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アーカイヴと再制作

シンポジウム報告
「美術資料情報における大規模化と高度化」文:深瀬宰(日本写真印刷株式会社勤務/アート・ドキュメンテーション学会会員)

2015 06 27

国立美術館トップが語る「野望」は、その熱い語り口とは裏腹に、クールな戦略と強力なリーダーシップがその実現を予感させ、詰めかけた美術情報関係者の意識を覚醒させた。社会教育機関であるとともに、学術的専門研究の場である美術館の情報戦略はいかにあるべきか。国内最前線の美術館と研究所、ヨーロッパの先進事例の報告3件と合わせてレポートしたい。

はじめに

6月6日(土)、7日(日)の2日間にわたりアート・ドキュメンテーション学会(Link1)の年次大会が開催された。シンポジウムでは「美術資料情報における大規模化と高度化 ── グローバルなデジタル化戦略と学術的専門研究の接点を問う」という刺激的なタイトルに劣らず、熱い発表がなされた。
本サイトでは2009年の創立20周年に際して東京国立博物館で行われたフォーラムを機に、同学会に関する複数の記事掲載がされている。當山日出夫氏(Link2)、山村真紀氏(Link3, Link4)のエントリーを参照されたい。

同学会がシンポジウムで掲げたテーマには、本来の学問領域である「美術」「資料」「情報」などの語句と並んで、「グローバル」「戦略」というビジネスの世界にこそ似つかわしいような用語があり、目を惹く。大会の告知文にも
「本大会の会場館である国立西洋美術館の小企画展『デジタル技術とミュージアム』(2001年開催)や、文化庁の『文化遺産オンライン』(Link5)など、過去数年の間さまざまな成果と課題が蓄積されてきましたが、何れも十分活用されないまま同趣意の試みが繰り返されているかのようです」
という厳しい現状認識が示されている。

また、前田富士男会長(中部大学)は挨拶において、巷間話題になっているビッグ・データやオープン・データという概念に言及した。もはやこれらは美術の世界と無関係ではなく、上手にリンクすることによってアート・ドキュメンテーションの役割が拡大する契機となろうと述べて、当日の議論への期待が表明された。
「マルチメディア」がもてはやされた時代から、各地方に協議会が設けられた一時の「デジタル・アーカイブ」の流行を経て、今日まで行われてきた様々な試みは、はたして学術的専門研究のニーズに応えられているのか。そしてその手法は世界の技術的動向に遅れをとっていることはないのか。あらかじめ表明された鋭い問いかけこそが、当日120人を超える聴衆を集めた理由であろう。


深瀬 宰 FUKASE Osamu

深瀬 宰 FUKASE Osamu

日本写真印刷株式会社勤務/アート・ドキュメンテーション学会会員。
美術図書の印刷営業をはじめ、美術館サイトの受託や収蔵作品管理システムの販売など、アートとミュージアムに関わる事業を経験。

アート・ドキュメンテーション学会
Japan Art Documentation Society
http://www.jads.org/

日本写真印刷株式会社
http://www.nissha.com/

写真提供:アート・ドキュメンテーション学会(撮影:阿児雄之)

写真提供:アート・ドキュメンテーション学会
(撮影:阿児雄之)


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