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アーカイヴと再制作

タイムベースド・メディア・インスタレーション『HUMAN EMOTIONS』の再制作・修復・保存に関する資料と議論 (全4回)―どのような形で作品を残すべきか第4回:再制作・修復・保存に関する15の議論 後半

2018 06 12

17-2. ロストすると作品をリタイアせざるをえない唯一の要素“映像データ”

資料A-4.仕様書:構成要素(非物質) 《データ》 -フル・ヴァージョン時(作家制作) ※16

  • 撮影時に子どもたちを追った映像のデータ:HD画質のMOVデータ6本(音声は内一本にのみ挿入)
    *撮影時に子どもたちを追った映像は、展示内に7チャンネルある。しかし、そのうちMonitor 1とProjector 2(それぞれどの機材かはオリジナル・ヴァージョンの図面 ※17 参照)では、全く同じ映像データを複製して再生しているので、データ数は6本となっている。
  • 時計くんを撮影した映像のデータ:HD画質のMOVデータ1本
  • 照明コントロールデータ:VEZÉRにて動作するシーケンス
    *ARTZONEでの展示時はMAXを使用。MAXデータはあり。ラフォーレ原宿展にて山城が制作したがデータは無い。

――『HUMAN EMOTIONS』で採用している映像同期システム“TOKISATO PLAYER” ※18 の操作には、ある程度の専門知識とマニュアルが必要になると思います。Nam June Paik Art Centerでの展示 ※19 の設営に、山城さんは立ち会っていませんが、映像同期システムについてはどのようにやりとりしたのでしょうか。

(山城)
「同期さえできれば、どういうシステムでもいいです」と伝えました。

――では“TOKISATO PLAYER”は使っていないのでしょうか。

(山城)
使っていないです。

――映像・照明の同期システム及びデータに関しては、同期できれば置き換えは可能だということですね。

(山城)
その場所、その時代の同期システムを使用してもらっていいと思います。

――先ほど、「構成要素(物質)の破損・ロストをどこまで認めるか」 ※20 について話をしましたが、構成要素(非物質)についても破損・ロストについて確認したいと思います。これまでの話を整理すると、山城さんは「すべての構成要素(物質)は修復目的でのみ置き換え可能」「“モニター”、“プロジェクター”、“スピーカー”などの機材、映像同期システム及びデータについても置き換え可能」と定義しました。では“映像データ”がロストした場合に作品は成立するでしょうか。

(山城)
構成要素のロストという観点で言えば、“撮影時に子どもたちを追った映像のデータ”のロストが最も再制作不可能な状況ですね。例えば“切り株”は構成要素(物質)の中で、置き換えることが最も難しいけれど、あくまで作品の構成要素であって、作品の柱ではない。撮影時に子どもたちを追った映像はないと成立しない。

正面のモニターで再生されている映像(写真はARTZONEでの展示時)
正面のモニターで再生されている映像(写真はARTZONEでの展示時)。
オリジナル・ヴァージョン制作時、6台のカメラで子どもたちを撮影した。
その映像を編集せず、そのままインスタレーション内にて、6台の“モニター”、1台の“プロジェクター”にて上映している。
撮影:表恒匡

――では、全構成要素の中で、ロストすると作品をリタイアせざるを得ない唯一の要素が“撮影時に子どもたちを追った映像のデータ”ということでしょうか。また“撮影時に子どもたちを追った映像のデータ”は6本ありますが、6本の内1本でもロストするとリタイアするということでしょうか。

(山城)
そうです。

※16 仕様書はインタビュー時点のもの。まだ制作中であり、未確定・仮の条件も含む。

※17 図面は4-1. ARTZONEでの展示(オリジナル・ヴァージョン)に掲載。

※18 ラズベリーパイをベースに時里充が開発した映像同期システム。

※19 Nam June Paik Art Centerでの展示について、詳細は4-3. Nam June Paik Art Centerでの展示に記載、設営に関するエピソードは15. “本人不在による再制作の事例”に関する議論を参照。

※20 詳細は16-3. 構成要素の破損・ロストをどこまで認めるかを参照。

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