24, Jan 2017

暮らしと手しごと「KAKERA December」

会 期: 2016年12月15日(木)~19日(月)
会 場: Dongree コーヒースタンド暮らしの道具店
〒605-0848京都市東山区池殿町214番地4 青春画廊1F
http://dongree.net/#shop

ニットの産地新潟では、かつて機械編みのニット生産(ジャガード編み)が盛んだった時代もあったが、近年では、殆ど無地が主流になってきている。高性能のジャカード編みができる編み機を投資したにも関わらず、簡易で早く編めるデザインや無地多色、小ロット、低工費、そして徐々に衰退していき辞めていった工場が後を絶たない。故に工場が残り少ないというのが現状である。本展示会は、人数も激減しているニット工場の工人や各職人を中心に、培った技術を小物に託し開催された。

現在、残っている工場でも編み機などの機械の部品がなかったり、機械を直せる人なども失いつつあり、活動が維持できるかどうか難しいとのことだが、全国各地の手しごと関連の店舗やイベントなどで、丁寧に1点ものの商品を紹介してきている。

主宰の工人の一人、川瀨貴弘氏は、「状況を比べるのは、畏れ多いですが、京都の伝統のある染織の世界でも分業と着物離れが、分業の一工を持つ家内制手工業にとっては、分かれ目になったとお聴きしましたが、こちらも衰退したニット産地の家内制手工業による最後の灯火かもしれません。分業の部分を時間がかかってでもいかに補えるか、出来るまで頑張ろうという形です。」と言っている。

本展示会は、<リメイク・リユース・リサイクル>をコンセプトとするfuyugomoriの活動から派生したKAKERA(カケラ)というプロジェクトの作品展。素材の糸は、国内外から購入している。KAKERAには「この先、無くっていってしまうもの、部品、人、技術、価値観など色んな欠片を集めてひとつにすることで、補いあい、ワクワクするような気持ちやモノを創りだせるのでは、ないかと。」暮らしのカケラ探しという熱い気持ちが込められている。

今回京都で展示したKAKERAは、新潟の工房からは、ハンドウォーマー、帽子、大判ストール、ベストなど、すべて編み方や配色が異なる一点もの。

カケラの製品は、イタリア産の上質なウールやカシミア、リネンなどに加え、本展の要とも言える<カケラ>活動が関わっている。

ミトン発祥の地ラトビアをはじめ<バルト三国の編み子さんのミトン(手袋)><帽子作家のイヤーマフラー><藍染職人のインディゴストール、後染めによるセーター><グラフィック&バッグデザイナーのニットとボール生地のバック><三線工人によるニット生地を使った三線>など、創作、制作、工作という名の<カケラ>が出会い、新たな表現が生まれている。

つまりKAKERAのプロジェクトは、「職人、作家、一般の方など職業、人、県、国、関係なく」つながり、<カケラ>同士が集まり穴を埋め合う、ハッピーな手しごとのネットワークでもあると言える。

近頃、職業や労働を意味する<仕事>の対極として、<手しごと>とひらがなで示す活動やモノを多く見受ける。それは、世間の速度や過剰な消費欲とやはり対極にあるかのような<暮らし>という言葉とセットの場合が多い。良いものと丁寧に暮らすということは、熱意と努力を相当に必要とする新しい価値観の創出だといってもよいだろう。<しごと>という柔らかい言葉に託されたのは、戦後から今日まで、利便性や効率を追求してきた世代が何も良いものを残さなかった、という皮肉でもあるかもしれない。美術の現場でも、近代以降分裂気味であった工芸と純粋美術の境目は曖昧になって、今さらながら、個々の生活や生き方にリアリティーのある<用の美>への新たな関心が集まっているといってもよい。

本展の会場は、昨年5月にオープンした宿泊施設と現代美術のギャラリーなどが入居する複合文化施設<青春画廊>にある<コーヒースタンドと暮らしの道具店 Dongree >。青春画廊は、現代美術のユニットparamodelのメンバーが中心となって築100年の町家を再生させた空間である。DIY作業を重視して、京町家の機能そのものを再生させた改修だったと聞いている。

これからの数年、文化庁移転や京都芸大移転、その他の文化芸術など、たいへんな活況が予想されているが、それらの騒ぎとは無関係に、京の町が、もともと工業都市(手作業、家内制工業、工芸など)へと原点回帰しつつあるのかもしれないと思っている。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

暮らしと手しごと「KAKERA December」
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Category: Events





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