10, Nov 2009
Phase Oneは中判/大判カメラをベースにしたデジタルカメラバックシステムを開発、製造、販売する世界有数の企業。その革新的な製品、技術により創業以来、市場を牽引してきた。多くのカメラシステムに互換性を持ち(弊社ではオープンプラットホームと称す)、自社開発されたテクノロジー(特にデジタルカメラバックで取り込まれた画像データをコンピュータに転送、処理、またはメディア(CFカード)に効率的に保存する分野の技術において)は特許技術である。製品が多く使用される分野として商業(コマーシャル)分野が中心であるが産業用途としても医療用の眼底カメラや航空写真、アーカイブなどの分野でも使用されている実績がある。
Phase One は1993年に当時ドラムスキャナーを開発していたデンマーク人の発明家により設立。本社はデンマーク-コペンハーゲンにあり、海外支社はNew York (US), Cologne (Germany), Shanghai (China PRC)そして、2003年に日本支社(Phase One AS)を設立した。
創立当初にリリースされた製品はスキャニングタイプ(スキャナー)のデジタルカメラバック。スキャニングタイプのデジタルカメラバックはラインセンサーを使用している為、RGB各チャンネルのデータをフルに取込むことができ、偽色(モアレ)のない非常に高解像度のデータを撮影することができる。しかし、撮影時間がかかる為スキャニングタイプを使用するマーケットは現在では縮小したが、高品質なデータと大きな画素数のデータを得ることができることから、アーカイブの現場などでは非常に高い評価を得て、現在も尚第一線の制作現場で使用されている。現在販売される最新のスキャニングカメラバック、FX+は1億6000万画素と非常に大きなデータを撮影することができる。

P65+ シングルショットタイプ
シングルショットタイプは600万画素のLightphaseに始まり、最新の製品はP65+/ 6050万画素、センサーサイズは53.9×40.4mmと645のフィルムサイズに近い高解像度デジタルバックをリリースしている。
カメラシステムに関しては2008年にPhase One 645AFカメラシステムをリリースし、デジタルカメラバックのみならず、総合的にフォトグラフィーをサポートする製品展開を実現、開始した。

Capture One 4.8.3
また現在、多くのソフトウェアメーカーが参入しているRAW現像ソフトウェアにもいち早く着手し、2003年にデジタル一眼レフに対応した現像ソフトウェアCapture One DSLRを開発、販売し、その事業を拡大している。最新のCapture One 4.8.3では10社/100機種のデジタルカメラのRAWデータを処理することができ、画質重視のCanon、Nikonユーザーから高い評価を獲得している。

1993年に設立。本社、デンマーク-コペンハーゲン。中判/大判カメラをベースにしたオープンプラットフォームのデジタルカメラバックシステムを開発、製造、販売する企業。

