeTに寄稿した記事として、2010~2014年までの作品をまとめた“音楽と世界―共感覚的に接続する(英訳収録)”がある。

井浦 崇 + 大島 幸代 公式サイト
http://www.otograph.net/


展示情報

kumagusukuルームでの展示のフライヤー

kumagusukuルームでの展示のフライヤー

「京都のアート&カルチャーの今」を発信する"ホテル アンテルーム 京都"内の、映像作品鑑賞に特化した客室"kumagusukuルーム"にて"utakata (seine, kamo)"を展示しています。"utakata (seine, kamo)"は、2015年にアートスペース虹に展示されましたが、今回はその際に展示した映像から、新たに鴨川の映像を撮影し直し、音楽のためのプログラミングを更新した新バージョンになります。

会 期: 2017年12月9日(土)~2018年夏
※終了日は決定次第kumagusuku WEB サイト内イベントページ に掲載。
会 場: HOTEL ANTEROOM KYOTO内kumagusukuルーム
〒601-8044 京都府京都市南区東九条明田町7番
※kumagusukuルームについてはこちらの記事など参照。
料金等: 定価:¥18,000~(税込、シーズンにより変動)
室数:1室
定員:1~2名
予 約: ホテル アンテルーム 京都WEBサイト よりご予約ください。
予約時にはkumagusukuルーム希望の旨をお伝えください。
問合せ・協力: HOTEL ANTEROOM KYOTO
Tel:075-681-5656
Mail:info@hotel-anteroom.com
企 画: KYOTO ART HOSTEL kumagusuku
プロデュース: MOVING
協 力: 一般財団法人 ニッシャ印刷文化振興財団
諸注意
  • 客室での展示のため、kumagusukuルームにご宿泊いただいた方のみご覧いただけます。ご予約についてはホテル アンテルーム 京都までご連絡ください。
  • 一時的に他作品への差し替えを行う場合があります。本作展示時のご宿泊をご希望される方は、念の為予約時にご確認ください。
  • 映像はメンテナンス中の場合があります、予めご了承ください。

kumagusukuルーム 内観

kumagusukuルーム(向かって左がエントランススペース、独立壁を挟んで右が映像展示スペース兼ベッドスペース) 画像提供:ホテル アンテルーム 京都

kumagusukuルーム(向かって左がエントランススペース、独立壁を挟んで右が映像展示スペース兼ベッドスペース)
※現在の状態と異なる部分があります。
画像提供:ホテル アンテルーム 京都

ベッド上から見る映像作品 画像提供:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku

ベッド上から見る映像作品
※“utakata (seine, kamo) ”展示時の写真ではありません。
画像提供:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku


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―都市風景における時間の集積を浮かび上がらせる

Category: Digital Imaging





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