AMeeT
COLUMN

コラム

フリーペーパー『音読』対談 「私たちがフリーペーパーを作るわけ」 前半対談/編集:田中郁后(音読 編集長) × 土門蘭(音読 副編集長)

2013 11 14

3. 『音読』が終わる時

(田中)
京都の町でしか、『音読』って絶対作れへんかったと思うねん。京都に住んでいるという意味は大きくて、他の地域やとちょっと違うものになってたと思う。なぜならそれは、京都っていう町に深みがあるから。もし、どっちかが京都を離れないといけなくなったら『音読』って終わると思う?

(土門)
私、それずっと考えてんだよね!

(田中)
あ、そうなん?

(土門)
夫の仕事の都合で大阪に行くかもしれないっていうのがずっとあるから。大阪に住んだ時に『音読』ってどうなるんだろうって思ったんだよね。京都以外の人が書く京都って、ちょっと憧れが入ってしまったりフィルターがかかってしまう気がしてて、そうなった時に『音読』は続けられないかもな、とは思ってる。

(田中)
確かに「観光雑誌」っぽくなっちゃうねんな。

(土門)
京都礼賛!みたいな感じになるのが嫌で。

(田中)
そうかもな。その時が『音読』が終わる時か!(笑)

(土門)
やってみないとわかんないけどね。

(田中)
今スタッフも増えてるしなあ。無責任にやめるというのも……。ある日突然「やめます」っていうのも言えない感じがあったりはする。身軽にやってきたのが6号くらいまで、それ以降はちょっと責任とか出てきたよね。

(土門)
身軽とは言えど、続けるのってやっぱりすごい大変じゃない?やめるっていう話って今まで一回も出たことないよね?考えたことある?

(田中)
ない。一回もない。私はずっと言ってるけど、ほんとに『音読』が趣味やから。唯一の趣味と言ってもいい。全然やめるっていう選択肢はないなあ。ただでもそれはどもんあってのものやから、どもんがやめるってなったらやめるしかないかとは思ってるかな。

(土門)
何かすごいよね。こんなに続くって。休みたいと思ったことはあるけどやめたいと思ったことは私もないな。まあ休みたい時は休んでるけど(笑)。でもまたちゃんと出すし、締め切りもちゃんと守るし。今まで何回かフリーペーパー出してきたけど、大体創刊号で終わるっていう……(笑)

(田中)
ああ、1号だけ出して終わっちゃうんだよね。それはよく聞く話。

(土門)
だからこういう風に続けられるもんなんだっていうのは自分でもすごい自信にはなった。 フリーペーパーってジャンクなものがすごく多いじゃない?フリーペーパーだから好きにやろうぜ、人が何を言っても関係ない、自分がおもしろいと思うものを全部紙に吐き出してやる、みたいなものって奇跡的におもしろいものもあるんだけど、得てしておもしろくなかったり、読んだらすぐポイって捨てちゃうものが多いように思う。実際私もそういうものを作ってきたんだけど、やっぱりそれは違うなと思って。だからおもしろいかおもしろくないかよりも、要るか要らないかの方に考え方がシフトしていった。趣味と言えど、自分のやってることがどんな風に人の役に立つのかっていうのは気にするようになったなあ。

(田中)
よくSCRAPで加藤さん(※1)が「毎号毎号、おれはゴミを作ってると思ってる」って言ってはったやん。それは全然思わへん。毎号町中に紙くずになるものを撒いてるっていう感覚は全然なくて、一生大事にしてもらえるものを配ってるっていう感覚をすごく持ってる。「これ20年後30年後、読み返しても絶対おもしろいやつですよ」って思いながら撒いてる。

(土門)
京都府立総合資料館(※2)に寄贈を求められた時は、ほんとに「ああ、やったな」って思ったもん。私さ、ずっと大事にされるような本が作りたかったんだよ、雑誌ではなくて。でもお金がなくて出せないからフリーペーパーを出してるんだよね。フリーだからゴミでもいいわけでは絶対になくて。だから寄贈を求められた時は報われた感じはすごくした。

(田中)
あそこに『音読』が50年間保管されてるっていうのはうれしいよね。

※1)SCRAP 加藤さん…「SCRAP」は京都を中心に配布されていたフリーペーパー。現在は不定期発行になり2012年2月以降発行されていない。その編集長を務めていたのが加藤隆生氏。田中郁后と土門蘭はSCRAPのボランティアスタッフで知り合った。

※2)京都府立総合資料館…京都北山にある京都の歴史、文化、産業、生活等に関する資料を所蔵・閲覧できるところ。ここに所蔵されると最低50年間は資料として保管される。『音読』は利用者からの要望により所蔵されることになった。


PAGE TOP