AMeeT
ARCHIVES

アーカイヴと再制作

悪魔のしるし『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビュー 前半―作品の著作権を放棄し、「誰でも勝手にやっていいもの」にしていく

2018 08 29

2-4. 「主体の芸術として実施すること」と「主体の芸術として実施しないこと」の両立

――『搬入プロジェクト』を多様な人にとって上演可能なプロジェクト ※13 にすることが目的ならば、CCで“表示”のみを条件 ※14 とするなど、他の選択肢もあったかもしれません。なぜCC0だったのでしょうか。

(金森)
私たちのやりたいことを伝えたところ、永井さんにCC0を推薦してもらったので、CC0にしたという経緯があります。

(永井)
今回の件について、金森さんから最初に「『搬入プロジェクト』を地域の祭りにしたい、そのためにはどうすればいいか」というご相談を受けました。そのためには、できるだけ権利をオープンにすることが重要です。他のCCライセンスの場合には、著作権は放棄されず、留保されます。そうすると、利用者は「危口統之あるいは悪魔のしるしによる作品であると表記しなければならない」という条件を守る必要がある。しかし地域の祭りとして定着させるのであれば、この条件はない方がよい。「誰の作品である」ということから離れ、作品が生まれた文脈とは違うところで広がっていく状況を目指すならば、完全に開かれているという点でCC0が相応しいと考えました。

――CC0にて権利を放棄した時に、いくつかのパターンの実施のされ方/表記のされ方が考えられます。主な2つのパターンを挙げてみます。

1つ目は、豊田市美術館で行った『搬入プロジェクト』のように、第三者主導で行われるものの、『危口統之と悪魔のしるし「搬入プロジェクト#22 豊田市美術館」』と、悪魔のしるしの名前がクレジットされるパターンです。例えば、シェイクスピアの戯曲は著作権で保護されていなかったとしても、第三者の演出で上演されたとしても、シェイクスピア作によるものと認識されるので、この状態に近いと言えます。つまり、『ロミオとジュリエット』がシェイクスピアという主体を持つように、『搬入プロジェクト』が悪魔のしるしという主体を持つ芸術であるという状態です。

『搬入プロジェクト#22』記録写真
『搬入プロジェクト#22』の記録写真。
危口氏が亡くなった後に行われ、2つの物体の内の1つが第三者主導で実施された『搬入プロジェクト#22』において、作家名は“危口統之と悪魔のしるし”と表記されていた。

2つ目は、悪魔のしるしという名前がクレジットされず、主体の芸術として扱われないパターンです。先ほど話題に上がりましたが、CC0においては、法的には帰属を明記する必要がない ※15 ので、悪魔のしるしという名前がクレジットされない可能性もあります。『搬入プロジェクト』をお祭りや労働と解釈するのであれば、お祭りや労働の作家は表記されないのが一般的です。この場合に、悪魔のしるしの作品であることは認識されない。

CC0にて権利を放棄した時に、「主体の芸術として扱われること」と「主体の芸術として扱われないこと」の両方の可能性が残されていると言えますが、悪魔のしるしとしては、どちらも想定しているという認識で正しいでしょうか。

(金森)
どちらも想定しています。

――先ほど金森さんは「我々としては法的な根拠はともあれ、『搬入プロジェクト』を危口さんの作った作品だと思っている」とおっしゃっていました。これは、ある側面から捉えると、「『搬入プロジェクト』が地域の祭りになる=主体の芸術として扱われないこと」と矛盾すると言えるかもしれません。

(金森)
作品の在り方は変化していくものです。『搬入プロジェクト』が始まった当初の在り方と、これから目指す在り方は異なります。『搬入プロジェクト』は最初から誰のものでもなかったわけではありません。けれど彼が亡くなった今、「『搬入プロジェクト』が知らない国の知らない祭りで行われる」という状況が生まれることが、悪魔のしるしにとって一つの理想としてある。そうした願いを込め、未来に向けて『搬入プロジェクト』を開いていく。それがオープン化の目指すところであり、そのプロセスを作ることが、今現在の悪魔のしるしの重要な活動です。このように考えているので、私の中で矛盾はありません。

※13 「これを機に「搬入プロジェクト」がその後も多様な人にとって上演可能なプロジェクトにするための、マニュアル・ウェブサイト等の作成を予定しています。」
「なにかを劇にする」危口統之 とはなんだったか?蒐集計画始動.クラウドファンディング Readyfor (レディーフォー).2018年8月6日参照)

※14 「原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示することを主な条件とし、改変はもちろん、営利目的での二次利用も許可される最も自由度の高いCCライセンス。」
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは.クリエイティブ・コモンズ・ジャパン.2018年8月1日参照.)

※15 「帰属を明示しなくとも、誰でも自由に利用したり改変することができます。」
CC0 FAQ.クリエイティブ・コモンズ・ジャパン.2018年8月1日参照.)

PAGE TOP