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COLUMN

コラム

世界が活字に触れるとき見増勇介(アートディレクター/デザイナー)

2016 03 01

日常に寄り添う活字

朝起きて時計に目をやるとき。スマートフォンをながめるとき。電車の時刻を確認するとき。ショッピングを楽しむとき。これら全ての場面で、あなたは活字と出会う。その活字には制作者がいる。そして多くの場合、レイアウトには認識のための配慮がある。活字が視覚によるコミュニケーションの役割を担う以上、あなたはそれに寄り添うだろう。

僕たちデザイナーは、活字の向こう側に存在している。読者にとって最適な方法を考え、意識し、形にする。活字における最適な方法とは、適当な書体を選び、それを配置し、調整することである。デザイナーの仕事はその責任の上に成り立つ。このシンプルな手段はさまざまな分野や媒体、目的によって無限の可能性を持っている。その中から唯一の選択が、読者へと届けられる。

活字の向こうにある世界

エッケ・ホモ展 カタログデザイン(表紙)

エッケ・ホモ展 カタログデザイン(表紙)

エッケ・ホモ展 カタログデザイン(部分)

エッケ・ホモ展 カタログデザイン(部分)

では適当な書体を選ぶとはどういうことか。ひとつの例を挙げて、この話を進めたい。図は、僕がデザインを担当した企画展『エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ』のカタログの表紙である。

エッケ・ホモ(ECCE HOMO)は新約聖書の一場面で、愚かな民衆に委ねられ、磔刑に処せられることになったイエス・キリストを指して発せられた「この人を見よ」という意味のラテン語だ。この言葉は人間のあるべき姿を提示する表象として、美術史のなかでたびたび取り上げられてきた。本展では第二次世界大戦以後の人間描写の展開を振り返り、死生観や悪、皮膚/内蔵、不在、霊など、多角的な視点で「人間とはなにか」という普遍的なテーマに挑んでいる。今回チラシ、カタログなどの広報物デザインを担当したが、それらをデザインした過程での、書体選択における思考を具体的にしたい。


見増勇介 MIMASU Yusuke
(アートディレクター/デザイナー)

見増勇介 MIMASU Yusuke(アートディレクター/デザイナー)

1980年大分県生まれ。アートディレクター/デザイナー。『見増勇介デザイン』主宰。美術館やアートセンター、アーティストなどをクライアントとしたデザインを中心に活動。主な仕事に『エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ』(国立国際美術館|大阪|2016)『18th DOMANI・明日展』(国立新美術館|東京|2015)『交, 향 Graphic Symphonia』(国立現代美術館|ソウル、韓国|2015)『これからの写真』(愛知県美術館|愛知|2014)、『KOHEI NAWA|SANDWICH』(2014|学芸出版社)など。

また言語や文字、書法、印刷、読書などに通じる一定の様式を捉えなおすグループ『intext』としても活動。主な展覧会に『VOLTA 11』(MARKTHALLE|バーゼル、スイス|2015)『letters in transition』(STANDING PINE|愛知|2014)、『phono/graph』(ギンザ・グラフィック・ギャラリー|東京|2014)など。

intext 紹介ページ(STANDING PINE)
http://standingpine.jp/artists/intext/

phono/graph
http://www.phonograph.jp/


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