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アーカイヴと再制作

悪魔のしるし『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビュー 後半―第三者により作品が実施されるということ、その可能性と課題

2018 10 10

『搬入プロジェクト』は、ある空間に入らなさそうでギリギリ入る巨大な物体を設計・製作し、それを搬入するパフォーマンス。同作品は著作権が放棄されるなど、発案者である悪魔のしるしによってオープン化(作品を開いていくための活動)が推進されている。記事後半では、2018年1月20日(土)に、オープン化の一環として豊田市美術館にて行われた、初の第三者主導での『搬入プロジェクト』について、悪魔のしるしのメンバー3人、豊田市美術館 学芸員の能勢陽子氏、物体の設計・製作を主導した美術家の山城大督氏にお話を伺った。作品を開いていく活動における、様々な可能性と課題が同時に見えてくるような記事となった。

はじめに

『搬入プロジェクト#22』

豊田市美術館で2018年1月20日(土)~4月8日(日)の期間開催された《ビルディング・ロマンス-現代譚(ばなし)を紡ぐ-》展(以下、《ビルディング・ロマンス》展) ※1 。その一環として同館にて行われた『搬入プロジェクト#22』は、CC0にて著作権が放棄された後に行われた、唯一の『搬入プロジェクト』 ※2 である(2018年10月現在)。

また過去21回は、発案者である悪魔のしるし自身が主導して実施していたが、『搬入プロジェクト#22』では、『搬入プロジェクト』のオープン化 ※3 (作品を開いていくための活動)を推進するために、初めて「悪魔のしるし以外の第三者が主導して行う」という選択がなされた ※4

搬入は2018年1月20日(土) に行われ、その後の展示期間は、物体が作品として展示された。

本記事の概要

AMeeTでは『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビューを、前後半に分けて掲載する。記事後半では、悪魔のしるしのメンバー3人(石川卓磨氏、金森香氏、宮村ヤスヲ氏)、《ビルディング・ロマンス》展のキュレーターである豊田市美術館の能勢陽子氏、2つの物体のうちの1つの設計・製作を主導した美術家の山城大督氏にご参加いただき、オープン化の事例として『搬入プロジェクト#22』を掘り下げた。

『搬入プロジェクト#22』は、「当初は第三者主導で設計・製作した物体のみを搬入する予定だったが、最終的には悪魔のしるしが主導して設計・製作した物体と合わせた、2つの物体を搬入することになった」といった紆余曲折を経た。こうした経緯を丁寧に伺うことによって、作品を開いていく活動における、様々な可能性と課題が同時に見えてくるような記事となった。

また、記事内では「搬入(パフォーマンス)当日のことだけを考えるのではなく、搬入後も展覧会の中で“作品”として成立し続ける物体を作る」といった“展覧会の在り方”に関する課題や、「悪魔のしるし主宰の危口統之氏が亡くなってから1年も経っていない状況の中、個人的な感情を払拭し切れなかった」といった“作家との距離”に関する葛藤などにも触れられている。このようにシンプルにオープン化の事例を紹介するという目的を超え、多様な課題・葛藤が語られている。

目次

  1. 誰が主導したか
  2. 経緯
  3. 父と子の歴史の断片が埋め込まれた物体“父子の壁”
  4. 2つの物体
  5. それぞれの『搬入プロジェクト』への解釈
  6. 終わりに

主な参考資料

※1 《ビルディング・ロマンス-現代譚(ばなし)を紡ぐ-》 2018年1月20日(土)~4月8日(日) 豊田市美術館(愛知) 出展作家:飴屋法水、スーザン・ヒラー、危口統之と悪魔のしるし、志賀理江子、アピチャッポン・ウィーラセタクン

※2 『搬入プロジェクト』の概要は、記事前半のはじめになどを参照。

※3 『搬入プロジェクト』は、CC0にて著作権が放棄されるなど、発案者である悪魔のしるしによってオープン化が推進されている。オープン化の概要は、記事前半を参照。

※4 当初は第三者主導で設計・製作した物体のみを搬入する予定だったが、最終的には悪魔のしるしが主導して設計・製作した物体と合わせた、2つの物体を搬入することになった。よって、第三者主導による初の『搬入プロジェクト』として位置付けられているのは、2つの物体のうち1つである。詳細は本記事7章参照。

PROFILE プロフィール

悪魔のしるし | AKUMANOSHIRUSHI

2008年結成。主宰・危口統之の思いついた何かをメンバーたちが方法論も知らず手さぐりで実現していった結果、 演劇・パフォーマンス・建築・美術など多様な要素をもつ異色の集まりとして注目される。団体名は、危口の敬愛する英国のロックバンドBlack Sabbathの楽曲“Symptom of the Universe”に付けられた邦題、「悪魔のしるし」に由来。『禁煙の害について』(2010年)、『悪魔のしるしのグレートハンティング』(2010年/フェスティバル/トーキョー公募プログラム)『桜悪魔の園しるし』(2011年/トーキョーワンダーサイト国内クリエーター制作交流プログラム)など演劇的な要素の強い舞台作品を継続的に発表。祝祭的なパフォーマンス作品『搬入プロジェクト』は初演以来、国内外でも評価を受け、2016年までに8カ国20箇所での公演を重ねる。危口の実父が出演する『わが父、ジャコメッティ』(2014年、2016年)を、海外を含む6都市で上演するなど、今後の活動に期待が寄せられていた。2016年11月、危口が肺腺癌と診断され療養生活をおくる中、新作『蟹と歩く』の企画を立案し、原案を記す。2017年3月17日、倉敷の実家にて主宰・危口統之永逝。2017年3月25日・26日、『蟹と歩く』上演。

悪魔のしるし 公式サイト

危口統之 | KIGUCHI Noriyuki悪魔のしるし主宰・演出家

1975年岡山県生まれ。2008年、「悪魔のしるし」を組織し、『搬入プロジェクト』『わが父、ジャコメッティ』など、国内外で演劇・パフォーマンスを企画上演する。2012‐2013年度セゾン文化財団ジュニアフェロー、2014‐2016年度同財団シニアフェロー。2016年11月、肺腺癌と診断されるも、ブログ「疒日記」で自身の闘病記録を綴り、新作『蟹と歩く』の企画を立案。2017年3月17日、倉敷の実家にて永逝。

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