31, Aug 2012

京都藝術2012
インタビュー 後藤あゆみ、小島健史(京都藝術実行委員)

2012年9月15日~10月5日、京都市内各所で『京都藝術 2012』が開催される。京都藝術は広報誌『Kyoto Arts File 2012』を発行し、期間中に京都で行われる展覧会やイベントの告知を行ったり、期間に合わせてトークイベントを行うというアートプロジェクト。それによって「文化の全体像を見渡す機会をつくり、京都を拠点とする様々な施設、団体の連携を促すこと」を目的としている。2010年に初回が開催され、今回で第2回となる本プロジェクトについて、実行委員の後藤あゆみさん、小島健史さんにお話を伺った。

聞き手:中本真生(&ART編集長、MOVINGディレクター、アーティスト)

1. 『京都藝術 2012』開催経緯

――なぜ今のタイミングで第2回を開催することになったのでしょうか。 (後藤)
私はお客さんの立場で2010年に開催された京都藝術に参加しました。「京都で活動している人が集まって一緒に作り上げていく」というスタイルのイベントに参加したことがなかったので、その時とても感動したんです。「こういったイベントが今後も続けばいいな」と思っていたのですが、昨年開催されなかったので残念に思い、2010年から実行委員をしているAntenna Mediaの田中英行さん、深井史朗さんとお話しする機会があったとき、なぜ2011年開催しなかったのかを聞きました。先輩たちと一緒にイベントを行って勉強したいという気持ちもあり、そのとき「京都藝術に関わりたいです」とお伝えしたのですが、それがきっかけで今年開催することになりました。まさか自分がディレクターになるとは思っていませんでしたが(笑)。「若い人々の新しい視点とパワーが今後の京都藝術には必要不可欠」というお二人の意向があり、ディレクターを任せていただく事になりました。
(小島)
今年は『アートフェア京都』の名称が『ART KYOTO』に変わり、京都を1つの文化都市として見せる大きな流れが生まれた年です。そういった状況を一緒に盛り上げていけるような機会を作りたいという思いもありました。

――小島さんも今年から実行委員会に加わりましたが、関わることになった経緯を教えてください。 (小島)
僕は今年のART KYOTO 2012で、ホテルモントレ京都会場の統括責任者をしていました。その時にアーティストグループ"Antenna"として出展していた田中さん、関連企画でSHAKEART!の代表として関わっていた後藤さんと出会い、その後、後藤さんから声をかけていただきました。
普段Factory Kyotoというオルタナティブスペースの運営に携わっているのですが、そこでは「人や場所、ジャンルをつなぐ」ということを試みています。京都藝術のキャッチコピーは「京都をつなぐ、文化をつなぐ。」なのですが、"つなぐ"ということに重きを置いている点で、共感できる部分が多かったので参加させていただこうと思いました。
(後藤)
チーム内では営業代表のような立位置で引っ張ってくれています。

――後藤さんはなぜ小島さんを誘ったのでしょうか。 (後藤)
当初から実行委員に"若い世代"が必要だという意向があったのも理由です。頑張っている同世代の人で、京都に残って活動し続けている人は少ないんです。実行委員の田中さんからも小島さんが良いのではないかとの話しもあり、小島さんは京都に残って、今後も色々な企画をしていきたい、という意志を持っていたので声をかけました。

――SHAKEART!の実績もあるので、後藤さんがディレクターに入ることで、1回目よりもさらにアートを親しみやすい形で発信してくれるんじゃないかという期待はありますよね。 (小島)
広報誌にも、SHAKEART!で培われた後藤さんのアイデアは生きていると思います。

――今回は実行委員が1回目とはガラッと変わっていますが、新しい人に引き継いでいけるというのはいいことですね。 (小島)
僕としては、さらに三回目を見越してやっていきたいと考えています。「核になるメンバーが抜けたら終わってしまう」というのでなく、人が入れ替わってもまた新しいメンバーで次に向かってやっていけるような体制を作りたいです。
(後藤)
応援してくれる方にも「何より続けてほしい」とおっしゃっていただいています。


後藤あゆみ GOTO Ayumi
後藤あゆみ

1990年大分県別府市生まれ。京都精華大学デザイン学部デジタルクリエイションコースに在学中。大学生によるアートプロデュース団体 SHAKE ART!の代表を務めフリーマガジンの発行、イベント企画運営、ラジオ番組、デザイン業務などを行う。大学やIT会社のアルバイト経験も活かしWEBサービスやアプリの企画制作にも取り組む。京都藝術2012 ディレクター。


