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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第2回(全3回)―修復・再制作の方法・方針と、アップデート・改変の判断に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 09 04

7. 大幅なアップデート・改変の判断

——先程、三原さんは『欲望のコード』修復の際のディシジョン・メイキング(意思決定)について、「三上さんは、所謂ファンクション(機能)が成立していれば細かいことはそんなに気にする人ではなかったので、僕らが提案したことに対して、清々しいくらいほとんどそのままGOを出していました。だから2016年からの修復でも、僕らが悩んだことといえば、『このネジはどこで買えばいいんだ』とか、そのくらい細かいレベルで、何かを変えるときに迷いはほとんどありませんでした。」 ※7 とおっしゃっていました。ではファンクションに影響するような大幅なアップデート・改変を行わなくてはいけなくなった場合、その判断は誰がどのように行うでしょうか。

(三原)
まだそういったフェーズに直面したことがないけれど、もし我々が直面するとしたら小型レーザー・プロジェクターが無くなった未来に、焦点距離が変わってもフォーカスが定まるものを開発しなければならなくなるということ。それは村にはできない...。1億円とか1兆円とかの予算をとってくることができれば可能かもしれないけど現実的ではない。

サーチアーム 写真
「多視点を持った触覚的サーチアーム」の先端にはビデオカメラと小型レーザー・プロジェクターが取り付けられており、観客の撮影と、撮影した映像のプロジェクションを行う。
撮影:丸尾隆一(YCAM) 写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]

(白石)
世界の最先端技術が作品のファンクションに対応しているかどうかではなく、村の技術力で対応できるかどうかが問題というのは面白いですね。

(三原)
村を強くしないといけない(笑)。

——小型レーザー・プロジェクターが無くなった場合には、異なる性質の機材に置き換える可能性もある?

(三原)
置き換えられないんですよ。レーザー・プロジェクターが無くなるとこの作品は終わってしまう。焦点距離が変わってもフォーカスが維持されるものは、現状レーザー光源以外にないと思う。

——作品をリタイアさせるかどうかについても、基本的には「三上さんならばどう判断するか」を想定しますか。

(三原)
三上さんだったらレーザー・プロジェクターのオルタナティヴの解はすぐに下せるかもしれないけど、ファンクションを担保できないものの判断は僕にはできないかもな...。

(古舘)
見た目は変わってもいいけど、機能は変えられないということ?

(三原)
そう...。2010年時のビジュアルの印象を踏襲したデザインの範疇ではありますが、見た目はこれまでにも変わっているんですよ。サーチアームに取り付けたSonyのハンディカムを同等の機能を持った監視カメラに置き換えたり、蠢く壁のサーボデバイスの固定金具を振動の金属疲労に耐久するようなフレーム構造に設計し直して変更したり。でもファンクションは作品の命ですからね。

三原聡一郎
三原聡一郎

※7 詳細は第3-2章参照。

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