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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第2回(全3回)―修復・再制作の方法・方針と、アップデート・改変の判断に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 09 04

13. 作家の意思とは別の基準

——現在、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] (以下、ICC)で開催されている展覧会『オープン・スペース 2019 別の見方で』 ※21 にて、『欲望のコード』と同時期にYCAMで修復が行われた三上さんの作品『Eye-Tracking Informatics』 ※22 が展示されていますよね。

2011年にYCAMで展示されたオリジナル・ヴァージョンの展示記録映像。
山口情報芸術センター[YCAM] スタジオB、2011-2012年

(三原)
この作品は2人で体験するヴァージョンを2011年に制作した後に、三上さんの生前、巡回用として1人で体験するヴァージョンが制作され、今回のICCの展示では1人ヴァージョンが展示されています。2人だと「お互いの視るをリアルタイムに視る」ことができ、1人だと「前の体験者の視線を視る」仕様で、体験の質が異なります。三上さんは自分からすると具現化への欲求が強いように思えました。だから、オーガナイザーが提案するさまざまな条件に対して、積極的にトライしようとしていました。

(古舘)
その意思は継ぐの?

(三原)
『Eye-Tracking Informatics』に関しては僕がディシジョン・メイキングするわけじゃないから答える立場にないけど、『欲望のコード』に関しては、生前に巡回を具現化する際の、三上さん含めた先方とのやりとりを経て生成されてきた不文律のようなものは守りつつ、この作品の実空間体験として自分が実感しているもの、個人的には一つの環境として監視テクノロジーに囲まれる「畏れ」のような感覚が内蔵されるように務めたいと思ってます。
三上さんの生前、『欲望のコード』の3要素を2部屋で分割展開したことがあった。その時は三上さんのGOで進めたし、その後、三上さんから特にNGとは聞いていないけど、今後はもしオファーがあっても1つの空間で展示出来ればなと思っています。「畏れ」について分割展開がどう関係しているのかは明確に言語化出来ないし、それは再制作チームでしか共有していないことなんだけど...。

『欲望のコード』を2部屋で展開したヴァージョンのスケッチ。
『欲望のコード』を2部屋で展開したヴァージョンのスケッチ。

――三上さんが許容していたにも関わらず、今後2部屋では展示しないんですね。「三上さんならこう判断するだろう」ということとはまた別の基準ということですよね。

(三原)
「オリジナル・ヴァージョンに近い条件を保てるのであれば出展する」というふうにラインを引く必要がある。その近さを都度どう捉えていくかが、興味深く悩ましいです。円形の蠢く壁面などは完全に逸脱しているとも解釈できるので矛盾しているのだけれども...「三上さんが生きていたら提案したい」というアグレッシブな自分もいるし、確認することが不可能な今は、なるべくオリジナルの空間体験を軸にできればなと思ってます。

※21 『オープン・スペース 2019 別の見方で』 2019年5月18日(土)~2020年3月1日(日) NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

※22 体験者の視線を視線入力装置によって感知し、それによって描かれる形態を仮想の3次元空間内に生成していくインスタレーション。詳細な作品概要は、山口情報芸術センター[YCAM]の「Eye-Tracking Informatics」紹介ページなど参照。

PROFILE プロフィール

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古舘 健 | FURUDATE Kenアーティスト/ミュージシャン/エンジニア

サインウェーブ、電子的なパルス、シンプルなノイズ関数など技術的にミニマルな要素を用い、その特性を強調しつつ複雑な現象を作り出す作品をインスタレーションやライブパフォーマンスの形で発表する。個人の活動に加えて、2002年よりThe SINE WAVE ORCHESTRAを主宰。2006年より、エンジニア/コラボレーターとして他作家の舞台作品・インスタレーションなどに多く関わる。2013年よりDumb Typeメンバー。

Ken FURUDATE 公式サイト

The SINE WAVE ORCHESTRA 公式サイト

三原 聡一郎 | MIHARA Soichiroアーティスト

世界に対して開かれたシステムを提示し、音、泡、放射線、虹、微生物、苔、気流、土そして電子など、物質や現象の「芸術」への読みかえを試みている。2011年より、テクノロジーと社会の関係性を考察するために空白をテーマにしたプロジェクトを国内外で展開中。2013年より滞在制作として北極圏から熱帯雨林、軍事境界からバイオアートラボまで、芸術の中心から極限環境に至るまで、これまでに計8カ国11箇所を渡ってきた。
2018年秋、京都で企画した展覧会『空白より感得する』の展覧会アーカイブを複数展開中。

『空白より感得する』公式サイト

白石 晃一 | SHIRAISHI Koichiアーティスト

ファブラボ北加賀屋 共同設立者・美術家・京都造形芸術大学 専任講師。造形学修士(工芸・鋳金)・ファブアカデミー 修了。あらゆる人たちと共にプロジェクトを実践する場を求め、デジタルファブリケーションを使い誰もが共創できる市民工房、ファブラボ北加賀屋(2013〜)を共同設立。 近年はインターネットを使った知識・技術伝承システムの開発、共創活動の持続的組織構造の構築と実践、公共空間における芸術表現を実現する方法論とその影響について研究を行っている。

FabLab Kitakagaya

中本 真生 | NAKAMOTO MasakiUNGLOBAL STUDIO KYOTO

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。インタビュアー・編集を担当した再制作に関する記事に“悪魔のしるし『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビュー”“タイムベースド・メディア・インスタレーション『HUMAN EMOTIONS』の再制作・修復・保存に関する資料と議論”などがある。

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