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COLUMN

コラム

連載「都市空間と自律的文化へのアプローチ
――マンチェスター・ジン・シーン・レポート」(全4回)
第4回:ソーシャル・スペース〈パルチザン〉から見るジンとスペースの潜在力村上 潔(女性史研究者)

2018 04 19

ここで〈パルチザン〉のアクセシビリティ(利用のしやすさ)と、それに関する取り組みについて触れておきたい。〈パルチザン〉は、公式サイト内に設けた「アクセシビリティ」ページの冒頭で、「コミュニティに対してインクルーシヴ(包摂的)でアクセシブルな場であることを目指す」と宣言している(※8)。建物の構造的な面では、現時点で、車いす利用者はスペースにアクセスできない。できる限り早くアクセス可能な環境を作れるように尽力を続けている状況だ。その環境が整う前にスペースをオープンさせた理由は、車いす用のスロープやリフトの設置に必要な資金調達を始めるため、またこうした変更の建築許可が下りるのを待つためだったと説明されている(※9)。現実には様々な(制度的・経済的)障壁があり、この問題を一気に解決することは難しいだろうが、アクセシビリティに関する長期的・継続的な構想をもち、課題解決に向けたプランを進行させている点は注目すべきだろう。

車いす以外のアクセシビリティに関しては、(1)トイレはすべてジェンダー・ニュートラル・トイレとなっていること、(2)イベントの入場料はスライディング・スケール制(※10)になっていること、が注目される(※11)。また、2018年1月21日に開かれた《Partisan Accessibility and Accountability working group meeting》では、主に「セーファー・スペース・ポリシー[Safer Space Policy]」(※12)に関する検討がなされたようだ(※13)。なお、「セーファー・スペース」に関する取り組みはアナキズムの運動から一般化していった側面があるが、2017年12月2日に、《マンチェスター&サルフォード・アナキスト・ブックフェア 2017[Manchester & Salford Anarchist Bookfair 2017]》が〈パルチザン〉で開催されている【画像9・10】。2018年は12月1日に、同じく〈パルチザン〉で開催される予定だ(※14)。

このように、できる限り多様な人々が自由に、安全に、障害なく集えるスペースを構築するため、〈パルチザン〉のメンバーたちは様々な知恵と方法論を駆使してたゆまぬ努力を続けている。

※8)以下のページを参照(http://partisancollective.net/accessibility/)。

※9)以下のイベント・ページ(https://www.facebook.com/events/745549268979333/)の記載より。

※10)各自が自らの収入に応じて支払う料金を選択できる料金体系。低収入の人を排除しないシステムとして、各種オルタナティヴ・スペースで採用されている。

※11)以下のページを参照(http://partisancollective.net/accessibility/)。

※12)差別・ハラスメント・暴行といった脅威のない、支援的な環境を構築するために共有される方針。海外の一定規模以上のジン/DIYに関するイベントではほぼ必須のものとして作成・掲示される。

※13)以下のイベント・ページを参照(https://www.facebook.com/events/1857168211240305/)。

※14)以下のサイト(https://bookfair.org.uk/)を参照。

画像9

【画像9】《マンチェスター&サルフォード・アナキスト・ブックフェア 2017》フライヤー表

画像10

【画像10】《マンチェスター&サルフォード・アナキスト・ブックフェア 2017》フライヤー裏


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