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COLUMN

コラム

連載「都市空間と自律的文化へのアプローチ
――マンチェスター・ジン・シーン・レポート」(全4回)
第4回:ソーシャル・スペース〈パルチザン〉から見るジンとスペースの潜在力村上 潔(女性史研究者)

2018 04 19

最後に言及しておきたいのは、今年の《ノースウェスト・ジンフェスト[Northwest Zinefest]》(本連載第3回注6参照)の取り組みに関することだ。今年の同フェストは〈パルチザン〉を会場として開催されるが、それに先立ってある試みが実施された。それは、POC(People of Color)/クィア/ノンバイナリー/トランス/障害者のジンスタたちにテーブル(ブース)確保の資金を提供する「ペイ・イット・フォワード[Pay It Forward]」の試みだ(詳しくは村上〔2018a〕を参照してほしい)。これは、ジンに関する活動空間を、より公正な/アクセシブルな/包括性の高い場として、自律的に/共助のもとに構築していこうとする意志が実践へと移された成果で、画期的な取り組みとして評価できる。ジンは、社会正義の理念/理想に基づき社会変革を追求する実践でもある(Licona 2012: 133)が、ここではジンにまつわる場=空間に対してその追求がなされているのだ。このことは、先に見た〈パルチザン〉のアクセシビリティに関する取り組みとあわせて認識しておきたい。ジンとスペースは、連動して状況を変革していく潜在力を備えている。その力を引き出し、発揮させるのは、その両方に関わる活動をしている人たちの意識と行動力だ。

本連載ではマンチェスターという都市におけるジン・シーンの様相を確認し、そのなかにある可能性・潜在力について論じてきたが、その可能性・潜在力は決して限定的な、特殊なものではなく、普遍性をもつものであると筆者は信じる。私たちジンスタの意識と理解と志と行動力によって、またそれを後押しするコミュニティの力によって、日本のどこであっても、自律的な創造空間は構築できると信じる。時間はかかるかもしれないが、それが実現した報告を、いつかマンチェスターのジンスタたちに届けたい。そう考えている。


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