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京都の女性運動と「文化」 第3回(全3回)――1990年代、リブとして生き続けることの模索村上 潔(女性史研究者)

2014 09 26

この連載も最終回となった。最後に、1990年代の話で締め括りたい。〈シャンバラ〉から〈とおからじ舎〉へ、ときて、さてその後、京都で「リブ」だった人はどうしたのかという話だ(※1)。

前回記したように、〈とおからじ舎〉は、1987年の春頃、スペースを閉め、その活動を終えた。その後、〈とおからじ舎〉のメンバー、滝川マリと冬木花衣、そして〈とおからじ舎〉には参加していなかったが〈シャンバラ〉に深く関わっていた高野未生の3人は、新たな試みを始める。それは、少し可愛らしいミニコミ誌の発行だった。

そのミニコミ誌は、『いま、何時?』という。一風変わったタイトルだ。タイトルが意味することについては追って考えるとして、まずは、なぜ彼女らがこの活動を始めたのかを確認しておこう。

冬木は、「〈とおからじ舎〉がうまくいかなかったことを総括していったのが、『いま、何時?』につながるきっかけ」(※2)と語る。〈とおからじ舎〉を閉じたあと、毎週月曜日の夜、滝川の家に先述の3人が集まり、「総括」の話し合いを続けた。滝川は、その内容を、「グループの軋轢みたいな問題、それは必ず出てくる。〈とおからじ舎〉のことも話しながらもっと全体的に、組織の問題点とはなんだろう、ってことをずーっと話してた」(滝川・冬木・ぶんた 2007: 42)と述懐する。

「組織の問題点」は、〈シャンバラ〉を閉じる際に露わになった課題だったが、〈とおからじ舎〉もまた、同じ課題を内包し続けていたということになる。女たちの運動が続く限り各所で形成され、変化や消滅を余儀なくされていく、運動の主体となる組織。その運営のありかたを 、滝川・冬木らはずっと真摯に粘り強く考え続けていたことがわかる。その思考の一面として、滝川は、東京の〈'82優生保護法改悪阻止連絡会〉(※3)の「「優生保護法改悪反対」っていう、一つのものを軸にして、それで集まると。それでひとりひとりの思想性を問うわけじゃない、そういうつながりかたをするほうがベターだと」いう方向性を、「それはそれである程度すっきりしていて、運動体として持続しかつ広がりを持つような感じで成功しているなと思う」(滝川・冬木・ぶんた 2007: 42)と評価していた。しかし、滝川らが自らの活動における方向性の「結論」として出した『いま、何時?』は、それとは異なるものだった。

村上:[...]でも〈とおからじ舎〉以降、そうした〔「優生保護法改悪反対」のような〕大きなシングル・イシューはなくなるわけですよね。そうした中でみんなの結束なりモチベーションのようなものをどう持続させていくか......、というようなことは『いま、何時?』の前に話し合ったんですか?
マリ:いや、組織を持続するためじゃなくて......。
花衣:もうその時点では、運動体ではないから。
村上:〈とおからじ舎〉は運動という意識でやってたわけですよね?
花衣:そうそう。でも『いま、何時?』は総括を含んだ思想獲得......。
マリ:そう、次に紡ぐ思想は何なのか、という。
花衣:時代をどう受け取っているのかという表明と、あと私だったらフェミニズム批判的なことがテーマだったりもしたけど。(滝川・冬木・ぶんた 2007: 42)

『いま、何時?』を始めるにあたり、彼女らは自分たちを「運動体ではない」と規定していた。そうなると、『いま、何時?』を、単純にそれまでの「リブ(としての)運動」の一環として位置づけることは難しくなる。もちろん、「リブ」・「運動」というテーマが彼女らの中心課題であることは変わらないのだが、それを自らの実践で体現する(運動のただなかに身を置く)活動ではなく、運動の総括を通した「思想獲得」という、一歩引いた位置からの静的なアプローチを試みた活動が、『いま、何時?』だったということになる。

※1)いうまでもなく、京都のリブが〈シャンバラ〉と〈とおからじ舎〉に収斂(しゅうれん)されるわけではない。その「全貌」は残念ながらこの連載では展開できない。

※2)滝川マリ・冬木花衣・ぶんた(聞き手=村上潔)「(インタビュー)80年代京都におけるリブ運動の模索――〈とおからじ舎〉へ、そして、それから。」(『PACE』Vol.3: 36-49、2007年): 41

※3)略称〈阻止連〉。1996年に〈SOSHIREN 女(わたし)のからだから〉に改称。


村上 潔 MURAKAMI Kiyoshi

村上 潔 MURAKAMI Kiyoshi

1976年、横浜市生まれ。
2002年から2005年まで、『remix』(アウトバーン)に、映画・音楽に関する記事を寄稿。その後、『音の力 〈ストリート〉占拠編』(インパクト出版会)、『VOL』(以文社)などに寄稿。
2009年、立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程修了。現在、立命館大学衣笠総合研究機構准教授(特別招聘研究教員)、ならびに神戸市外国語大学非常勤講師。専門は、現代女性思想=運動史。
著書に『主婦と労働のもつれ――その争点と運動』(洛北出版、2012年)など。現在の主たる研究テーマは、「〈新日窒労組主婦の会〉の歩みの記録とその女性運動史的分析」。定期的に水俣に通って調査を進めている。

村上 潔 紹介ページ
(「生存学」創成拠点 arsvi.com WEBサイト内)
http://www.arsvi.com/w/mk02.htm

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京都の女性運動と「文化」 第1回(全3回):序論
――女のスペース〈シャンバラ〉の活動から
http://www.ameet.jp/column/
column_20140505/

AMeeT Column
京都の女性運動と「文化」 第2回(全3回)
――〈シャンバラ〉以後、1980年代のリブ運動
http://www.ameet.jp/column/
column_20140708/


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