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COLUMN

コラム

AUBE 初期作品の再来 / 中嶋昭文さんの情熱と創造の姿勢 前編執筆:坂口卓也(音楽愛好者)

2017 06 09

2. 再来 - AUBE音源再発CD化の意味について

二十世紀から二十一世紀にかけて、’91年からの二十数年間に、膨大な作品発表、および激烈でさえある情熱を帯びたノイズ・ライヴ演奏を敢行していたAUBEこと中嶋昭文さん。彼が54歳の若さで他界してから、早や3年半という月日が経過した。他界翌年の春と秋には、その才能の喪失を惜しみ、併せて彼の人柄を偲ぶ催しが大阪で行われている。その後、あれほど市場に溢れていたAUBEの作品を見ることがめっきり少なくなった。国際的規模で、中嶋さん生前のご活躍を知る心ある方々は何とかならないものかと胸を痛めていたに違いない。

だが、中嶋さんと深い交流を行っておられた東瀬戸悟さんの全面的協力の下、京都を拠点とするレーベルshrine.jpが昨年からAUBE作品の再発に乗り出した。この展開には、中嶋さんもきっと喜んでいるに違いない。何せ、彼がずっと住んでいた京都のレーベルによる再発なのだから。AUBEの作品には、その装丁を含めて、日本的素材と和の感触を活かした創造、言わば「トータルな和の表現可能性」とでも言うべきものを示唆する要素が少なからずあった。それに言及すると中嶋さんが「それは、本来自分の内に日本的要素が息づいているからでしょうね」と自負する様に仰っていたのを、今でも想い出す。

そして、今般の再発は勿論然るべき筋を通した公式なものであり、カセット・テープ、DAT(ディジタル・オーディオ・テープ)、CD-Rなど、様々な形で現存する音源から最良のものを選び、マスター作成に用いたという。この経緯を知った時、ふと想い出したことがある。かつて中嶋さんが、「はっきり言って、音質にはこだわっていない」と断言されていたことだ。佇まいからして非常な綿密さを感じさせる方だったから、この言葉に接してとても意外に思ったことを覚えている。それが、今般の再発においては音質が重視されたのだから面白い。だが、このアプローチは決して彼にとって不本意なものではなかったと考える。今般の再発第一弾であり、中嶋さんの自主レーベルG.R.O.S.S.からカセットとして出版されていたAUBE『Spindrift』(‘92)を再発CDにて拝聴した。すると、中嶋さんがご自身の演奏について語っておられた或ることが、実に良く判るのだ。

その言葉とは、「音響操作の術を尽くし、自分の感覚を制御しても、それは常に押さえ切れない混乱となって行く」というものである。ご自身のライヴ演奏に関して中嶋さんが述べておられたことだが、ライヴだけには止まらずこの提唱は自宅スタジオでの録音に際しても当てはまるだろう。自らが綿密に設計図を描き完成させた音であるのに、一旦形を成すや、思いもよらぬ力で創造主に挑みかかって来る、そんな気持ちが含まれている言葉だと想う。CD化再発に際し最良のソースを用いたディジタル化を行うことで、この「制御し切れず、混乱となって行く」演奏部分をより明瞭に特定することが出来る形へと音は進化を遂げたと言って良いだろう。

綿密に制御されているだろう規則を維持する演奏部分が在り、その一方で制御と反乱(氾濫)の鬩ぎ合いが露呈される「混乱」の部分が存在するが、「最もけたたましい騒音」とされるハーシュ・ノイズさえ凌ぐ迄のダイナミックな蠢きを後者は見せる。音の精度をこそ追求した結果、これら二つのエナジー体がそれこそ互いを映し合う鏡同士の様に対峙している情景が、脳の内に在るスクリーンに明確な像として投影されるのだ。’92年の作品だというのに、再来した『Spindrift』を聴いていると、情念の奔流が秩序と闘争しながら協和して行き有機的ハーモニーを創生する現場に直面し、改めて興奮を覚えてしまった。音質にこだわったshrine.jpの再発は正解だった、AUBEの正しい再評価を導くための最良の選択だったことを確信することが出来ると思うのだ。

この、東瀬戸悟さんとshrine.jpの協働作業として昨年から始まったプロジェクトは、’90年代の前半にG.R.O.S.S.から出版されていたAUBEによる初期カセット音源全作品の再発CD化を目的としている。記事の末部に纏めた様に、昨年11月から今年の5月まで月刊ペースで出版され、7作目において完結した。まさしく、AUBE創生期当時をドキュメントするアーカイヴとも言える布陣である。初期衝動が一切損なわれること無く、混乱さえも協和に参与させてしまう独特のハーモニー構築を誇る中嶋さんならではの世界。当時既にそれが成立していたことを、はっきりと確認することが出来る資料としても実に貴重なCD群である。このチャンスに是非ご体験を頂きたく、ここにお薦めする次第だ。
(協力:東瀬戸悟、shrine.jp http://www.shrine.jp/

  1. ’16年11月17日 - 『Spindrift』 ’92年初出 / 水音源
  2. ’16年12月15日 - 『Drip』 ’92年初出 / 水音源
  3. ’17年1月15日 - 『Luminous』 ’93年初出 / 蛍光灯音源
  4. ’17年2月9日 - 『Flash-Point』 ’93年初出 / 蛍光灯音源
  5. ’16年3月16日 - 『Submerged Tension Remix』 ’93年初出 / 水音源
  6. ’17年4月16日 - 『Frequency For Collapse』 ’94年初出 / 廃ビルでの環境音源
  7. ’17年5月21日 - 『E-Power』 ’94 年初出 / 1 Voltage Controlled Oscillator(発信機)使用

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