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ARCHIVES

アーカイヴと再制作

みずのき美術館の学習会 ~福祉施設の作品をアーカイブするには~トーク 第2部:価値と活用という視点で見るアーカイブスピーカー:佐藤 守弘(視覚文化研究者)、榊原 充大(建築家/リサーチャー)

2017 05 12

2017年1月29日(日)にみずのき美術館にて開催されたレクチャー&トークイベント「みずのき美術館の学習会 ~福祉施設の作品をアーカイブするには~」。本記事では同イベントのトーク第2部の内容を掲載する。第2部のスピーカーは視覚文化研究者の佐藤守弘氏(京都精華大学教授)と、本記事の編集も担当している建築家/リサーチャーの榊原充大。アーカイブとは何か、という基礎的な概説や活用という観点からアーカイブを考察するなど、福祉施設の作品、ひいてはアートという一つの評価基準にとどまらない多様な角度から議論された。

編集:榊原 充大(建築家/リサーチャー)

編集協力:中本 真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

トークイベント撮影:表 恒匡

助成:一般財団法人 ニッシャ印刷文化振興財団、日本財団(五十音順)

協力:みずのき美術館

トーク 第2部 会場風景

トーク 第2部 会場風景

2017年1月29日(日)にみずのき美術館にて開催された「みずのき美術館の学習会 ~福祉施設の作品をアーカイブするには~」。
同イベントは、アール・ブリュット(※1)美術館初となる本格的な作品保管環境の整備とデジタル・アーカイブ(※2)事業に取り組む(※3)みずのき美術館が、主にアール・ブリュットや、障害がある人によるアートに携わる福祉施設関係者に向けて企画したレクチャー&トークイベントだ。デジタル・アーカイブ事業の過程を共有することにより、日頃から同じ課題を抱えている方々に役立ててもらうこと、アーカイブの定義や意義を丁寧に伝えることで、アーカイブについて理解を深めることなどを目的に企画された。

午前の部ではレクチャー、午後の部ではトークイベントが開催されたが、本記事では『AMeeT』にて2017年3月に公開したトーク第1部の記事(※4)に続き、第2部の内容を公開する。第2部のスピーカーは、視覚文化研究者の佐藤守弘氏(京都精華大学教授)と、本記事の編集も担当している建築家/リサーチャーの榊原充大。
本イベントには「福祉施設の作品をアーカイブするには」という副題がつけられているが、第2部のトークは「福祉施設の作品」と「アーカイブする」という2つの課題について、再考をうながすものとなっている。

佐藤氏による発表では、アーカイブとは何かという基礎的な概説や、ニューヨーク近代美術館(MoMA)を例にしたミュージアムにおけるアーカイブズのあり方が、これまでアーカイブに触れる機会のなかった方にも伝わるよう、詳細に語られた。発表の後半では、アーカイブの可能性や課題についても言及されている。
また、榊原の発表では、既存の議論で中心となっているアーカイブの「意義」や「つくり方」よりも、むしろそれを活用する方法やその主体こそが重要であるという理念から、「活用」をテーマに、広い視野でデジタル・アーカイブの事例を紹介した。アーカイブを一つの考え方と捉え、その考え方を広げていくことが重要であるという提言も行なっている。

佐藤・榊原・奥山の間で議論が交わされ、第1部の登壇者である中原浩大氏と石原友明氏による、価値付けに関する考えも述べられたクロストークも掲載。そこでは「アール・ブリュット」など、主にアートの価値基準によって評価されてきたみずのきの作品=福祉施設の作品を「アート」という一意的な視点からのみ見てしまうことへの疑義が呈されている。

※1)第2次世界大戦後、価値観の再編成が行われる中、フランスの芸術家ジャン・デュビュッフェによりつくられた言葉。日本語に訳される場合には、「生(き)の美術」「生(なま)の美術」とされることが多い。伝統的な美術教育を受けていない作り手によって制作されるそれらの作品は、美術史的な枠組みでは解釈し尽くすことができない。イギリスの美術史家ロジャー・カーディナルは「アウトサイダー・アート (outsider art)」と訳している。日本において、アール・ブリュットという言葉はしばしば「知的障害者が作った芸術」と誤解されることがある。

※2)デジタルアーカイブ(英語:digital archive)とは、博物館・美術館・公文書館や図書館の収蔵品を始め有形・無形の文化資源(文化資材・文化的財)等をデジタル化して記録保存を行うこと。(“デジタルアーカイブ”.ウィキペディア日本語版.参照2017-02-26.)

※3)みずのきの作品保管環境の整備とデジタル・アーカイブ事業の取り組みについては以下記事参照。
奥山理子[2016].“みずのき美術館 保存と記録の取り組み ―アール・ブリュット美術館初となる本格的な作品保管環境の整備とデジタル・アーカイブ事業”.AMeeT.参照2017-05-05.

※4)中本真生 編集[2017].“みずのき美術館の学習会 ~福祉施設の作品をアーカイブするには~ トーク 第1部:デジタル・アーカイブのための画用紙作品撮影”.AMeeT.参照2017-05-06.

イベント情報

みずのき美術館の学習会 ~福祉施設の作品をアーカイブするには~

開催日: 2017年1月29日(日)
会 場: みずのき美術館
タイム
スケジュール:

午前の部
10:00-12:00 須之内元洋氏によるレクチャー

午後の部
13:30-13:45 みずのきアーカイブの説明
13:45-14:45 第1部/中原浩大氏、石原友明氏
14:45-15:00 休憩
15:00-16:15 第2部/佐藤守弘氏、榊原充大氏

料 金: 1,000円(入館料含む)
主 催: みずのき美術館
助 成: 日本財団
WEBサイト: http://www.mizunoki-museum.org/digitalarchive/

みずのき美術館
MIZUNOKI MUSEUM of ART

みずのき美術館<br />MIZUNOKI MUSEUM of ART

障害者支援施設みずのきで、創立5年目の1964年に始まったみずのき絵画教室の作品を所蔵作品とし、2012年、京都府亀岡市に開館。
絵画教室で生まれた作品の保存・研究、アール・ブリュットの考察、地域社会に開かれたプロジェクト型の企画の3つを柱に、数多くの展覧会や企画を展開している。

みずのき美術館WEBサイト
http://www.mizunoki-museum.org/


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