
24, Jun 2010

――『京都藝術』を開催することになった経緯をお教えください。
(田中)
僕は普段Antennaというアーティストグループで活動しているのですが、近年作品を制作すること以外にも、京都や京都以外で展覧会を企画・運営するなど、作品を見せる立場で活動する機会が増えてきたんです。そういったことをきっかけに「京都という場所自体が秘めているポテンシャル」についてメンバー間で話す時間が増えていきました。
現在雑誌などのメディアを見ると、掲載されているアーティストのかなりの量が京都出身だったり、京都で学生時代を過ごしています。「こういったポテンシャルを、もっと京都から発信できないか」と話し始めたのが1、2年前です。
そこで今年京都で『わくわく京都』という展示、パフォーマンスなどを行うイベントを開催することになったのですが、そのミーティングのためにみんなで集まったときに「『わくわく京都』でアーティストがたくさん集まって、そこで大きなお祭りはできるんだけど、京都という街は特性上、他の人たちを巻き込みにくい状況があるのではないか」という話になり、そこはもっと考えたほうがいいということになりました。
そのことについてAntennaと0000で一晩長く話したことがあり、その時に『わくわく京都』という個性の強い言葉を用いるのではなくて、もっと京都全体をゆるやかにつなぐフレームを作る方がいいんじゃないかという話になったんです。
個々で色々な活動をしているアーティスト、ギャラリー、オルタナティブなスペースなどを一同につないで、京都を俯瞰できような機会を作ってみようと話したことがそもそもの始まりですね。
(緑川)
『わくわく京都』というイベントも必要だけど、もっと無色透明なフレームも必要だという話になったんですよ。『わくわく』というある種思想のようなものの中で動いていくだけではなく、同じようにギャラリーやアーティストが、それぞれに持っている思想のようなものを、全体として囲めるようなフレームを作っていこう、ということになり『京都芸術』が立ち上がりました。
――そうすると 『京都藝術』で取り組もうとしていることは、「京都の持っているポテンシャルをいかに発信していくか」というところが中心になってくるのでしょうか。
(田中)
それも一つあるんですけど、京都がなぜそういったポテンシャルを持っているのかということを、みんなで考える機会を作りたいという思いもあります。京都の人自身も京都の現状を理解しているケースは多くないですし「なぜ京都でおもしろい作家が出てくるのか」ということなどを、もう一度みんなで考え直した方がいいと思います。)
0000はもともと東京で活動していたのですが、京都に可能性を見出してやってきてたんです。
Antennaはずっと京都にいるのですが、そういった2組が意見を交わしたというのは、大きい気がしますね。
(緑川)
目的としては京都の芸術を一望できる機会を作って、それを広げようというところが大きいですね。
(田中)
現在京都全体を俯瞰して見る機会がないので。
――たしかにこういったことは、狭い街の中に色々なものが詰まっている京都でしか成立しないプロジェクトかもしれないですね。
(緑川)
僕はそう思います。東京や他の地方都市でこういったことはできないですよ。
(田中)
京都は1000年以上の歴史を経て、成熟している特殊な都市なので、芸術としてすごく成熟した何かがあると考えています。コンセプトの部分にも書いていますが、『京都藝術』を通して歴史と芸術というのが、どのように関係しているかということも考えたいと思っています。
――『京都藝術』で具体的に何を行うかという内容を教えていただけますか。
(緑川)
広報誌『Kyoto Arts File 2010』を作るとことが、活動の中心となります。ファイルという言葉には、「バラバラのものを綴(と)じる」という意味があるのですが、今京都でそれぞれが個々に行っている活動をファイル化し、マップを作って「こういう場所がある」というのを紹介したいと思っています。それに伴って、一ヶ月の中でオープニングパーティーや、お寺巡りツアーなどのイベントを行います。
(田中)
通常こういったマップや冊子を作るときには、「情報を集めてただ提示する」ということが多いのですが、もう少し能動的な形で参加していただき、8月にイベントなどをやってもらうことで、冊子とイベントがうまく連動するような仕組みをつくりたいと思っています。
京都という町で特別に大きなイベントをやる必要ないと思うんです。もともと京都にはそれぞれおもしろい取り組みをしている場所が多いんです。普段バラバラにやっているそれらの活動を、「どこかの期間で足並みをそろえ、連携をとって全体を盛り上げる動きをしてみませんか」という働きかけをしたいと思っているんです。そういったことが、一番大きな目的だと思っています。
(市村)
アートシーンもそうかもしれないですが、それも含めた京都全体の現状を伝えたいと思っています。ギャラリーという引き出しを開けるとアートマップが入っていて、カフェとかいう引き出しを開けると雑誌のカフェ特集などのカフェマップがあるような、その引き出し全部が京都そのものを表わしていて、その引き出しを重ねた分厚さが京都自体のポテンシャルになっている気がしているんです。みんなその分厚さを感じているんだろうけど、流してしまっているような状態だと思います。