小島健史 KOJIMA Kento
小島健史 KOJIMA Kento

1987年生まれ。東京都出身、京都在住。同志社大学経済学部卒業。大学在学中にコミュニティスペースを繋ぐ企画団体『HOX』を結成。現在はFactory Kyoto(下京区)にてコミュニティスペースの運営に携わる。『ART KYOTO 2012』サブ会場 統括責任者。『京都藝術 2012』実行委員。


2. プロジェクトの形式と企画内容

――地域型プロジェクトや、アートフェアなど、色々なアートプロジェクトのパターンがある中で、『京都藝術』の形式が持つ可能性はどのようなところでしょうか。 (後藤)
アートが好きな友達が京都以外の都市から来たときに、毎回「京都っていい場所なんだけど、どこに行けばおもしろい展示を観ることができるか分かり辛い」と言われるんですよ。そういうときに、「ここでこういう展示をやっている」とか「こういう施設がある」ということが一目で分かるものが必要です。全体の様子を見ることができる機会を京都藝術で作っていきたいと思っています。
(小島)
今回の京都藝術で特にこだわった部分は、広報誌に詳細なMAPが付いているため、保存版として使えるということです。期間が終わった後も、これをもって出かけてみようと思えるものに仕上がっているのではないでしょうか。広報誌とイベント合わせて、「京都の文化的なシーンのミクロなつながりをマクロとして見せる」という見せ方ができればと考えています。

――参加する施設/団体も入れ替わったところが多いですが、今回はどのようなところが参加するのでしょうか。 (後藤)
前回はアートスペースやギャラリーが多かったのですが、今回は特に雑貨店やカフェが多いですね。実行委員の意向として、今回は特に「アートをいかに広い層に向けて発信するか」という部分にこだわりました。アートの客層を広げていく事に重きを置いています。
(小島)
広報誌の中にアートグッズを特集するページがあるのですが、こういった傾向は前回ありませんでした。美術関係以外では、手づくり靴専門店 吉靴房(きっかぼう)さんや、カフェのJAPONICAさんなどに参加していただきます。『京都藝術』は美術の印象が強いかもしれませんが、別の業界が入ってきてくれる方がおもしろいと思いますし、また色々な層のお客さんが訪れるきっかけを生み出せると期待しています。

――主催、関連イベントについて伺います。前回はヤノベケンジさん、名和晃平さんなどが出演したトークイベントを開催しましたが、今回はどのようなイベントを予定していますか。 (小島)
今年の京都藝術では『ニュイ・ブランシュ京都2012』とイベント協力を行い、最終日の10月5日はアートで京都中がおおいに盛り上がる一夜となる予定です。こういった連携によって京都全体を盛り上げていく仕組みづくりはとても重要な事だと考えています。
(後藤)
京都にあるオルタナティブスペースの代表者が集まり、意見を交わすトークイベントをARTZONEにて行います。スペースを持っている人同士が話すことはなかなかないので、貴重な機会になると思います。既存の枠組みではなく、なるべく若い世代、次世代を担う人々が考えている事を話す場を作りたいと考えました。
(小島)
現時点で、UrBANGUILD、Factory Kyoto、CAVE、Gallery Ort Projectが参加予定です。なぜ京都にこだわるのか、という話題にも触れる予定なので、“京都”というワードはたくさん出てくるのではないでしょうか。
(後藤)
他には、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAとの共催企画で、ゲストに京都市立芸術大学学長の建畠晢さんを招いた『震災関連トークイベント』が行われます。最終日にもトークイベントがあります。ART KYOTO実行委員やneutron代表としてご活躍されてきた石橋圭吾さんに「京都の魅力とアート」についてお話していただいたり、アーティストグループAntennaとゲスト作家による「グループによるアーティスト活動」をテーマにしたトークを行う予定です。
(小島)
オルタナティブスペースについてのトークイベントは、実行委員以外の方から、「京都藝術の枠でこういったイベントをやらないの?」という投げかけをもらったことがきっかけで開催することになりました。京都藝術では各会場のことを掲載会場ではなく協力会場と呼んでいますが、実行委員会では「各会場と協力して、みんなでムーブメントを作っていく」という流れを大事にしたいと思っています。

