04, Feb 2011
当社は関西では珍しく、iPhoneアプリ開発(2010年からはiPadアプリ開発も。以後、iOSアプリ開発と呼ぶ)を専門とするITベンダーである。iOSアプリ開発に必要なノウハウを豊富に持つエンジニアが在籍している事が幸いして、2008年秋以降、自社ブランドのアプリと受託開発アプリとを合わせて2011年1月時点で50以上のアプリ開発に関わらせて頂いてきた。現在、売上ベースでも案件数ベースでも90%以上がiOSアプリ関連である。
2009年にリリースしたGoogleNewsの閲覧支援アプリ「GNReader」では無料アプリ総合ランキングで1位を獲得。iPhone市場の国内黎明期にしては多い約10ヶ月でのべ17万というダウンロード数をはじき出した(現在は公開停止)。その使い易さや核を成す技術が評価され、ライブドア社のニュースリーダーアプリ「LDNReader」や、ソニー銀行のiPhoneアプリ版ポッドキャスティング視聴アプリ「キクカネ?」の開発を担当するに至っている。

またNPO法人まちの案内推進ネットの地下鉄駅構内図閲覧アプリ「えきペディア」シリーズ9作品、「駅すぱぁと」で有名なヴァル研究所の地下鉄時刻表閲覧アプリ「まるごと時刻表」シリーズ2作品など、鉄道系アプリでは開発のみならず企画も担当した。また前者の「えきペディア」シリーズについては、同NPO法人がiPhoneアプリも含めた取り組みそのもので2010年度グッドデザイン賞を授賞しており、その一部に携われた事は開発ベンダーとして冥利に尽きる思いである。
地下鉄駅構内図閲覧アプリ
「えきペディア」

地下鉄時刻表閲覧アプリ
「まるごと時刻表」
更に2010年末には、当社エンジニアが個人ブランドで提供していた人気の天気予報アプリ「そら案内」(iPhone版/iPad版合わせてのべ50万ダウンロード)の開発を当社に移管、一般財団法人日本気象協会との事業提携も実現し新しい「そら案内」を共同開発すること及び年度内にリリースすることを発表したばかりである。
このようにiOSアプリの開発事例や開発計画には事欠かない当社ではあるが、iPadが登場した2010年春以降、もっと言えばiPhone4が登場した2010年夏以降は随分と様子が異なってきたと感じる。上述のような一般消費者に向けたiOSアプリ開発の案件(いわゆるB2C案件)よりも、企業内や教育機関内で iPad や iPhone を活用したいという声が驚くほど急増しているのである。例えば、営業全員にiPadとiPhoneを配布して製品カタログを持ち歩かせて顧客に見せられるようにしたいという要望や、学生にiPadを配布して教材を配信したいなど、その種類は様々であるが、不特定な一般消費者ではなく限られたメンバーに向けて用途限定的に使わせたいというむきが急速に高まっている。最近では医療機関でのiPad/iPhone活用についても問い合わせが多く、これら全てを合わせると既に新規問い合わせの半数以上がB2C案件ではなくなっている。
iOSデバイスは、もはや一般消費者向けの嗜好性高い多機能端末ではなく、業務用途端末としての活用が模索される新たなステージにもう一歩踏み込もうとしているのだ。

