28, Mar 2012

ART KYOTO 2012
インタビュー 石橋圭吾、森裕一(ART KYOTO実行委員会)

2009年に第1回が開催され、京都初の現代アートフェアとして注目を集めた「アートフェア京都」。3度目の今年は「ART KYOTO」と新たな名称を打ち出し、会場も規模も大幅に拡大することになった。東日本大震災、原発問題、不況、円高、政治不信など、日本国内の状況が厳しさを増す中、関西に現代アートのマーケットを構築するべく活動を続ける実行委員のお2人に、今回のフェア開催にかける思いを語ってもらった。

聞き手:小吹隆文(美術ライター) インタビュー撮影:石川奈都子

森裕一 石橋圭吾

2年前には誰も今の姿を予想していなかった

――2年前から始まった「アートフェア京都」が、今年から「ART KYOTO」に改称し、内容も大幅にグレードアップします。これは第1回の時点から計画していたのでしょうか。 (石橋)
いえ、まさかこうなるとは誰も思っていませんでした。準備期間も入れたら2年半ほど前ですかね、立ち上げ当時は僕自身も何ができるか分からなかった。僕に比べてアートフェアに関する知識や経験、ノウハウが遥かに豊富である、森さんと井村さん(イムラアートギャラリーのオーナーでART KYOTO実行委員会の一人)に真っ先に相談しました。実務は主に僕がやりましたが、3人で模索しながら過去2年間ホテルモントレ京都でアートフェアを実現しました。続けるうちに周囲からの期待感が膨らんできたので、次はどうしようかとなった時に、井村さんが「石橋君、次は国立京都国際会館でやろう」と。僕自身はどういう形であれ10年間はこのプロジェクトを続けるつもりなので、やり方は年々変化しても構わないと思っています。ただ、これだけの規模になると3人では人数が足りない。そこで、小山登美夫さん(小山登美夫ギャラリー)と小崎哲哉さん(京都造形芸術大学客員教授)にも実行委員会に入っていただきました。それが昨年のフェアが終わってすぐの状況です。
(森)
僕は石橋君から相談を受けた時に、京都に現代美術のアートフェアを作るのはとてもいいことだと思いました。日本のアートマーケットはどうしても首都圏主導になるのですが、京都が持つ役割や優秀な作家を大勢輩出してきた歴史を考えたら、京都にもそういう場が必要です。普段美術に親しむ機会の少ない方にとって、画廊は少し入りにくいみたいですが、アートフェアは誰もが気軽に入れますし、ギャラリー同士や作品の比較もしやすいです。そこでギャラリーとお客様の間を繋ぐことによって、京都の古いものだけでなく、新しいものも知ってもらえる。そういう場として最適ではないかと思います。

アートフェア京都 2011

アートフェア京都 2011 陶ISM 会場風景
copyright : ART FAIR KYOTO 2011 / Hotel Monterey Kyoto / 陶ISM
photo : OMOTE Nobutada

アートフェア京都 2011

アートフェア京都 2011 レセプションパーティー風景
copyright : ART FAIR KYOTO 2011 / Hotel Monterey Kyoto
photo : SASAKURA Yohei


森裕一 MORI Yuichi
(SILVART co.,ltd./
MORI YU GALLERY代表取締役
森 裕一 MORI Yuichi

1968年京都生れ。大阪大学文学部哲学哲学史卒。大阪大学大学院美学修士課程修了。大阪大学大学院美学博士課程単位取得退学。京都、東京に現代美術ギャラリーを展開。東京国立近代美術館で個展を開催し、TOKYO DOME・CITY HALLに9mのオブジェを制作した黒田アキに加え、パラモデル、藤浩志、中山玲佳、小沢さかえ、藤原康博、他総勢20人余りのアーティストを抱えマネージメントを展開。黒田と世界的建築家リチャード・ロジャースの南山城村立小学校でのコラボや黒田と大手前大学図書館CELLルーフガーデンのディレクションを経験。
また「COLORS/VIKTOR&ROLF&KCI」展や「ラグジュアリー」展(2004、2009京都国立近代美術館)オープニング・パーティーをディレクション、京料理菊乃井、イルギオットーネら京都料理会の重鎮がつくる「ひこばえ会」の幹事をする等、現代美術を建築や食との関りにまで広げてきた。最近は海外への進出も多く、世界最大規模のアートフェアART HKにも出展するなど京都から現代アートの世界を拡大中。共著に『京の美学者たち』(晃洋書房)、『黒田アキ/COSMOGARDEN・線と縺れ』(アインズ株式会社/MORI YU GALLERY)がある。

