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アーカイヴと再制作

悪魔のしるし『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビュー 前半―作品の著作権を放棄し、「誰でも勝手にやっていいもの」にしていく

2018 08 29

2. なぜ著作権を有すると仮定したうえで、CC0にて放棄することを選択したのか

2-1. 「誰がやってもいい」という態度を示す

――著作権の侵害を判断するには、類似性や依拠性 ※6 が基準となります。視覚的に類似するかどうか判断する際、絵画や写真であれば判断しやすいと言えます。また歌の歌詞や、セリフなどを有する戯曲であれば、言葉の類似を比較するという明確な手段があります。しかし『搬入プロジェクト』は、毎回物体の構造も実施する場所も変わり、台本が存在するわけでもないので、視覚や言葉において類似しているかどうか判断できる要素がありません。また『搬入プロジェクト』においては、アイデア、ルールが重要だと思いますが、弁護士の木村剛大氏がコラム内で「著作権法の世界では表現を保護し、アイデアは保護しない」 ※7 という見解を示している通り、一般的にアイデア、ルール自体は著作権が保護する対象ではありません。何を放棄したのかを明らかにするため、まず『搬入プロジェクト』が、もともとどのような権利を有していたと認識しているのかを伺えますか。

『搬入プロジェクト#10』記録写真
『搬入プロジェクト#15』記録写真
写真上は『搬入プロジェクト#10』 ※8 の記録写真。
写真下は『搬入プロジェクト#15』 ※9 の記録写真。
毎回物体の構造も素材も変わるので、視覚的に類似するかどうかは、個別の物体などに対してしか判断できない。

(永井)
『搬入プロジェクト』は「搬入であり、身体表現である」という作品です。搬入と身体表現の中間にあるような作品が著作物として認められるかどうか。まず一般的な行為としての搬入、つまり「ある空間に何かを運び入れる」という行為そのものは、著作権では保護されないでしょう。一方で演劇などの舞台芸術の身体表現には著作権は認められ得るというのが基本的な考え方です。しかし『搬入プロジェクト』は、身体表現の中では恐らく著作権が認められにくい。作品の要素において、アイデア、ルールが非常に大きな比重を占めていますし、細かい一つひとつの動作について、何か決めごとがあってその通りに動かしているわけではない。となると『搬入プロジェクト』においての搬入という行為自体が著作物と認められる可能性は必ずしも高くはないでしょう。

――そういった状況の中で、なぜ今回CC0にて著作権を放棄するという手段を選んだのでしょうか。

(永井)
理由は2つあります。1つは著作物と認められる可能性が高くはなくとも、「認められないとも断じられない」ということ。もし著作物と認められた場合、著作権を放棄していないと、利用者は著作権侵害になってしまいます。実際に認められるかどうかわからない、判断が難しいものにCC0をつけるケースは案外あります。もう1つは、CC0を使用して著作権の放棄を示すことで、「誰がやってもいい」という態度を伝えようと考えたからです。言い換えれば、CC0は色々な人に『搬入プロジェクト』を実施してもらう活動をドライブさせるための仕掛けの1つということです。

(金森)
そもそも著作物でない可能性がある。しかし著作物と仮定したうえで放棄するというプロセス自体が、『搬入プロジェクト』を開いていくために意味があるんじゃないかと思っています。

(永井)
いくら著作権フリーと定義しても、その著作物をみんなが使ってくれるわけではありません。作品を開いていくためには、様々な工夫をしなければならない。作品を利用しやすい状況が揃って、初めて使ってもらえます。だから、仮に著作権が認められなかったとしても、著作権の放棄を示すこと自体に、非常に意味があると思っています。

――「誰がやってもいいですよ」とアピールするために、CC0が一番分かりやすいということですね。

(永井)
僕は、一つの分かりやすいシンボルになると考えています。

(金森)
そもそも危口さんの存命時から、既に著作権フリーであるという意思は示されていました。だから今大切なのは、いかに活用して広めてもらう仕組みを作るかです。こういったことを永井さんとのやりとりで学びました。まだまだ未着手ではありますが、今後「事例の紹介」「ご相談対応窓口の開設」「FAQやWikiといった、インターネット上でのユーザー自身がノウハウを更新していける場作り」などを構想しています。

※6 「『類似性』や『依拠性』(既存の著作物を利用して創作すること)などが著作権侵害を成立させる基準になります。」
著作権侵害となる5つの要件|著作権法に違反する基準とは?.IT弁護士ナビ.株式会社アシロ.2018年8月6日参照.)

※7 「著作権法の世界では表現を保護し、アイデアは保護しない」
東大絵画廃棄と金魚電話ボックス撤去から考える「アートと法律の関係」.現代ビジネス.講談社.2018年7月1日参照.)

※8 『搬入プロジェクト#10』 2012年9月7日(金) ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター(ルツェルン/スイス)/スイスツアー

※9 『搬入プロジェクト#15』 2014年4月19日(土)~2014年4月20日(日) 六本木ヒルズ(東京)/六本木アートナイト

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