株式会社フィードテイラー 代表取締役。約2年間で50以上のアプリ開発実績を残した少数精鋭の開発者集団のまとめ役。
開発者が最高のパフォーマンスを発揮出来る環境作りを最大のミッションとしながら独自の経営理論を構築中。
2011年より国内では類を見ない iOSエンタープライズソリューション カンパニー として名乗りを上げ、iOSデバイスの業務活用とソリューション開発、導入コンサルティングを主たる事業としている。
株式会社フィードテイラー
http://feedtailor.jp/
SyncBoard for Enterprise
http://www.syncboard.biz/
LDNReader
http://itunes.apple.com/jp/app/ldnreader/id364968983?mt=8
キクカネ?
http://itunes.apple.com/jp/app/id411632002?mt=8
えきペディア地下鉄マップ東京 2011
http://itunes.apple.com/jp/app/id400202032?mt=8
まるごと時刻表 地下鉄・東京 2011
http://itunes.apple.com/jp/app/id400778762?mt=8
そら案内[予定URL]
http://itunes.apple.com/jp/app/id416228206?mt=8
SyncBoard[予定URL]
http://itunes.apple.com/jp/app/id416059885?mt=8
2010年12月初旬。当社がAppleStore心斎橋店の協力を得て同店2階シアタールームにて開催した「企業・教育機関向けiPhone/iPad導入セミナー」は、限定24席であったにも関わらず結果50人以上の参加者で立ち見が出るほどの盛況となり、ここ関西においても企業や教育機関でのiOSデバイス活用が模索されている事実が如実に現れたイベントとなった。四国から急遽駆けつけて下さった企業担当者や、イベント終了後には噂を聞きつけた関東圏各社から「資料だけでも...」「東京で開催の際には連絡を...」と多数問い合わせがあった事は、全国的な関心の高さの証左であると言えるだろう。
ただ導入と言っても、ある製薬会社がiPadを1000台以上導入した事例や、ある中古車販売事業者も複数台導入した事例、iPhoneを生命保険会社やコンサルティング会社が100台/1000台規模で導入した大量導入事例などはもはや驚くに値しない。新機種が出る度に導入事例が相次ぐのはiOSデバイスの世界では常であるし、それらは単にiPhoneやiPadが最初から備えているメール・ブラウザ・電話・SMSといった標準機能を「利用」するに過ぎないからだ。
当社が、最近の問い合わせから、またセミナーを通して現場の声を生で感じて驚いているのは、「自社内で使用する特別な専用アプリ」の新規開発や既製ソリューションの導入が望まれるケースが多くなった事である。それは単なる「利用」ではなくもう一歩進んだ「活用」の域である。例えば、ある工場内でのラインで工員の作業進捗を管理するシステムと連動するQRリーダ付き専用アプリの開発案件や、ある上場会社の基幹システムと連動する出張見積支援アプリの開発、ある運送会社のドライバー管理アプリの開発などである。そのようなアプリが標準で搭載されている筈もなく、実現しようと思えば開発するか既製ソリューションを調達するしかない。
販促費計上されるB2C案件から、経費削減や営業効率向上を目的とする実利重視のアプリ案件へ。このような傾向は2010年後半より顕著になってきたがその要因と思われるものが2つある。
iPadの国内入手が可能となった2010年5月末から、息をつく間もなく6月末に現れたiPhone4。劇的な進化を遂げた最新OS「iOS4」による新たなユーザ体験に注目が集まる一方で、業務向け機能の面でも驚く程の進化をしていた事は余り知られていない。筆者が注目に値すると考えたのは以下の3つである。
| ワイヤレス配布 | 企業内専用として開発したアプリをイントラネットのWiFi経由で安全にインストール・アップデートする事が可能となった |
|---|---|
| データ保護API | 企業内専用として開発する独自アプリでもハードウェアを使ったファイルの高速暗号化及び復号を行えるようになった |
| MDM | Mobile Device Management の略。iPhoneやiPadを集中管理できる仕組み |
iPhoneやiPadのメールやブラウザなど標準機能をただ「利用」するだけであればこれらの機能は全く関係はない。しかし、上述したような既存のビジネスプロセスと密に連携する「活用」をしようと思えば、専用アプリを大量のiOSデバイスに一度にインストールできる必要があるのは明白だ。また万が一の時の為にデータを保護するセキュリティ機能も必須となる。Apple社は最新のiOS4でこれらを一通り搭載してきた。今やiPadにもiOS4が提供され、企業がiPhoneやiPadを業務端末として導入する為のOS的要件は満たされたのである。
業務用として開発される専用アプリは不特定多数のiOSデバイスにインストールされるべきものではない。従って、通常の一般消費者向けアプリが公開されているAppStoreに掲載されてはならないものだ。とはいえ、企業内だけに範囲を限定すれば無制限に配布出来る必要がある。その為に用意されているのが iOS Developer Enterprise Program (以下、エンタープライズプログラム)というApple社との契約である。専用アプリを使用しようとする企業は例外なく締結しなければならないのだが、従来このプログラムの契約が出来るのは500人以上の従業員を抱える企業に限られていた。つまり、従業員500人未満の企業では、仮に専用アプリを自前で開発または調達したとしても自由にインストールする事ができなかったのだ。(厳密には運用による抜け道があったのだがここでは割愛する)
これを Apple 社は2010年8月に緩和。従業員数制限がなくなり、実質どんな企業でもエンタープライズプログラムを締結できるようになった。その結果、企業規模を問わず専用アプリを開発または調達の上でインストールし業務活用する道が拓けたのである。
◇
2010年後半に急速に企業内での iOS デバイス活用気運が高まってきた背景には、以上の通りOSの進化とライセンス制限緩和が同時に発生するというiOS業界の大きな変化があったのだ。