ART KYOTO 2012公式WEBサイト
http://www.artkyoto.jp/

MORI YU GALLERY
http://www.moriyu-gallery.com/


石橋圭吾 Keigo Ishibashi
(有限会社ニュートロン代表取締役
[gallery neutron 主宰])
石橋圭吾 Keigo Ishibashi

1973年、東京生まれ。大学進学を機に京都に移り住んで以後、音楽、写真、デザインなどの分野で活動しながら地元のネットワークを広げ、2001年に新京極三条にカフェ・ギャラリー「neutron」をオープン。以後段階的に発展・増殖を繰り返し、2009年には東京の南青山に「neutron tokyo」をスタート。2011年には惜しまれながら京都本店を閉店し、各地でのアートイベント企画運営・参加のためのバックヤードとしての「FACTORY」を設立。常に世の中に向けてアートの存在を訴えかける意欲的なプロジェクトを打ち出している。「アートフェア京都」(2010, 2011)実行委員会代表、「Kawaii+ 大賞展」(2012)実行委員。

gallery neutron
http://www.neutron-kyoto.com/

ART KYOTO 2012公式WEBサイト
http://www.artkyoto.jp/


京都ならではのアートフェアとは

――会場が宝ヶ池と烏丸三条の2カ所になりますが、それについて反対はありませんでしたか。 (石橋)
国立京都国際会館は確かに広くて立派ですが、「アートフェア東京」の会場である東京国際フォーラムほどの規模はありません。だから1会場だけでは大規模とは言い切れないと思いました。それに、ホテルモントレ京都とは過去2回にわたって良好な関係でやらせていただいたので、地下鉄烏丸線で繋がっている2会場をお客様に行き来してもらうのが良いだろうと。実行委員の誰が言い出したのか定かではありませんが、割とすんなり合意が得られました。それと、地下鉄沿線で連動企画をやって盛り上げようという話もすぐに決まりました。京都には遠方から連泊で来られる方が多いので、いろんな所でイベントが観られる方が、わざわざ来た甲斐があると感じてもらえるのではないかと。

――確かに公式関連イベントが幾つもありますね。これらも実行委員会で企画されたのですか。 (石橋)
「MOVING」という映像企画は以前から行われていたし、主催者もしっかりしているので、僕らは何もしていません。ホテルアンテルーム京都の「ANTEROOM PROJECT」は、僕からアンテルームと名和晃平さんにお願いしました。藤井大丸の「grassland」は、『SHAKE ART!』というフリーペーパーを作っている若い子たちにも出番があった方がいいと思い、藤井大丸と彼らを繋ぐ役割を担当しています。あと、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAと京都造形芸術大学ウルトラファクトリーのイベントは、井村さんから働きかけていただきました。現段階では以上ですが、今後会期が近づいて来るに連れてもっと増えると思います。

プレ企画 vol.1「映像作品上映会 MOVING」 会場風景 京都シネマ 2011

映像芸術祭“MOVING 2012” プレ企画 vol.1「映像作品上映会 MOVING」 会場風景 京都シネマ 2011 photo by OMOTE Nobutada

――「ART KYOTO」を核にして、京都市内一帯で同時多発的にいろんなイベントが起こっている状況にしたいということですか。 (石橋)
森さんはよくご存知ですが、海外のアートフェアに行くと必ず地元のギャラリーの引率でツアーがあって、有力ギャラリーのオープニングパーティーに連れて行かれるんですよ。中にはお城のようなギャラリーもあって、「なぜ日本ではこういうイベントの作り方ができないのか」と毎回思います。それらと比べるつもりはありませんが、海外のフェアみたいな状況が当たり前になってほしいと思っています。

――「ART KYOTO」は、日帰りよりも数日滞在する方がより楽しめるアートフェアであると。 (石橋)
京都まで来られた方々に対して、一日だけじゃもったいないという気持ちがあります。過去2回のフェアでも2、3泊して、滞在中に何度も会場に来られるお客様が大勢いました。そして、何度も来られるお客様ほど最後には作品を購入されます。そうしたこともあって昨年はホテル型のアートフェアとして売れ行きはかなり良かったです。平均額も高かったし、僕が知る限りホテル型のアートフェアでは国内で断トツの成績だと思います。単なる賑やかしのイベントで終わらず、実利に繋げたいというのは、我々の本音として当然ありますから。
(森)
石橋君がデポジット制を導入したのは素晴らしいアイデアだったと思います。そういうのは今までなかったし、何か買う気にさせるというかね。アートフェアは、もちろん見るだけでも良いのです。全ては見ることから始まりますから。でも、掌というか、作品を買って帰ってもらい、家で愛でていただく所まで行けたら、ギャラリーとしては最高に嬉しいです。

