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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第1回(全3回)―式年遷宮と民間伝承と神話、あるいはフランケンシュタインとゾンビとイタコ対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 07 22

2章以降については、2019年6月12日(水)に行ったインタビュー・対談に編集を加えて構成。

インタビュアー・編集:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

協力:はがみちこ(アート・メディエーター)

取材撮影:表恒匡

撮影協力:ULTRA FACTORY(京都造形芸術大学)

2. チーム体制と役割

――はじめに再制作の実作業について、どのようなチーム体制で行い、その組織の中でご自身がどのような役割を担っていたかを簡単にご説明いただけますか。まずは古舘さんからお願いします。

(古舘)
2015年に京都で行った修復作業では、事業全体の企画・運営・管理を、京都市立芸術大学芸術資源研究センター(以下、芸資研)が主となって行いました。エンジニア・チームは高谷史郎さん、僕、白木良、濱哲史の4名です。
僕が『LOVERS』に初めて関わったのは、2013年のせんだいメディアテークでの展示です。その時は、それまでの多くの展示で省かれていた天井から床面へのプロジェクションを改めて再制作しました。京都での修復作業では、作品の動作の解析及びその結果を元にした資料作りを主に担当しました。

――エンジニア・チームの中で、1994年にキヤノン・アートラボで公開されたオリジナル・ヴァージョンの制作に関わった、あるいは鑑賞したのは高谷さんのみという認識で正しいでしょうか。

(古舘)
はい。

――続いて、『欲望のコード』について、三原さんお願いします。

(三原)
2016年に修復のプロジェクトが始まりました。メンバーは、2009年にオリジナル・ヴァージョンを制作したメンバーで構成されています。三上さんのみが不在といった感じです。
三上さんの生前、僕は当時勤務していたYCAMインターラボのテクニカルディレクターとして、本人と企画段階から関わり、技術面における統合的な役割を担いました。オープン後も巡回展示の度に都度やりとりしつつ、仕様の変更をしていました。修復の際には、三上さんとやりとりした内容や当時のデータを参考にしながら、細部からシステム全体についての変更点の判断をしました。

オリジナル・ヴァージョン制作時、アーティストのクワクボリョウタさんにハードウェアの制御システムの設計をしていただいたので、修復の際には回路の補修・ヴァージョンアップ版の再制作をお願いしました。またアーティストでプログラマーの平川紀道さんにビジュアル・プログラムのアップデートを、「蠢く壁」の技術的な監修をされた建築家の市川創太さんには技術的な解説、またサーボ ※11 ・モーター ※12 の制御システムについて、当時、制作された竹ヶ原設計に再制作を実現していただきました。他のYCAMインターラボ・メンバーとしては、大脇理智が「多視点を持った触覚的サーチアーム」のハードウェアの設計を、濱哲史が音響を担当しました。また一連の修復事業のプロジェクトマネージメントは渡邉朋也というアーキヴィストが担当しています。彼が遺族と、遺作の管理や著作権について交渉をまとめ、修復に際して必要な法的な問題をクリアしました。主なメンバーとしては以上です。

『欲望のコード』と『Eye-Tracking Informatics』の修復・メンテナンス作業の記録映像

――続いて、『水中エンジン』について、白石さんお願いします。

(白石)
『水中エンジン』の再制作プロジェクトは2016年から調査を開始し、2017年に制作を開始しました。発起人はキュレーターの遠藤水城です。私は再制作にエンジニアとして参加しました。それ以外にもアーカイヴとパブリッシングの部分で、はがみちこと高嶋慈が関わっています。メインのメンバーはその4名です。
遠藤がキュレーションする展覧会に出品するためにプロジェクトが始まり、今回の鼎談の舞台にもなっている京都造形芸術大学のULTRA FACTORYで制作を行い、小山市立車屋美術館、アートスペース虹の2箇所で展示されました。
そもそも『水中エンジン』で、残っていたオリジナルの要素は水槽部分のみで、作品のメインの要素であるエンジンは、2012年にアートスペース虹で、その後2013年に西宮大谷記念美術館で、國府自身によってそれぞれオリジナル・ヴァージョンが制作された後、共に喪失しています。ですから修復というレベルではなく、再制作に伴い、喪失部分を新たに制作しました。

再制作のために購入された、オリジナル・ヴァージョンと同型のエンジン(スバル サンバー EK23型エンジン KT1 550cc 2WD)。
再制作のために購入された、オリジナル・ヴァージョンと同型のエンジン(スバル サンバー EK23型エンジン KT1 550cc 2WD)。
画像提供:國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト実行委員会

――國府さんが生前、オリジナル・ヴァージョンを制作された際、白石さんは設置サポートという形で関わったのですよね。

(白石)
インストールの1週間前くらいに國府に呼ばれ、「こういうことをやりたい」という相談を受けました。その時はまだ完成しておらず、終盤の仕上げや、水中に沈める実験、インストールのサポートをしました。他の再制作チームのメンバーは当時の制作には関わっていません。

――國府さんは、白石さんなどにサポートを受けつつも、基本的には個人で制作を行ったということですよね。

(白石)
色々なタイミングで様々な方にサポートしてもらっていたようですが、基本は本人自身が制作するというスタイルをとっていたので、國府以外に全容を把握している人はいません。今回再制作するにあたって、先程挙げたメンバー以外にも、たくさんの方に関わっていただいたのですが、関係者の方々にヒアリングする中で発覚したこともたくさんありました。

※11 「サーボ機構(サーボきこう, 追従機構, servo mechanism)は、物体の位置、方位、姿勢などを制御量として、目標値に追従するように自動で作動する仕組み。」(“サーボ機構”.ウィキペディア日本語版.参照2019-07-02.)

※12 「サーボ機構において位置、速度等を制御する用途に使用するモーターである。」(“サーボモータ”.ウィキペディア日本語版.参照2019-07-02.)

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