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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第1回(全3回)―式年遷宮と民間伝承と神話、あるいはフランケンシュタインとゾンビとイタコ対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 07 22

4. それぞれの再制作モデル~式年遷宮と民間伝承と神話、あるいはフランケンシュタインとゾンビとイタコ

(古舘)
三上さんとその作品の制作チーム、古橋さんと『LOVERS』の制作チームとでは、作家とメンバーの関係性が違うんだよね。三上さんの場合、基本的には三上さんがチームのトップにいるイメージなんだけど、古橋さんと高谷さんの場合、割と関係性がフラットだったという気がしていて。こうした部分も、恐らくその作品を修繕する際の決断を下すプロセスに影響している。「三上さんだったらこうするであろう」「古橋さんだったらこうするであろう」という想定の仕方が違うというか...。

(白石)
この鼎談の前にお互いに共有したそれぞれのプロジェクトの制作資料を見て、僕は『LOVERS』の修復が、伊勢神宮の式年遷宮 ※16 的モデルに見えたんです。あれは社殿という構造物があって、それに対してしっかりとした設計図的なものが祭事に包摂されている。設計図は高谷さんの頭の中にトレースされていて、それが他のメンバーに向けて開示されることで、長い時を経てもう一度理想的な形に向けて再制作されたように映りました。そして、三上さんの作品の再制作については、もう少し民間伝承 ※17 的なモデルに見えたんですね。

(三原)
親方のような存在がいない。

(白石)
三上さんという非常に神々しい存在があって、それを伝承しているというか...。

(三原)
触媒としてたまたま繋がったのがプロジェクト・メンバーであったというだけで...その村の人たちがそのまま生き残っていて、もう1回お祭りをやる(笑)。

(白石)
そんなふうに見える(笑)。

(三原)
「三上さんはああいうふうに言ってたよね」みたいに...

(古舘)
言い伝えられている(笑)。

(白石)
三原さんがディシジョン・メイキングできたのは、そこがちゃんと受け継がれていたからなのかなと。一方僕らの場合、断絶してしまっているんですよね。以前トーク・イベントでも遠藤が話しているのですが...

(古舘)
発掘系!

(白石)
そう、発掘系なんですよ。ナウシカ・モデルだと遠藤は言ったんですけど。「こういう昔話がありました、じゃあそれを掘り起こしてみましょうか」というアプローチで始めている。具体的な展示が神話として抽象化しているのでいかようにも解釈ができるけど、向かっているところはエッセンシャルな何か。モデルとしては神話モデルとも言い換えることができるのではないかと思っています。

(古舘)
別の言い方をすると、『LOVERS』の場合はフランケンシュタイン・モデルというか...。すべてのハードウェアなどの要素が無くなった後でも、部品を搔き集めて再制作ができる。それに対して、三上さんの作品はサイボーグ・モデルで、現状の作品を維持してアップデートし続ける。ゾンビ・モデルと言ってもいいかもしれない。『水中エンジン』は、イタコ・モデル。『LOVERS』や三上さんの作品は、恐らくプラクティカル(実用的)な理由で修繕が行われている気がするんだよね。作品を巡回展示しなくてはいけないとか、維持することに重点が置かれている気がする。それに対して『水中エンジン』は再制作すること自体が一つのアート・プロジェクトになっている。研究者やエンジニアが主体になった『LOVERS』の修復に対して、『水中エンジン』の場合、遠藤さんというキュレーターがアート・プロジェクトとしてランしているというところが大きく違う。

(三原)
「この作品見たことないから再制作したい」とかって思うことありますよね。僕はあるんですけど。勝手にやっちゃうのはおもしろい。

三原聡一郎、白石晃一 対談風景

※16 「神社等において、周期を定めて社殿を更新し、新たな社殿に神体を移すこと。三重県の伊勢神宮では天照大神を祭神とする内宮、豊受大神を祭る外宮ともに、20年ごとに、社殿を新しく造営し祭神を遷座してきた。一般には、この神宮式年遷宮のことを指す。」(“式年遷宮”.コトバンク.参照2019-06-30.)

※17 「民衆の日常生活の中で古くから受け継がれてきた知識・技術・習俗など。」(“民間伝承”.コトバンク.参照2019-06-30.)

PROFILE プロフィール

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古舘 健 | FURUDATE Kenアーティスト/ミュージシャン/エンジニア

サインウェーブ、電子的なパルス、シンプルなノイズ関数など技術的にミニマルな要素を用い、その特性を強調しつつ複雑な現象を作り出す作品をインスタレーションやライブパフォーマンスの形で発表する。個人の活動に加えて、2002年よりThe SINE WAVE ORCHESTRAを主宰。2006年より、エンジニア/コラボレーターとして他作家の舞台作品・インスタレーションなどに多く関わる。2013年よりDumb Typeメンバー。

Ken FURUDATE 公式サイト

The SINE WAVE ORCHESTRA 公式サイト

三原 聡一郎 | MIHARA Soichiroアーティスト

世界に対して開かれたシステムを提示し、音、泡、放射線、虹、微生物、苔、気流、土そして電子など、物質や現象の「芸術」への読みかえを試みている。2011年より、テクノロジーと社会の関係性を考察するために空白をテーマにしたプロジェクトを国内外で展開中。2013年より滞在制作として北極圏から熱帯雨林、軍事境界からバイオアートラボまで、芸術の中心から極限環境に至るまで、これまでに計8カ国11箇所を渡ってきた。
2018年秋、京都で企画した展覧会『空白より感得する』の展覧会アーカイブを複数展開中。

『空白より感得する』公式サイト

白石 晃一 | SHIRAISHI Koichiアーティスト

ファブラボ北加賀屋 共同設立者・美術家・京都造形芸術大学 専任講師。造形学修士(工芸・鋳金)・ファブアカデミー 修了。あらゆる人たちと共にプロジェクトを実践する場を求め、デジタルファブリケーションを使い誰もが共創できる市民工房、ファブラボ北加賀屋(2013〜)を共同設立。 近年はインターネットを使った知識・技術伝承システムの開発、共創活動の持続的組織構造の構築と実践、公共空間における芸術表現を実現する方法論とその影響について研究を行っている。

FabLab Kitakagaya

中本 真生 | NAKAMOTO MasakiUNGLOBAL STUDIO KYOTO

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。インタビュアー・編集を担当した再制作に関する記事に“悪魔のしるし『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビュー”“タイムベースド・メディア・インスタレーション『HUMAN EMOTIONS』の再制作・修復・保存に関する資料と議論”などがある。

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