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アーカイヴと再制作

悪魔のしるし『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビュー 前半―作品の著作権を放棄し、「誰でも勝手にやっていいもの」にしていく

2018 08 29

『搬入プロジェクト』は、ある空間に入らなさそうでギリギリ入る巨大な物体を設計・製作し、それを搬入するパフォーマンス。同作品は著作権が放棄されるなど、発案者である悪魔のしるしによってオープン化(作品を開いていくための活動)が推進されている。AMeeTでは『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビューを、前後半に分けて掲載する。記事前半では、主に悪魔のしるしのメンバー3人と、オープン化について法的なアドバイスを行った永井幸輔弁護士に、作品を開いていくための具体的な手段を丁寧に確認し、さらに「なぜCC0にて著作権を放棄することを選択したのか」などについて伺った。

はじめに

『搬入プロジェクト』

『搬入プロジェクト』は、ある空間に入らなさそうでギリギリ入る巨大な物体を設計・製作し、それを搬入するパフォーマンスである。悪魔のしるしにより着想され、2008年に初演が行われて以来、国内外で評価を受け、8カ国22カ所で公演が行われている(2018年8月現在)。

搬入プロジェクトの紹介映像。
実施する場所や上演環境によって、設計手法や演出が選択される柔軟さも見て取れる。

『搬入プロジェクト』のオープン化

『搬入プロジェクト』はかつてより、悪魔のしるしを主宰する危口統之氏によって「他の誰でもやっていいし、やってほしい」 ※1 と明言されている。つまり、もともと様々な観点においてオープンなプロジェクトではあった ※2 が、危口氏が2017年に逝去したことをきっかけに、同氏の意思を継いだ悪魔のしるしのメンバー3人(石川卓磨氏、金森香氏、宮村ヤスヲ氏)によって、オープン化(作品を開いていくための活動)はさらに具体的に推進されている。危口氏が亡くなった後、オープン化の推進として行われたのは「マニュアルの制作・配布」「CC0によるプロジェクト及びマニュアルの著作権放棄」「初となる第三者主導での『搬入プロジェクト』の実施」であり、今後「マニュアルのさらなる充実」「FAQやWikiなど、インターネット上でのユーザー自身がノウハウを更新していける場作り」が行われる予定だ。

CC0

CC0とは、科学者や教育関係者、アーティスト、その他の著作権保護コンテンツの作者・所有者が、著作権による利益を放棄し、作品を完全にパブリック・ドメインに置くことを可能にするものです。CC0によって、他の人たちは、著作権による制限を受けないで、自由に、作品に機能を追加し、拡張し、再利用することができるようになります。CC ライセンスが、権利所有者に著作権を残しながら、再利用の許可を選択できるものであったのに対して、CC0は別の新たな選択肢を提供します。作品の作者に自動的に付与されてきた著作権やその他の占有権を放棄するという選択肢です。他のCCライセンスと異なり、「いかなる権利も保有しない」という選択肢を与えるものです。

CC0について ― “いかなる権利も保有しない”.クリエイティブ・コモンズ・ジャパン.2018年8月1日参照.)

本記事の概要

AMeeTでは『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビューを、前後半に分けて掲載する。記事前半では「なぜCC0にて著作権を放棄することを選択したのか」「オープン化の目指すところはどこか」「マニュアルの役割」などについて、主に悪魔のしるしのメンバー3人と、オープン化について法的なアドバイスを行ったArts and Law ※3 の永井幸輔弁護士に伺った。3章のマニュアルについての話題のみ、初の第三者主導による『搬入プロジェクト』に深く関わった豊田市美術館の能勢陽子氏、美術家の山城大督氏に一部ご参加いただいた。

9月に公開予定の記事後半では、 主に2018年1月20日(土)に豊田市美術館にて行われた、初の第三者主導での『搬入プロジェクト』 ※4 についてのインタビューを掲載する。