――能動的にイベントを企画してもらい、一緒に作り上げていくには信頼関係が重要になります。たくさんの人や施設といい関係を築くのであれば、一朝一夕とはいかないですよね。 (後藤)
大変だと思いますが、そこを乗り越えて挑戦していきたいという気持ちがあります。今回初めて気付いた点も多かったので、いい経験をさせていただいています。
(小島)
「僕らが何を提案できるか」ということよりも、「各会場にいかに京都藝術を利用してもらえるか」ということのほうが大事だと思いますし、そのためには僕らがどういう魅力をもっているのかということを知っていただかなくてはいけません。それをはっきりさせることも今後の課題になると思います。

『京都藝術 2010』 トークイベント 第一部 「京都でつくること」 会場風景 スピーカー:金氏徹平/名和晃平/ヤノベケンジ 聞き手:Antenna/矢津吉隆 photo by OMOTE Nobutada

『京都藝術 2010』 トークイベント 第一部 「京都でつくること」 会場風景
スピーカー:金氏徹平/名和晃平/ヤノベケンジ 聞き手:Antenna/矢津吉隆
photo by OMOTE Nobutada

後藤あゆみ
小島健史

3. 京都でアートプロジェクトを行うこと

――“広報誌に掲載する”ということ以外に、どのような形で協力会場に還元する予定でしょうか。 (小島)
ある会場に営業でうかがったとき、京都藝術に参加することのメリットについて「集客効果が期待できる」という説明をしたところ、「京都のアートシーンを盛り上げたいなら人数よりも、まず一致団結することが必要なんじゃないか」とおっしゃっていただきました。動員数に終始してしまうと、京都藝術でなくてはならない理由が薄くなってしまいますし、僕らにしか出来ない還元方法を見つけたいですね。

――第一回の際、広報について「先ずは京都の人に知ってもらい、街自体がつながることを優先したい」とおっしゃっていましたね。コンセプト自体に関わってくることだと思いますが、今回どのような広報計画を考えていますか。 (小島)
京都はもともと力のある場所で、海外からも観光都市として認知されています。海外から来た方に文化発信の場を知ってもらうことも重要ですが、現時点ではまだ京都の中で盛り上げていくことが最重要だと考えています。
(後藤)
広報物は京都を中心とした関西圏の都市に配布する予定です。美術系の人たちにはある程度京都藝術を知っていただいていますが、普段美術に親しむ機会がない方や、ギャラリーに行く習慣がない方にはまだまだ認知されていません。そういった方の手に届くような場所への配布を考えています。

――京都の文化発展を考えれば、後藤さんや小島さんなどの若い世代が、京都でアートプロジェクトの企画に携わることは非常に重要です。京都でアートプロジェクトを行う際に、どのようなモチベーションで望んでいますか。 (後藤)
京都で企画を頑張っている若い人の中には、東京に行ってしまう人も少なくありません。せっかくおもしろいことが行われていても、人がいなくなると途絶えてしまいます。 私はアートイベントや、好きなア-ティストの作品を観に行くのが好きなので、こちらで作品を観る機会が少なくなってしまうことは非常に残念ですし、アーティストにとっても発表の機会は必要です。
SHAKEART!の活動の一環としてイベントを行うことがあるのですが、京都では企画自体が少ないので、小規模なイベントであっても「こういう機会はあまりないのでうれしい」という声をいただきます。そういう声を聞くと、「今自分が関東に行ってしまうのはもったいない、とにかく京都で続けることが必要だ」と感じます。
関東はすでにいいイベントで溢れているので、向こうに行って自分が活動する意味をあまり感じません。東京にあって京都にはないようなイベントを企画していきたいですし、京都でしか出来ないことにも可能性を感じるので、これからもここで挑戦していきたいです。
音楽、美術、飲食ほか、自分にできることならなんでもしたいですし「普段アートに親しむ機会がない人に、いかにアートの楽しみを提供できるのか」ということに、色々な人とつながりをつくりながら、一緒に取り組んでいければと思います。

(取材・撮影:2012年8月24日 取材協力:cafe&gallery etw)


中本真生 Nakamoto Masaki
中本真生 Nakamoto Masaki

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。京都嵯峨芸術大学造形学科油画専攻修了。&ART編集長。映像芸術祭“MOVING 2012”ディレクター。アーティストとして"なかもと真生"名義で活動するなど精力的に活動を展開している。