――今回の料金システムもデポジット制ですか。 (森)
今回は違います。デポジット制無しで、2会場統一・3日間有効券で1,500円です。
(石橋)
過去2回は購入意欲があるお客様とそうでない方をセグメントするために、敢えて2,000円という高めの料金設定をして、その代わりにデポジット制にしました。しかし、今回は2つの会場に溢れんばかりにお客様がご来場されることを最優先に考えています。それに、デポジット制には作業がとても繁雑になるというマイナス面もあります。今回会場が2つになり、しかも国立京都国際会館は作品単価も高くなると思うので、デポジット制のメリットがあまりないと判断したのです。
(森)
今回は規模を大きくして行う1回目だから、動員という実績を優先したい。だから料金についても実験的な試みをしてみようと思ったのです。

森裕一 石橋圭吾
森裕一 石橋圭吾
森裕一 石橋圭吾

5人の実行委員会メンバー

――実行委員に小山登美夫さんと小崎哲也さんが加わった経緯をお聞かせください。 (石橋)
小山さんとは過去2年間のお付き合いがあり、かなり親しくさせていただいたので、3人(石橋、森、井村)で声をおかけしました。以前から事あるごとにお願いしていたので、割とすんなりお引き受けいただけました。小崎さんにはギャラリスト以外の立場の方に入っていただきたかったのと、シンポジウムに出演して語ってもらいたかったので、井村さんから声をかけていただきました。どちらかというと顧問に近い役割で、実務は我々4人で行っています。

――仕事の進め方はどんな感じですか。 (石橋)
お互いに忙しいのですが、2カ月に一度ぐらいは顔を合わせています。あと、どんな小さな事柄でもメールで確認し合うようにして、反対意見が出たら必ず情報を共有して問題を解決するのです。その繰り返しです。今までは僕が突っ走って森さんと井村さんがブレーキをかける形でしたが、今回は今までとは規模が違うので、じっくり時間をかけてすり合わせました。
(森)
いいデスカッションができていたと思います。特に小山さんは京都だけじゃなく、世界の状況を知っておられるので助かりました。
(石橋)
小山さんは頻繁にメールをくださる訳ではありませんが、僕が夜中にメールを送ったときでも、すぐに返信が来ることがありました。
(森)
夜中の2時ぐらいに来るよね。4人とも結構その時間に起きている。
(石橋)
こんな時間にメールを見てくれているんだ、嬉しいなって。

――チームワークの良さが感じられるエピソードですね。 (森)
4人とも世代が少しずつ違いますが、目線も経験も少しずつ違う人が集まっているのが良いのでしょう。

森裕一 石橋圭吾
森裕一 石橋圭吾
森裕一 石橋圭吾

これからのアートフェア、そしてART KYOTOの役割

――昨年は東日本大震災がありましたが、その影響はありましたか。 (石橋)
昨年の「アートフェア京都」は5月下旬に開催しました。東日本大震災から約2ヶ月後です。プレッシャーはもちろん感じましたが、僕も森さんも井村さんも日頃から京都と東京を行き来して状況を知っているので、これはもう東だ西だの問題じゃないと。これから日本は大変だし、そういうことを超えて、むしろ日本を背負っていくぐらいの気概でやらなきゃ駄目だと思いました。それで昨年は「今こそアートの力を」というキャッチコピーを付けたのです。フェアが始まると東からも西からもお客様が来てくださったし、敢えて開催したことについても温かい言葉を沢山いただきました。現場に立っていても、「こんなにいい雰囲気のアートフェアはない」と思ったほどです。

――出展状況はいかがですか。 (石橋)
当然、もう全部決まっています。ちょうど100ブースです。内訳は、国立京都国際会館が40、ホテルモントレ京都が60。海外からの出展は、韓国が13、イタリアが1、英国系インテリアメーカーのタイアップが1です。
(森)
自分らで言うのも何ですが、よく集まった方ではないでしょうか。
(石橋)
まだまだインターナショナルとは言えませんけどね。それこそ森さんには海外に行く度に動いていただいたし、皆それぞれ活動しましたが、こればかりはなかなか難しいのです。海外のフェアだと、それこそ韓国や台湾でも、もっとインターナショナルです。円高や放射能など様々な要因が絡み合っているのでしょうが、それでもこれだけの海外のギャラリーが参加してくれている訳です。今後はもっと海外からの参加を増やして行きたいし、「日本のアートマーケットもやればできるんだ」という道筋だけは作りたいです。
(撮影協力:neutron kyoto "FACTORY" http://www.galleryneutron.jp/
※作品は全てcourtesy of gallery neutron)