「企業・教育機関向けiPhone/iPad導入セミナー」風景
これまで、iOSデバイスの本格的活用が可能な基盤が整ったこと、それを受けて企業内で業務直結した専用アプリの導入需要が増している事を説明した。具体例をあげると切りがないが、実のところドキュメントやコンテンツをiPad/iPhoneで共有したいという要件が大半を占めている。それぞれの業務で使う資料を、常に最新の状態でデジタルに持ち歩きたいというわけだ。製品カタログのPDFファイルを営業担当にiPadで持ち出させたいという話や、クライアントへのPR用動画や画像集をiPadで持ち歩いて出先で見せたいといった話は、枚挙に暇がない。
もちろん、業務用である為ファイルを持ち出せるだけではダメで、以下のような要件も満たす必要がある。
- ファイルは一元管理可能で、容易に更新が出来るように
- 常に最新版のファイルがiPhone/iPadに配信されるようにして欲しい
- iPhone/iPadがオフラインでも閲覧出来るようにして欲しい
- 万が一デバイスを無くした時などに備えたセキュリティ機能を用意して欲しい
- 誰がいつファイルを閲覧したか見れるようにして欲しい
単にファイルを閲覧するだけであれば標準のアプリで実現可能でありiOSデバイスの「利用」の域を出ない。しかし、上記の要件を満たそうとすれば標準にはない独自の仕掛けが必要となってくる。一元管理するとなれば専用のサーバを介する他なく、またオフライン閲覧を可能とするならば最新ファイルを常にダウンロードする仕掛けがいり、更にセキュリティを担保する為にファイル単位での暗号化も必要不可欠となる。
業種業界や規模を問わず企業内では多くの情報がファイルという単位で整理されている。これをiPadやiPhoneにファイルのまま持ち出したくなるのは当然だろう。ただし、安全に且つ簡単にだ。iPadやiPhoneをもっと「活用」したいという企業は例外なく同じことを考えるに違いないが、全ての企業が前述のエンタープライズプログラムを使って自社専用アプリを開発できるとは考えにくい。ならばそれを汎用的なサービス・商品にしてしまえば良いのではないだろうか。
そう考えて生まれたのが当社が開発した、iPhone/iPad向けのセキュアなドキュメント共有システム「SyncBoard」である。

「SyncBoard」のコンセプト図
SyncBoardは、業務におけるiPad/iPhoneで社内ドキュメントのセキュアで且つ確実な共有を可能とするサーバ連動型ソリューションである。前節で列挙した
- ファイルは一元管理可能で、容易に更新が出来るように
- 常に最新版のファイルがiPhone/iPadに配信されるようにして欲しい
- iPhone/iPadがオフラインでも閲覧出来るようにして欲しい
- 万が一デバイスを無くした時などに備えたセキュリティ機能を用意して欲しい
- 誰がいつファイルを閲覧したか見れるようにして欲しい
を全て満たし業務利用に足る機能と安全性を備えた技術である。予めグループ毎やプロジェクト毎に分けて用意したサーバ上のフォルダにファイルを登録するだけで、iPad/iPhoneのデバイスに常に最新のファイルがダウンロードされ、オフラインでも閲覧できるというシンプルなものだ。営業担当者の手元のiPad、立ち上げればPDFや動画や画像など必要な営業資料は全てそこにある、そんな環境を簡単に実現することができる。
ダウンロードしたファイルは暗号化され、万が一iPhoneやiPadを紛失した時の情報漏洩リスクは極めて低い。またサーバの設定で第三者による不正通信検出とリモート削除を行う事もできるのでセキュリティ的にも安心である。更に、誰がいつどのファイルをダウンロードして閲覧したかのログを収集する機能も持っており、現場のiPhone/iPadの活用状況を監視したいという声にも応えるものとなっている。

不正アクセス検出とリモート削除
2011年1月24日現在、企業に安心して導入して頂くための、保守やサポートの体制・堅牢なインフラ構築を併せたパッケージを提携企業各社と共同で構築中であり2011年2月より「SyncBoard for Enterprise」として販売する事が決定している(※2月3日から販売開始となった)。また iOS デバイスだけではなく、Android端末でも使えるクライアントの開発を計画中である。
当社では、SyncBoardの提供により、来るべきスマートフォン・タブレット型端末の時代におけるドキュメント共有のインフラを構築し、企業における iOS デバイス活用を促進したいと考えている。



iPad/iPhone向けドキュメント共有システム「SyncBoard」のアプリ画面と管理画面
Apple社のiPhoneやiPadは、個人が所有するモバイルデバイスに変革をもたらし新たなユーザ体験を提供したが、今まさに企業におけるコンピューティングにも影響を与えつつある。
経費削減や業務効率向上など、現場ではiPhoneやiPadを「活用」することによるメリットが認知され始めており、全てとまではいかなくとも今後多くの置き換えや新規の導入事例が益々増えていくに違いない。また同時に、導入されたiOSデバイスの業務特化利用は更に進み「活用」にも深みが出てくるであろうし、その為のソリューションも多く必要とされてくるに違いない。これはもう誰も抗えない時代の流れなのである。
そんな中で当社は、SyncBoardで企業のファイル共有インフラを提供すると共に、更なる活用を促す企業向けソリューションの開発に取り組み続けたいと考えている。
業務活用が模索されるiPhone/iPadは新たなステージへ
Category: Digital Imaging