19, Nov 2013

展覧会「サイネンショー」

会 期: 2013年10月4日(金)~19日(土)
会 場: MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w
撮 影: 表 恒匡(SANDWICH)

サイネンショーは、陶芸家:松井利夫の呼びかけによるプロジェクト名兼チーム名、本展のタイトルである。<再燃焼>という説明がもっともわかりやすいが、大震災や原発事故以降、人類の将来を左右される裂け目にある今、アーティストもそれぞれに苦悩している。それが新たな創造の始まりとなるかもしれず、手探りで次代へ進もうとする試みの<最年少>といえなくもない。

本展の展示品は、多くの人から提供された<不要陶器>が、約1350℃の窯の中で、もう1回(モノによっては2回、3回)焼けたものだ。24〜36時間、何の手も加えずに焼く・部分的に釉薬をかけて焼く・積み方を工夫する・融けて形が崩れるまで複数回焼くなどしたものである。用いた穴窯は、京丹後市久美浜町にあり、周辺に点在する限界集落の廃屋を解体した古材を燃料としている。釉薬の一部には、同町湾岸に積まれている牡蠣殻を焼き、その灰を使う。牡蠣殻は、海洋の汚染につながるため、大量に海洋投棄することが禁じられている。サイネンショーでは、燃料も材料も、元は行き場のないゴミである。

<不要陶器>も、地中でも朽ちることのない焼き物というゴミの一種だ。料亭食器、引き出物やノベルティー、安価な大量生産品など、回収の呼びかけに応じた京都周辺、東京、九州の人々から送られてきた約3000点がサイネンショーの素材である。本展では、昨年5月から今年の9月までの間の4回の窯焚きで焼いた約半分から、86点を選んで展示した。土にふくまれていた空気が膨張してコブ(ブク)を発生させた皿やぐい呑み、金や赤が焼けとんでしまい無彩色になった上絵、積み重ねた器が融けて合体したもの、釉薬を縮れさせたもの(梅花皮=かいらぎ)、再焼成でできたヒビを漆でついだもの。それらは、元の価値や用途を失っているし、焼き物としての居場所がまだ有るのか無いのかさえ不明の物体たちである。また、共同作業の産物のため、特定の誰かの作品というわけでもない。ただ、窯の中で得た変形は、<歪み>や<朽ち>といった美意識の延長にある一方、<窯変>を否定した近現代陶芸へのささやかな一撃と感じられなくもない。壁面には、焼成前の陶磁器の数々のスライドショーがプロジェクションされている。焼成前後を比べるとなお、思いがけない変形は、いろいろな意味でのハイブリッドな魅力をもつ特異な存在であることに気づく。

本展の変形した焼き物を眺め、その過程を想像すると、さまざまな課題が見えてくる。膨大な量のゴミ、電気エネルギーに支配されている暮らし、限界集落に象徴される都市と地方の格差。美術・創造活動としてのサイネンショーにとっては、美術の経済や政治性の問題からも離れられない。サイネンショーの発端のひとつは、大震災以降の東北の職工芸の行く末を考えることでもあった。本展覧展示品を販売して、純利益によって東北の手仕事を支援するのである。展示品の値段は、元の価値と無関係。サイネンショーの側で値段をつけるが、他と比較する要素が何も無いサイネンショーの品には、購入者が自分なりの価値を探さなければならない。

そのように、不要陶器の提供から購入まで、サイネンショーは、他の消費のサイクルと少し異なる場所に多くの人との関わりを持ち、意味合いをより複合的にしている。上書きを繰り返す人間の営みの中から、まったく新しい価値を分離する可能性だって、じゅうぶんに秘めている。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

なお、過去に、松井利夫の取り組みを以下のようにレポートしています。鋭敏に時代を嗅ぎ取ったアーティストのひとりとして、大震災、原発事故の前後、サイネンショーまでの経緯をご参照ください。
<保存と活用~ツーボトル> ※2010年12月開催
「Einstein in the cage」
松井利夫展  ※2011年12月開催
松井利夫による展示(穴窯で焼く器による)  ※2012年6月開催

展覧会「サイネンショー」
展覧会「サイネンショー」
展覧会「サイネンショー」
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