森裕一 石橋圭吾

小吹隆文 KOBUKI Takafumi
小吹隆文 KOBUKI Takafumi

美術ライター。約15年間の情報誌編集部勤務を経て、2005年よりフリーランスで活動。主な活動媒体は、京都新聞、Richer、Lmaga.jp、美術手帖、artscapeなど。ブログ「小吹隆文 アートのこぶ〆」(休止中)、ツイッターで自らの発信も行っている。

小吹隆文 アートのこぶ〆
http://blog.livedoor.jp/artkobujime/

twitter公式アカウント
http://twitter.com/#!/kobukitakafumi


ART KYOTO

京都が国際マーケットとして花開く瞬間。

観光美術都市「KYOTO」の創造へ

周知の通り京都は千年の都でありながら、今なお日本最先端の学術、技術、そして文化芸術を生み続ける国際都市でもあります。これからの日本及びアジアにおいて、私達の時代の美術を世界へと打ち出すためにこれほど環境に恵まれる土地は他にありません。

昨年の三月に未曾有の大災害に見舞われた日本。しかしこの国には潜在的に非常に恵まれたアート資源とブランド力があります。私達は日本文化を通じて力強く復興を目指し、次代のアートシーンを担う新しいマーケットを国際観光・文化都市「京都」において成立させるべきと信じ、ここに新たなステップを踏み出します。2010年、2011年と二年続けて開催されたホテルフェア「アートフェア京都」の基盤を引き継ぎながら、大規模にスケールアップしたアートイベントの集合体としての姿が、京都に出現します。それは今後の日本及びアジアのアートシーンの行く末を占い、国内外に大きなインパクトと影響を与える祭典となるでしょう。

メイン会場となるのは世界中に知られる「京都議定書」の採択地として有名な「国立京都国際会館(国際会議場)」。日本のアートシーンを世界に知らしめて来た「アートフェア東京」と志を同じくする西の新たな窓口として、有力ギャラリーと海外からの出展ギャラリーが軒を連ねる国際的アートフェアが実現します。そしてサブ会場には二年連続して「アートフェア京都」の舞台となった「ホテルモントレ京都」。
良質なホテルサービスと上品な展示空間は高い評価と実績を得ており、ここでも若く意欲的なギャラリーや企業、プロジェクト、国内外のユニークなギャラリーが集結します。この二会場を南北に結ぶ地下鉄烏丸線を軸に百貨店やデザインホテルなどとも連動し、複合的なアートイベントが実現します。さらには京都に構える美大・芸大にも企画参加を呼びかけ、南北東西の都市構造に沿って生まれる数々の出来事は、国内外から多くの美術ファン、観光客が訪れるに値する素晴らしい機会となることでしょう。

これからの日本の力を信じる世界中の全ての方々に注目して頂けます様、お願い申し上げます。

2012年3月 アート京都実行委員会

メイン会場 | 国立京都国際会館

メイン会場 | 国立京都国際会館

サブ会場 | ホテルモントレ京都

サブ会場 | ホテルモントレ京都

イベント名 ART KYOTO 2012
開催会期 2012年4月27日(金)、28日(土)、29日(日)
会 場 メイン会場 | 国立京都国際会館
サブ会場 | ホテルモントレ京都
入場料 ¥1,500 [両会場入場可能な三日間通し券]
主 催 アー ト京都実行委員会(井村優三、小山登美夫、森裕一、小崎哲哉、石橋圭吾)
協 力 株式会社フューチャースピリッツ
表千家京都青年部
国立京都国際会館
ホテルモントレ京都
DAEGU ART FAIR
doors ART FAIR
後 援 京都市
京都新聞社
京都信用金庫
京都商工会議所
ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川
関西日仏学館
在大阪イタリア総領事館
社団法人 京都経済 同友会
お問合先 ART KYOTO 2012実行委員会
メール : info@artkyoto.jp
〒600-8811 京都市下京区中堂寺坊城町28-5
(neutron kyoto FACTORY内)
公式HP http://www.artkyoto.jp/
※出展企業・ギャラリー一覧、関連企画、関連トークイベント情報などは公式HP参照。

ART KYOTO 2012
インタビュー 石橋圭吾、森裕一(ART KYOTO実行委員会)

Category: Feature





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