30, Jun 2014

日下部一司展「定常波」

会 期: 2014年6月10日(火)~22日(日)
会 場: ギャラリーすずき
〒605-0046 京都市東山区東分木町282
tel.075-751-0226
http://keage-g-suzuki.com/

日下部一司は、美術を美術によって思考してきた作家だ。70年代<現代美術>を根元とし、その後のお手軽なアートや市場の誘惑というような過栄養を摂らず、美術という年輪を詰め重ねた樹木のような存在である。最初の作品発表となる1975年以降、個展は60回を超える。

本個展タイトルの「定常波」とは、波長や周期や速度などの性質が同じ2つの波が逆向きに重なったときにできる<止まって見える点=節>を持つ波動のこと。節は、波形をつくらないが、その位置で振動し続けるという。日下部氏は、目下の関心が「定常波」であって、作品はその<節>のように空間やほかの作品に作用すると述べる。本展の12点各作品は、どこかに70年代起源の現代美術と結節点を持ちながらも、古びた作法には頼らない。現代美術の既視感を疎ましく思うことの多い中で、日下部作品の鮮度は静かに衝撃的である。

「日常生活を通しての視点や対象となる物のあり方から、視覚の作用と認識(捉え方)の問題に触れる作品を制作してきた。版画や写真・経年劣化した素材による立体作品等、様々な媒体と手法を用いて発表を続けている。」(作家HP )本展での作品<重力平面>は、20mm厚・約20kgの鉄板と、それを受ける鉄製の古い棚受けで構成されている。鉄製棚受けを用いたもう1つの作品<あることないこと>では、棚受けが、実際の重量と体積ではなく、壁に吸いつくように直接貼られた美濃紙の矩形を支えている。四角形のひとつの角を直角にし、残りの3つを感覚に任せてつくられた四角形<曖昧な輪郭線の四角形>。並べて展示された<縦方向の線で校正される四角形>では水平方向の刷毛痕、<Square Light>では垂直方向の刷毛痕を残しながらも、丹念に樹脂塗料や蓄光粉末混合のアクリル絵具が塗り重ねられている。一本の銅線や鉄線が一筆書きのドローイングのように空間にある<接点をつなぐと、>や<一秒間の軌跡>。光のRGBが紙に定着する顔料CMYKという物質的存在へ変換されるとあらためて気づく写真各作品。

それらから思うのは、定常波とは、美術家が思い描く最良の美しさをコントロールするために、自身が<節>となることなのではないかということだ。作品が空間に作用し、作品間に波動を起こすには、作家自身は波のように動いてはいけないのである。個展というのは、作家が不動の点であるにほかならない。たとえば、20kgの鉄板を滑り落ちないぎりぎりの角度に支え、既存の空間の性質を、まるで作品のように紛れ込ませるという作家固有の作法なのである。また、そのような空間や作品のありようを突き詰めれば、美術家の手技は、研ぎすまされていく。日下部作品から、70年代美術が工芸的な美しさをいったん否定した理由を逆説的に垣間みると同時に、磨く・削る・伸ばすなど何の変哲も無い作業は美術家の思考によって選択されていると気づかされる。
日下部氏は、過栄養の水っぽいアートシーンにあって、自身が<節>のような存在だともいえるのではないか。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

会場風景

会場風景

重力平面

「重力平面」 鉄・鉄製棚受け
320×500×260mm 2014

曖昧な輪郭線の四角形

「曖昧な輪郭線の四角形」 パネルに樹脂塗料・鉄
420×420×40mm 2014

あることないこと

「あることないこと」  美濃紙・鉄製棚受け
770×1000×130mm 2014

掛け軸に住むうぐいす

「掛け軸に住むうぐいす」 ハーネミューレ紙にガム印画
158×158×40mm 2014

ZOOM

「ZOOM」 ハーネミューレ紙にガム印画
150×250×50mm 2014

接点をつなぐと、

「接点をつなぐと、」 銅
350×350×350mm 2014

秒間の軌跡

「秒間の軌跡」 鉄
300×300×300mm 2014

会場風景

会場風景


日下部一司展「定常波」

Category: Events





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