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COLUMN

コラム

黎明の軌跡
AUBE/中嶋昭文の作品について執筆・画像提供:東瀬戸悟(フォーエヴァー・レコーズ勤務)

2017 03 23

80年代初頭、大学時代にシンセサイザーを購入し、学友との展覧会の音響制作などを趣味の範囲内で小規模に行なっていたそうだが、1990年 、美術作家の有地左右一+笹岡敬による水を使ったインスタレーション『Water 1990』へ参加したことを契機に、翌1991年からAUBEとして外へ向けた音楽活動を開始。マゾンナを送り出した京都「ヴァニラ・レコーズ」でデビュー・カセット『Hydrophobia』を発表。ノイズ・アーティストとしては、かなり遅咲きで31歳の時だった。

ライブ風景(活動初期)。

ライブ風景(活動初期)。

1992年に自身のレーベルであり、デザイン・プロジェクト「G.R.O.S.S.」を設立。既に日本ではメルツバウ、非常階段、ハナタラシ、ソルマニア、NULLなど、後年「ジャパノイズ」と呼ばれるアーティスト達が活動しており、中嶋さんはAUBEがノイズ・シーンの中で遅れて来た存在であることを自覚していた。独自性を模索するうちに、本業であるプロダクト/インダストリアル・デザイナーとしての技術を最大限に生かしたハンドメイド・パッケージのカセット・テープをリリースすることで、他とは一線を画した大きな特徴を打ち出してゆく。レーザープリンター印刷と和紙や特殊紙、フィルム、組紐、ラバー、金網など、市販の材料を巧みに用いて、手作業とは信じ難い緻密な工芸品のようなテープを50~100本限定で次々に発表。その仕事ぶりは驚くほど丁寧でスピーディーだった。フェティッシュなコレクター心を刺激する作品群は、まず、そのパッケージで注目を集めていった。

AUBEのサウンド・メイキングは、常に一つの作品に対して、水、蛍光灯、金属、ガラス、心拍、脳波といった、一つの素材だけを使い、それをサンプリング・ソースにアナログ/デジタルのエフェクト加工を施しながら、ミニマムな音をマキシマムなノイズ音響へと変成する作法で組み立てられる。どれだけ轟音になろうとも、逸脱することなくストイックな気品すら感じさせるサウンドと端正なデザイン・ワークがノイズ・ミニマリストたるAUBE/G.R.O.S.S.の真髄だ。因みに「Gross」は英語で「粗野」「下品」という意味があるが、言うまでもなく逆説的命名で、隅々まで繊細な気配りが施されている。


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