下田貴之
プロダクトマネージャー
2004年Phase One Japanに入社し現在に至る。
Phase Oneはこれまで17機種のシングルショットデジタルカメラバックをリリースしてきたが、いくつかPhase Oneのデジタルカメラバックで使用している重要な技術を紹介する。
デジタルカメラ、バックなどを評価する重要な点は撮影されたデータのノイズレベルである。ノイズは様々な要因で発生するが、ノイズを如何に抑制するかがデジタル画像にとって重要な要素である。ノイズの第一の原因となるのが熱であり、それによるノイズはCCD自体が通電することで発生する。デジタルカメラの場合、カメラに電源が入ると即座に撮影できるようにCCDは通電され待機状態になる。そのため次第にCCDが熱を帯びノイズが発生するのである。熱によるノイズを抑制する為には、まずCCDの温度上昇を防がなくてはならない。一般的に冷却システムとして採用されているのは冷却(クーリング)ファンやペルチェ素子である。しかしこれらの冷却システムには難点がある。ファンの場合、デジタルカメラバック内に不要なゴミやホコリが混入し、故障、修理の原因になる。
またペルチェ素子の場合は、ファンのようにゴミなどの混入はなくコンパクトだが、ペルチェ素子自体が発熱する為、CCDとペルチェ素子自体を冷却するのに多くの電力が必要となる。デジタルカメラバックを様々な条件で使用できるようにするためには、これらの冷却システムにかわる独自のシステムを採用する必要があったのである。これらのソリューションと全く異なる画期的な発想としてPhase Oneが特許を持つスリーピングアーキテクチャーという技術である。
このスリーピングアーキテクチャーはCCDの通電を的確にコントロールする。技法としてCCDへの通電をシャッターがリリースされる瞬間だけ行い、その前後は省電力に切り替わる。その為CCDに通電している時間はシャッタースピードとほぼ同じぐらいの時間しか行われず、長時間使用してもCCDが温度上昇を抑制することができるのである。実際、この技術はさまざまなメリットを生み出す。大きな利点としてデジタルカメラバックを省電力で動作させることができ、心臓部であるCCDセンサーの耐用年数を飛躍的に向上させることができるのである。この省電力技術はシングルショットのデジタルカメラバック、Lightphaseの開発当時から採用されている。
この技術、スリーピングアーキテクチャーを正確に動作させる為、Phase Oneは専用マウントで各カメラバックをラインナップしている。通常、取付けるカメラによってシャッターリリースのタイミングが異なり、そのカメラに合わせた詳細な設定が必要になる。その為、1つのデジタルカメラバックを複数のカメラで使用できるようにする場合、それぞれのカメラと通信するプログラムを用意する必要があり、それにより別のソフトウェプログラムが追加され消費電力、システム自体の温度上昇等のトラブルを引き起こす原因になる。また長年の使用においてもカメラに合わせてマウントを交換することでフォーカス面の微妙なズレが生じる恐れもある。
Phase Oneは大きく分けてHシリーズ、Pシリーズ、P+シリーズの3世代のデジタルカメラバックをリリースしてきた。中でもP+シリーズの新たなOpticolor+、Dynamic+、Xpose+の3つのテクノロジーにより、従来のデジタルカメラバックの画質を大きく上回ったのである。
Opticolor+_シャドウエリアの詳細部(ディティール)は維持したまま、シャドウの中にある色を再現。また再現が難しいスキントーンも大幅に改善されクラス最高の色再現力を誇る。
Dynamic+_高感度ISOのクオリティーが向上し、中でもP30+ではISO1600までの設定が可能である。高速シャッター撮影や光量の少ない夕暮れのロケ撮影などにおいても、最良の画像を提供することができる。 Xpose+_長時間露光で発生する熱、ノイズを極限まで押さえることを可能にした。
Pシリーズにおいても30分までの長時間露光ができたが、このXpose+テクノロジーは従来デジタルバックでは困難であった長時間露光を1時間(周囲温度15℃の場合)まで可能にした。デジタルカメラ製品として、これが可能な製品は他にない。現在でも多くのデジタルカメラバックタイプは30秒ほどの露光しかサポートしていなく、この飛躍的な向上は撮影の幅を広げると共に、使用される分野にも広がりをみせた。そしてアーティスティックな撮影から天文撮影などさまざまな場所でデジタルバックの使用を可能にしたのである。
新たなテクノロジーを搭載した新製品は、中判デジタルカメラバックの画質とデジタル一眼レフのコンパクトなファイルサイズ、高感度設定を備え持つ柔軟なデジタルカメラバックである。デジタル一眼レフやアマチア向けのデジタルカメラでは当たり前のようにできる画素数の切換だが、デジタルカメラバックでは切り替えができず、常に最高画素でしか撮影することができなかった。しかし近年、プロ市場においても利便性を求め最高画素のデータだけでなく、小さなデータで軽快に撮影できる製品も求められている。そこで、Phase Oneは新たなテクノロジーSensor+をDALSA社と共同開発しデジタルカメラバックでも画素数の切換えができる新製品を開発したのである。
Sensor+テクノロジーは4つのピクセルを組み合わせて1つのスーパーピクセル(12×12μピクセル)を作り出すユニークなカラービニングのような技術だ。*ビニング(Binning)とはピクセルを組み合わせるこという。Phase OneのSensor+は2×2ビニングになる。
このSensor+は撮影エリアを同じままで画像数だけを変更することができる。トリミングで画素数を減らすものとは根本的に異なり、中判デジタルカメラバックのセンサーサイズを活かして撮影をすることができる。特にP65+はセンサーサイズが53.9×40.4mmとほぼ645のフィルムサイズサイズであり、従来の645のフイルムエリアでフレーミングすることができる。更に4つのピクセルが組合わさるので感度が4倍になり、より高速なキャプチャーレートを実現したのである。*現在このSensor+テクノロジーを搭載した製品はP65+とP40+になる。