――トークイベントはどのようなテーマを予定していますか。
(田中)
2部に分けて開催する予定なのですが、第1部では「京都で作ることを選択している作家さん」に話を聞く予定です。現時点で予定している出演者は、ヤノベケンジさん、名和晃平さん、金氏徹平さんなどです。
2部では今年開催された"超京都"の実行委員である、松尾惠さん(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w代表)、同じく今年開催された"アートフェア京都"の実行委員である、石橋圭吾さん(neutron代表)、森裕一さん(MORI YU GALLERY代表取締役)、そして京都市の文化行政担当職員の原智治さんが参加してくださる予定です。トークイベントに関してはまだ交渉中の部分が多いです。
(市村)
2部はそれらの方々に「京都の文化を見せるという立場」でお話していただきます。
(※1)京都を拠点に活動するアーティストグループ。メンバー各々が、映像、立体、ペインティング、建築、デザイン等ジャンルを越え横断的に関わり、その可能性によって生み出される新たな表現をめざす。メンバーは写真右から田中英行、市村恵介、古川きくみの3人。
(※2)メンバーは緑川雄太郎、Nam HyoJun、谷口創、Kim okkoの4人。0000 galleryの運営、展覧会やアートイベントなどの企画やディレクションなどを通して、いろいろな角度から、「日本のアートシーン」を総合的に創り上げていくことを目的としている。
田中英行(antenna)
市村恵介(antenna)
緑川雄太郎(0000)

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。京都嵯峨芸術大学造形学科油画専攻修了。京都のデザイン会社、株式会社フィールドにプランナー/デザイナーとして所属。2009年同会社で「京都で活躍するアーティストと社会をつなぐ」ことをコンセプトとしたWEBサイト"&ART"を立ち上げ、企画・編集・広報などを担当している。また自身もアーティストとして"なかもと真生"名義で活動。廃棄物を使用した大型作品の発表を中心に、大原美術館(倉敷)での『AM倉敷Vol.6 なかもと真生 Structure of nothingness』や、家屋全体を利用した空間展示など、精力的に活動を展開している。
Photo by Tanaka Ayumu
株式会社フィールド
http://www.fieldcorp.jp/
なかもと真生WEBサイト
http://www.nakamotomasaki.jp/
――京都では近年「超京都」「アートフェア京都」そしてAntennaの皆さんが実行委員をつとめている「京都オープンスタジオ」など様々なイベントが開催されてきました。しかし、そういったバラバラで起こっている出来事や、広い範囲で場をつなぐ役目となる可能性を持ったイベントというのは、初めてかもしれないですね。 (緑川)
点を線にして面にすることを『京都芸術』でやりたいと考えています。それぞれのギャラリーなどのやっていることは“点”で、今そこから“線”へとつながってきているので、あとは面にする作業が必要だと思っています。『Kyoto Arts File 2010』という形で面にして、その後「立体になって動くていく」というのは僕らのやることではないと思うんです。そういったことは、別の色々な力が働いて作られていくことだと思いますから、むしろ僕らがすべきなのはそれを促すような役割だと考えています。
――広報誌「Kyoto Arts File 2010」を発行するときに、紙面のクオリティーということ以上に、「どのような場所に置くのか」という事が重要になってきますよね。広報活動を主に京都内に向けるのか、日本全国に向けるのか、世界に向けるのか、アート以外のジャンルの人に向けるのかということによって、コンセプト自体が変わってきますよね。 (緑川)
現在阪急電車の駅に置いていただくお話をしているので、そこで電車の利用者の方には、見ていただけるかなと思います。他にもホテルや、本屋さんなどに交渉する予定ですし、ギャラリーだけではなく、できるだけ色々な場所に置きたいと思っています。
(田中)
アートってすごく幅広いものじゃないですか。でも京都という狭い都市の中でも、各層で断絶してしまっているんですよ。アーティスト・ラン・スペースやオルタナティブ・スペースを知らないギャラリストの方や、逆にアーティストが全然ギャラリーの情報を知らないということもあるんです。『京都藝術』を行うことで相互の情報の交換が起きたらいいと思っているんですよ。
第1回目の今回は先ずは京都の街自体がつながるということを、優先したいと考えています。また、紙媒体は手に渡る可能性が限定されてしまうので、それに加えてWEB上で情報を受け取れるような状態を作らないといけないと思っています。