記事前半は、作品を開いていくための具体的な手段を丁寧に確認していくことを軸に構成している。一方で「なぜその手段を選択したか」を掘り下げる過程において、悪魔のしるしのメンバーから「著作物ではないかもしれないものを著作物として扱うことは非常に彼(危口氏)の作品らしく、それ自体が、彼の作家性を表しているようにも感じる」という見解が語られる場面などもあった。このように「どういった作品性・作家性への解釈があってその手段が選択されたのか」を明らかにしていくことも、記事の重要な目的となっている。

目次

  1. なぜオープン化するのか及び実施体制
  2. なぜ著作権を有すると仮定したうえで、CC0にて放棄することを選択したのか

  3. マニュアルの役割と現状

主な参考資料

※1 「『搬入プロジェクト』はもはや自分の作品ですらない。そもそもが単純なルールだけで構成された一種のゲームのようなものである。他の誰でもやっていいし、やってほしい。」
(『CARRY-IN-PROJECT 2008-2013 DOCUMENT: WORDS and IMAGES』.2015年.p.2.)

※2 危口氏の生前も『搬入プロジェクト』の記録集である『CARRY-IN-PROJECT 2008-2013 DOCUMENT: WORDS and IMAGES』の出版などの形で、オープン化は行われてきた。

※3 「2004年に設立された、文化活動を支援するためのNPO(任意団体)。美術、工芸、デザイン、音楽、映像、映画、出版、建築、ファッション、パフォーミングアーツ、マンガなど、あらゆる文化活動に携わる人々を対象に、法律問題等の相談をWEB上で受け付ける無料相談窓口、セミナー、専門記事の公表・出版を中心として、法的なアドバイスを提供しています。弁護士、公認会計士、税理士、行政書士、司法書士など様々な分野の専門家が、プロボノ=ボランティア活動として所属しています。」
トップページ.Arts and Law.2018年8月5日参照.)

※4 『搬入プロジェクト#22 豊田市美術館』 2018年1月20日(土) 豊田市美術館(愛知)/ビルディング・ロマンス-現代譚(ばなし)を紡ぐ-

PROFILE プロフィール

悪魔のしるし | AKUMANOSHIRUSHI

2008年結成。主宰・危口統之の思いついた何かをメンバーたちが方法論も知らず手さぐりで実現していった結果、 演劇・パフォーマンス・建築・美術など多様な要素をもつ異色の集まりとして注目される。団体名は、危口の敬愛する英国のロックバンドBlack Sabbathの楽曲“Symptom of the Universe”に付けられた邦題、「悪魔のしるし」に由来。『禁煙の害について』(2010年)、『悪魔のしるしのグレートハンティング』(2010年/フェスティバル/トーキョー公募プログラム)『桜悪魔の園しるし』(2011年/トーキョーワンダーサイト国内クリエーター制作交流プログラム)など演劇的な要素の強い舞台作品を継続的に発表。祝祭的なパフォーマンス作品『搬入プロジェクト』は初演以来、国内外でも評価を受け、2016年までに8カ国20箇所での公演を重ねる。危口の実父が出演する『わが父、ジャコメッティ』(2014年、2016年)を、海外を含む6都市で上演するなど、今後の活動に期待が寄せられていた。2016年11月、危口が肺腺癌と診断され療養生活をおくる中、新作『蟹と歩く』の企画を立案し、原案を記す。2017年3月17日、倉敷の実家にて主宰・危口統之永逝。2017年3月25日・26日、『蟹と歩く』上演。

悪魔のしるし 公式サイト

危口統之 | KIGUCHI Noriyuki悪魔のしるし主宰・演出家

1975年岡山県生まれ。2008年、「悪魔のしるし」を組織し、『搬入プロジェクト』『わが父、ジャコメッティ』など、国内外で演劇・パフォーマンスを企画上演する。2012‐2013年度セゾン文化財団ジュニアフェロー、2014‐2016年度同財団シニアフェロー。2016年11月、肺腺癌と診断されるも、ブログ「疒日記」で自身の闘病記録を綴り、新作『蟹と歩く』の企画を立案。2017年3月17日、倉敷の実家にて永逝。

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