Sensor+には2つの大きな特徴がある。まず1つは、画素数を少なくしたときのノイズ、通常ノイズはCCDから信号を転送する際に1ピクセルの電荷にノイズが必ず1加算される。しかし、画素数を小さくするとノイズの加算がかわる。このノイズの加算に関しては平方根√でもとめることができる。

一般的に画素数を切換える時に使用されているのがスケーリングで、Sensor+と同じように画素数を1/4にダウンスケーリングすると、シグナルノイズは1:2で処理される。

しかし、Sensor+の場合は4つピクセルを1ピクセルとして転送する為、シグナルノイズが4:1となりノイズとなりノイズを減少させることができるのである。

このテクノロジーにより画素数を切り替えた時のノイズレベルはISO50とISO200(Sensor+使用時)が同等になり、ISO200-ISO800、ISO800-ISO3200となる。Sensor+は高感度設定でもノイズの少ない画像を撮影することができるのである。
もう1つの特徴は、スーパーピクセルを作る際のピクセルの組み合わせだ。
Phase Oneのデジタルカメラバックが採用しているCCDはベイヤー配列のCCDだ。ベイヤー配列のCCDはRGBフィルターの配列が決まっており、隣同士のピクセルでは色が異なるためスーパーピクセルを作ることができない。スーパーピクセルはチャンネルごとに組み合わせて作り出さなくてはならない。このスーパーピクセルを作る技術はビニングというものだが、これまでのカラービニングではスーパーピクセルにした時Gチャンネルが重なってしまい、適切な輝度情報を取得することができなかった。その為、ディティール、色の再現性が落ちクオリティーの高いデータを作成することが不可能だったのである。

そこでPhase Oneは独自のアイディアでプログラムされたビニング技術を開発した。構造はシンプルであり図のようにGチャンネルの組み合わせを変えることで、重なる部分がなくなりCCD全体からGチャンネルの輝度情報が取得できるのである。そして、画素数を切換えた際も高品質なデータを作りだすことを可能にしたのだ。


これまでご紹介してきた技術でCCDから送られた情報を瞬時にRAWデータに変換するのがIIQプロセッサーである。IIQ(Intelligent image quality)とはPhase One独自のファイル圧縮フォーマットで、16bitで取込まれたイメージデータを完全にロスレスでチューニングする革新的なデータ処理方法である。IIQ のプロセッサーは人の心のような動きをする。過去の経験に基づきデータ処理を知的に予測し、転送されてきた全ての情報を保存するのではなく、関連するピクセル情報だけを集約する。そして、省力でデータを保存しコンパクトなRAW データを構築するのである。実際にIIQプロセッサーは、P65+/ 6050万画素の膨大な情報も瞬時にIIQフォーマットに処理することができるほどハイスピードなプロセッサーである。IIQファイルフォーマットはIIQ LとIIQ Sがある。IIQ L は完全なロスレスファイルファーマットで、IIQ Sは同様に16bit のRAWデータだが、完全なロスレスではない。しかし、IIQ Sであっても99%以上画質の劣化を見ることができなぐらいの高品質な圧縮フォーマットである。

ハードウェアで使用されている技術を中心にこれまで紹介してきたが、高品質な画像データはハードウェアだけでは作り出すことはできない。デジタルカメラバックで作成されたRAWデータをどのように処理するか、現像するソフトウェアも重要になる。Phase Oneはこれまでデジタルカメラバックで培った長年の経験を生かし、2008年に新たにCapture One 4を開発した。そして、このソフトウェアはRAWデータの持っているポテンシャルを最大限生かせるソフトウェアとして進化し、これまで再現されていないかった色、質感、トーンを表現することを可能にしたのである。また、ノイズ除去のパフォーマンスも向上し、高感度で撮影したデータや長時間で撮影されたデータであっても、ノイズのないクリアーなデータを提供することができる。以上解説した通りPhase Oneの高品質な画像データはハードウェア、ソフトウェア両面で様々なテクノロジーを駆使し造り込まれる。Phase One社は今後もデジタルイメージングの分野で最高峰の技術を搭載した製品開発に注力し、将来にわたりこの分野での事業開発を続けていく。
デジタルカメラバックの最前衛
Category: Digital Imaging