Photo by OMOTE Nobutada

&ART
http://www.andart.jp/

MOVING公式WEBサイト
http://www.moving-kyoto.jp/


京都藝術2012

コンセプト

≪京都をつなぐ、文化をつなぐ。≫

古来より日本の芸術文化の中心地として栄えてきた京都は、優れた伝統文化を継承しながら、常に新しい芸術を生み出してきました。1200年以上の長い歴史を積み重ねてきたこの街は、美術館やギャラリー、劇場、芸術大学などが数多く存在する文化芸術都市として、今もなお、多くの人々を惹きつけています。

2010年に開催された「京都藝術/KYOTO ARTS 2010」では、このような京都の魅力を十分に味わうために、古今にわたる膨大な歴史と、さまざまな媒体へと派生している文化の全体像を見渡すことができる機会を創出しました。

そこで今回は、更なる規模の拡大と、京都の芸術に対する参加機会の増大を目的に、「京都藝術/KYOTO ARTS 2012」を開催いたします。今回からは、”京都芸術文化強化月間”と銘打って、開催期間に多数の会場にて行われる展覧会やイベントに対して全体の連携をはかり、ジャンルや世代をまたいで豊かにひろがる「京都藝術」を一覧し、参加できる機会をつくります。また、会期中には古代から現代に至るまでの様々な芸術活動を視野に収めたシンポジウムを開催し、京都の芸術文化の今、そしてこれからのヴィジョンを探ります。

「京都藝術/KYOTO ARTS」が今後、分野や世代を超えて、京都と芸術についての考えを共有し、深める機会として定着するよう邁進いたします。そして、歴史と現代をつなぎ、いにしえより脈々と受け継がれてきた文化の本質と、その類なき魅力を、より多くの人々に伝えていきたいと考えます。

京都藝術実行委員会

概要

2012年9月中旬から10月初頭にかけて、京都市内の様々な会場にて行われる展覧会やイベントに対して全体の連携をはかり、対外的な広報を集約すること、そして意図的に各ギャラリーや文化施設のイベントを「京都藝術」期間に集中して開催することで、各会場の集客数増加を目指し、京都がもつ文化発信力、芸術の活性化をはかります。
企画に合わせた「京都藝術/KYOTO ARTS 2012」の広報誌「Kyoto Arts File 2012」を発行し、各イベントや展覧会情報の告知を精力的に行います。「Kyoto Arts File 2012」の発行により、長い時間をかけて、芸術を中心とした各方面の表現者、団体等と連携し、継続的な社会と芸術の活性化をはかると共に、京都から世界に向けての文化発信力の向上を目指します。

イベント名 京都藝術/KYOTO ARTS 2012
開催会期 2012年9月15日(土)~10月5日(金)
会場・団体 AMeeT/Antenna Media/Art Space-MEISEI/ARTZONE/cafe dining near∽gallery near/Duce mix shop/eN arts/Factory Kyoto/ flowing KARASUMA/GALLERY GALLERY/Gallery Ort Project /HACOBU KITCHEN. /HAPS/idola/imura art gallery/JAPONICA/MAEDA HIROMI Art Gallery/ro–ji/studio90/UrBANGUILD/アートスペース虹/うめぞの CAFE & GALLERY/かもがわカフェ/菊屋雑貨店/吉靴房/京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都国立近代美術館/京都芸術センター/京都で遊ぼうART/京都文化博物館/ギャラリー恵風/ギャラリー知/ギャラリーヒルゲート/児玉画廊/さらさ花遊小路/森林食堂/清課堂/千總ギャラリー/椿 -tsubaki labo- KYOTO/同時代ギャラリー/吉田屋料理店
WEB http://kyotoarts.net/
主 催 京都藝術2012実行委員会
助 成 一般財団法人ニッシャ印刷文化振興財団
協 賛 廣田鑑賞会
協力 HAPS/AMeeT/京都で遊ぼうART/ニュイ・ブランシュKYOTO 2012
後 援 京都府/京都市
企 画 NPO法人 Antenna Media
お問合先 京都藝術実行委員会
メール : kyotoarts2012@gmail.com
〒600-8059 京都府京都市下京区麩屋町通五条上る下鱗形563 Antenna Media 内

京都藝術2012
インタビュー 後藤あゆみ、小島健史(京都藝術実行委員)

Category: Feature





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