――例えばオルタナティブスペースと貸画廊など、メリットの違う人々をつなぐということは、とても難しい課題ですよね。 (田中)
もしこの企画を5年位前にやっていたら、あっさり断られていたかもしれないです。でもここ数年で京都にコマーシャルギャラリーが増えたり、アーティスト運営のスペースが増え、既存のギャラリーを中心とした作品の在り方が変化してきたのではないでしょうか。また「何かを変えたい」という意識を多くの方が持っていることも、今回参加のお願いをしたときに様々な場所を回って感じました。現在京都でイベントが続いているのも、こうしたことの表われだと思うんです。
――「今後も継続的に開催」と記載されていますが、 今後どのような展望を持っているのかをお聞かせください。(田中)
閉ざされた世界の裾野をいかに広げていくかということはテーマとしてあります。色々な人が歩み寄れる状況を作りたいですし、今のアートと呼ばれる括りの中で活動していても、これ以上大きく発展していくことって難しいと思うんです。「美に対する意識」というのはどんなジャンルにもあると思うんです。そういうものを京都でつないでいきたいと考えています。
(取材・撮影:2010年06月20日 0000 GALLERYにて)



古来より日本の芸術文化の中心地として栄えてきた京都は、優れた伝統文化を継承しながら、常に新しい芸術を生み出してきました。1200年以上の長い歴史を積み重ねてきたこの街は、美術館やギャラリー、劇場、芸術大学などが数多く存在する文化芸術都市として今もなお、多くの人々を惹きつけています。このような京都の魅力を十分に味わうために、古今にわたる膨大な歴史と、さま ざまな媒体へと派生している文化の全体像を見渡すことができる機会を創出したいと考えました。
そこでこの夏、京都一円を舞台とした「京都藝術 Kyoto Arts 2010」を開催します。そして、2010年8月の1ヶ月間にわたり、多数 の会場にて行われる展覧会やイベントに対して全体の連携をはかり、ジャンルや世代をまたいで豊かにひろがる「京都藝術」を一 覧できる機会をつくります。
「京都藝術 Kyoto Arts」は今後も継続的に開催し、美術に限らず、音楽や演劇、芸能をはじめとした多様なジャンルをつなぎなが ら、世代を超えた人々が集まり、改めて京都と芸術についての考えを共有し、深める機会としていきます。そして、歴史と現代とをつ なぎ、いにしえより脈々と引き継がれてきた文化の本質と、その類なき魅力を、より多くの人々に伝えていきたいと考えます。
京都芸術実行委員会
2010年8月の1ヶ月間に、京都市内の様々な会場にて行われる展覧会やイベントに対して全体の連携をはかりジャンルや世代をまたいで豊かにひろがる「京都藝術」を一覧できる機会をつくります。また会期中には古代から現代に至るまでの様々な芸術活動を視野に収めたイベントを提示し、「京都藝術」の今、そしてこれからのヴィジョンを探ります。企画に合わせた「京都藝術Kyoto Arts 2010」の広報誌「Kyoto Arts File 2010」を発行し、イベントや展覧会情報の告知を精力的に行います。この企画は、今後も継続して行う予定をしています。「京都藝術 KyotoArts 2010」の開催により、長い時間をかけて、芸術を中心とした各方面の表現者、団体等と連携し、継続的な社会と芸術の活性化をはかると共に、京都から世界に向けての文化発信を行います。
京都藝術 Kyoto Arts 2010の広報誌「Kyoto Arts File 2010」を発行し、イベントや展覧会情報の広報活動を 精力的に行います。
アートスペース虹、アートスペース其の延長、&Art、imura art gallery、eN arts、0000 Gallery 、カフェ さらさ、ギ ャラリーアンテナ、増田屋ビル、ギャラリー16、ギャラリー知、京都工芸繊維大学(美術工芸資料館)、京都造形芸術大学 (ウルトラファクトリー / ギャラリーRAKU)、GURA、恵文社一乗寺店、ゲストハウスこばこ、児玉画廊、Collective Parasol、 SANDWICH、GArtStudio、Super Window Project、studio90、ダイニング カム オンスタイル、同時代ギャラリー、 neutron、バー京楽、MUZZ PROGRAM SPACE、モリユウギャラリー、淀、他
(※6月17日現在)敬称略、50音順
2010年8月1日(日)~2010年8月29日(日)※会場によって会期・会場時間が異なります。ご注意下さい。
実行委員 : 0000 Antenna 旭 藍子 伊藤 悠 遠藤一郎 ハガミチコ 深井史郎 矢津吉隆
お問い合わせはこちらまで
京都藝術実行委員会
〒600-8059 京都府京都市下京区麩屋町通五条上る下鱗形563 0000 gallery内
tel / fax:075(200)3106
mail:kyotoarts2010@gmail.com
担当:緑川 雄太郎 080-6025-0404(日中連絡先)
速報 『京都藝術』
京都の文化の全体像を見渡すための試み
Category: Feature