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アーカイヴと再制作

悪魔のしるし『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビュー 後半―第三者により作品が実施されるということ、その可能性と課題

2018 10 10

9. 終わりに

――最後に、今回実際に『搬入プロジェクト』を行ってみて、それぞれがどのように感じたか伺えますか。

(山城)
結果的に、物体を2つにしたことは美しいアイデアだったと思っています。“父子の壁”は「父と子の歴史の断片を壁にする」というものでした。今回2つの物体が美術館に搬入され、最終的に2つが1つになった。それによって、豊田市美術館で行った『搬入プロジェクト』も、“父子の壁”の一部になったと捉えることができる。すごくきれいな落とし所だったと思っています。

でも、オープン化の事例の第1弾がこのような形になったことによって、「『搬入プロジェクト』は第三者が気軽に行えるものではない」という印象がついてしまったんじゃないかという懸念はあります。

(能勢)
恐らく私は、どこかで“追悼”というか、死後も危口さんと関わるという気持ちを拭えなかった。例えば今、全国の美術館にブリューゲル展が巡回しているけれど、16世紀から17世紀に生きた画家を紹介するのに、もちろんそんな感情はないわけですよね。芸術はそういうところに立脚しているのだろうし、来館者には危口さんのことを知らない人もいるわけだから、今でも「個人的な感情でやってしまったところがあるのではないか」と考えることはあります。

そういった葛藤はあったけれど、実際豊田市美術館でやってもらった『搬入プロジェクト』はとてもおもしろいものでした。そして危口さんのお父さんが「初めて“搬入”を観た」と言って喜んでくれて、それももちろん個人的なことだけれど、やっぱりできてよかったと思いました。

危口さんが亡くなった後、展示をすべきかどうかも悩んでいたのですが、結局「『搬入プロジェクト』ならできる」という悪魔のしるしの考えは正しかったんだと思いました。残ったメンバーで過度に何か付け加えたりせず、オープン化に関する新展開を孕みつつも、“搬入”そのものを観せようとしていた。

(石川)
「空間を最大限使い切って遊ぶ」というのが僕の役割だと思っているのですが、その立ち位置からいうと、今回の搬入は豊田市美術館という場所でしっかり遊び倒すことができたのかなと思っています。僕個人としては、搬入物体に物語を纏わせる必要がないと思っているので、ある種の無意味なゲームとして。馴染みのある正面玄関から搬入することで、見慣れている美術館の玄関の違う使い方も示すことができたし、志賀理江子さん、飴屋法水さん、アピチャッポン・ウィーラセタクンなど、他の出展作家の展示空間を使わせてもらって搬入したり、色々と好き勝手にやらせていただいたのはよかったですね。それらを観せることができて良い搬入になりました。

『搬入プロジェクト#22』の記録写真(搬入中)
『搬入プロジェクト#22』の記録写真(搬入中)(画像提供:悪魔のしるし)。
志賀理江子氏の展示室の中を移動する物体。

2つの物体の落とし所としても、双方が機能的にも補完しあって展示風景を作り出す配置にすることで違和感なく着地できたように思えます。

当初、美術館という場所の特性上、ヤマト運輸さんと関係者数人しか物体を搬入できないと聞いていましたが、山城さんのトークと機転で観客参加型となり、見事にたくさんの人を巻き込んで搬入されていく様は痛快でした。またそれを許容してくださった能勢さんにも感謝しています。

オープン化についてはまだまだ課題はありますが、今回の試みはそれなりの収穫があったと思っています。

(宮村)
先程も言ったように、危口くんの没後、その存在に対しての“たられば”を感傷的には考えないようにしていますが、豊田市美術館で経験したことが大変愉しかったので、搬入本番後にふと、「この景色を危口くんと滝尾さんも含めて共有したかった」という想いがよぎりましたね。

また、ヤマト運輸さんが主だって搬入作業を行っているのを眺めていて、高みの見物というか、そんな初めて覚える感覚もあって非常に新鮮でした。『搬入プロジェクト』は豊田市美術館で22回目になりますが、「まだまだ展開できる・遊べる可能性があるんだな」と確信して、オープン化に向けてよりいっそうモチベーションが高まりました。

『搬入プロジェクト#22』の記録写真(搬入中)
『搬入プロジェクト#22』の記録写真(搬入中)(画像提供:豊田市美術館/写真:岡村靖子)。
“物体その2”は観客参加型で搬入されたが、“父子の壁”はヤマト運輸のスタッフによって搬入された。

(金森)
今回の『搬入プロジェクト』を振り返ると、「『搬入プロジェクト』をやる」という目的の下、様々なコミュニケーションや、やりとりが行われ、多様な作品が生まれました。このことは、正に『搬入プロジェクト』の狙いとするところであり、危口さんのルール設計に沿って演じさせられた感があります。

危口さんによって“作品”と定義付けられた、“搬入”という著作物と認められないかもしれない行為の著作権を改めて放棄したことから始まり、作ったルールを頭からハックしていく山城さんとそれに反応する悪魔のしるしがいた。搬入当日はヤマト運輸さんや山城さんが大活躍し、最終的に色々な人の想いが結実した多様な作品が展示室に展開された。ともかく物体が色々なコミュニケーションを誘発し、多様な現象を巻き起こしたということ自体が奇妙で興味深かったです。

一方で反省点も多い。搬入当日以外の作品の観せ方、コンセプトの伝え方については、今後もまだまだ検証を重ねていきたいと考えています。

『搬入プロジェクト#22』の記録写真(搬入前) 集合写真
『搬入プロジェクト#22』の記録写真(搬入前)(画像提供:悪魔のしるし)。
豊田市美術館のエントランス前にて。搬入前に撮影した集合写真。
左から金森氏、山城氏、宮村氏、谷氏、石川氏、荒木氏、能勢氏、新見氏。
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