14, Jun 2010

科学技術Xの謎 
天文・医療・文化財 あらゆるものの姿をあらわすX線にせまる

会 場: 京都大学総合博物館
会 期: 2010年4月28日(水)~8月29日(日)9:30 - 16:30
入館・休館日: 16:00まで
平日・祝日にかかわらず月・火曜日休館
観覧料: 一般400円、高校・大学生300円、小・中学生200円
問合せ: 京都大学総合博物館 tel.075-753-3272
info@inet.museum.kyoto-u.ac.jp
その他詳細、公開講座についての問合せ先
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/

指の関節痛をレントゲン検査し、まじまじと自分の両手の骨の画像を見た。骨は、別次元の私を表していた。手が饒舌な被写体であるせいか、痛いところよりも、パズルのような甲の骨に気をとられる。いったい何なのだ・・・と思いながら。私が手と思ってきたものとまるで異なる。「科学技術Xの謎」が開催されているのを思い出した。その後の予定を変更して、百万遍へと向かった。

この展覧会は、展示物の数々と、展覧会名と同名の本によって構成されている。本が、秀逸だ。展覧会を補完する図録と思いきや、そこにとどまらない特別な魅力を持っている。X線つながりで、異なる分野の研究者にインタビューを重ね、研究現場の舞台裏やX線の<魅力>を探る。展覧会企画の発端となった資料発見から、本の制作過程をとおして、企画・本制作チームがまるごとX線にのめりこんでいく様子がよくわかる。後記では、苦労をねぎらいあい、手放しで自画自賛し、1000部は売れると豪語している(憎めない・・)。実際のところ、X線の一般向け教科書としてとてもありがたいし、熱意で突進していくチームのドキュメントは、とても面白い。自己紹介のポートレートまでレントゲン写真である。

実際の会場では、ガラスケース内にX線写真が整然と並んでいる。蛍光灯の光に浮かびあがるそれらは、医学のみならず、天文学や考古学や工学における資料である。ヘビの骨格、古代エジプトの鳥のミイラ、おにぎり、午前の私と同じポーズの人間の手、貝殻、ロボットの内部、星雲。多くが今や美術では希少となりつつある大判<フィルム>に焼き付けられていること、被写体が原寸大であることにも感動するが、それらが事実ナニであるかということよりも、まず黒地に浮かぶ淡く白い形それぞれの静謐で美しいことに身震いする。<意味>や<内容>のような、形や質量を持たないことを立体視できたかのような感動である。

ガラスケースの周囲には、X線研究の草創期に使われた器具や、レントゲン撮影機、X線研究の詳細な年表などが展示されている。別室では、文化財の実物とそのX線透過画像。とくに興味深いのは、京都大学所蔵の古代エジプトの<鳥のミイラ>や大阪府茨木市で発見されたという隠れキリシタンの宗教絵画「マリア十五玄義図」である(期間限定展示。~6月13日)。鳥のミイラはガーゼで幾重にもまかれ、その中身は、肉眼では到底知ることができない。1900年代初頭京都大学へ伝わって以来、他のミイラとの比較のほか、X線を用いることによって、私たちは、真実の確信へと近づいていけるのだろう。由来不明だった宗教絵画では、X線は顔料によって吸収度が異なることから、絵具の種類を推測し、いつ、どこで、誰が制作したものかを推測したのだということだ。秘密を閉じたまま真実を知ることができるとは、X線とは、なんと懸命で誠実なことか。

本展は、公開講座(HPご参照ください)を開きながら、8月末まで開催。夏休みの子供、科学ファンはもとより、写真芸術や映像制作にかかわる人、展覧会場の展示計画にかかわる人には、展覧会が新たなコミュニケーションを形成する好例として伝わればよいと思う。
(松尾 惠 VOICE GALLERY pfs/w)

展示会場の様子01
手[X線写真]

手[X線写真]

ロボットの内部[X線写真]

二足歩行ロボット『ロピッド』(制作:株式会社ロボ・ガレージ)
写真提供:京都大学総合博物館

鳥型の堅牢な木型
鳥型の堅牢な木型に入った鳥のミイラ

鳥のミイラ[X線写真]


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Category: Events





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