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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第1回(全3回)―式年遷宮と民間伝承と神話、あるいはフランケンシュタインとゾンビとイタコ対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 07 22

3. ディシジョン・メイキング(意思決定)

3-1. 古橋悌二『LOVERS――永遠の恋人たち――』

——次に「再制作の方針の決定」や、「ここはアップデートするべき、しないべき」「アップデートするとしたらこういうハードウェア/ソフトウェアに代替する」というような判断を、どういうプロセスで行ったかを伺えますか。

(古舘)
経緯としては、初めに高谷さんが芸資研から『LOVERS』の修復をしたいという相談を受け、その後、高谷さんから僕と白木君にエンジニアとして参加してほしいという相談を受けました。

そのミーティングの中で、『LOVERS』を修復するとなった場合に、どの要素が重要で必ず維持されなければいけないか、いわば、『LOVERS』という作品を何をもって『LOVERS』とするか、という話をしました。その話の中で、極端な例では「当時、液晶プロジェクターが安価に手に入るようになったという背景があって、ああいう仕様の作品になっただけであって、例えば、当時LEDディスプレイが存在していたならば、それを使ったかもしれない。」という話であるとか、「仮にLEDディスプレイを使えるのであればセンタータワーはなくても良いのか」「DVDとレーザーディスクを用いたシステムだが、コンピューター1台に置き換えることができる」、「モーターを動かすプログラムも、Arduino ※13 などのフィジカル・コンピューティング ※14 ・デバイスで作り直すこともできる」というような意見も出ていました。LEDディスプレイの話は見た目にも関わる特に極端な例で古橋さんがもしも生きていたならそう言ったかもしれない、くらいの話ではあるんですけどね。それ以外の話は純粋にテクニカルな部分であまり見た目にも関わらないので実現可能だと考えてました。

しかしながら、予算や現実的にできる範囲との兼ね合いで、「現状のものを大きくアップデートせず、プロジェクターの故障などで使えなくなった部分だけを置き換える」という判断が、芸資研と高谷さんとの間で行われました。

それと同時に、「作品が動かなくなり、根本的な修復が必要になったとき、リファレンスになるような資料を残そう」という方向にシフトしたんですね。エッセンスのようなものを遺しておく...つまり後の人が参照できるようにスコアを作って残しておこうと。「どういうふうに残すのがよいか」ということは、現場レベルで判断しました。

 『KAC Performing Arts Program / LOVERS』
2015年に修復された『LOVERS』が2016年に京都芸術センターにて展示された際には資料も展示された。
『KAC Performing Arts Program / LOVERS』(京都芸術センター講堂、2016年)
撮影:表恒匡 写真提供:京都芸術センター

――ではエンジニアにおりてきた時点では、すでに方針は決定していたということなのですね。

(古舘)
いや、初めの段階では大きくアップデートすることも視野に入っていたと思っています。こちらの話し合いの内容を芸資研へフィードバックしたり、具体的な調整の中で、スコアを残すということを最終的に高谷さんが判断されたのかな、と。

――今回プロジェクターを置き換えていますが、プロジェクターを選んだのは誰でしょうか。

(古舘)
基本的に、プロジェクターなどのハードウェアに関しては、すべて高谷さんが判断されています。高谷さん自身がエンジニアリング能力に長けている方なので、そうした部分は高谷さん主導になります。ソフトウェアに関して、僕らにおりてくるという役割分担でした。

 古舘健  対談風景
古舘健

※13 「2005年にイタリアで開発された、設計情報が公開されているオープンソースのハードウエア。」(“Arduino(アルディーノ)”.イミダス.参照2019-06-30.)

※14 「コンピューターやそこで演算される情報を、従来のGUI(アイコンなどを用いた視覚的な画面表示方式)に限らず、LEDやモーター、スピーカーなど外部機器と接続することで、より人間の身体的な(フィジカルな)動きと連動させることを考える概念や環境のことである。」(“フィジカル・コンピューティング”.イミダス.参照2019-06-30.)

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