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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第2回(全3回)―修復・再制作の方法・方針と、アップデート・改変の判断に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 09 04

8. 関連資料がほとんどない中、推理小説のようにエンジンを特定していく

(三原)
『水中エンジン』について、関連資料がほとんど残されていない中での再制作だったそうですが、それって所謂、犯罪捜査みたいなことですよね。制作風景の記録映像なんかが残っていたらよかったけどほとんど...

(白石)
残っていなかったですね。

(三原)
エンジンを特定するにあたって、何が証拠になったんですか?

(白石)
エンジンに関しては、オリジナル・ヴァージョンが展示された際の映像や写真がたくさん残っていたのでそれらから...

(三原)
型番が見えた?

(白石)
型番は見えなかったです。車のエンジンはそれぞれユニークな形状をしているので、形状から特定ができました。

画像資料での検証の様子
画像資料での検証の様子。オリジナル・ヴァージョンの記録写真を参考に分析が行われた。
画像提供:國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト実行委員会

(古舘)
それは詳しい人が見たらわかるものなんですか?

(白石)
「このくらいの年代のスバルのサンバー」というところまではヒアリングで的を絞りました。

(三原)
誰にヒアリングしたんですか?

(白石)
國府と近しい方たちですね。最も有力だった情報は、國府の多くの作品で制作のお手伝いをされていた、妹さんの証言でした。

(三原)
そうなんだ!

(白石)
國府は自分の車をバラしてそのパーツを使って作品を作ることが多かったのですが、妹さんから「あの時期に乗っていたのが多分この車だった」という証言があったため、「これだろう」という目星がついた。

(三原)
本書いたら売れますよ、推理小説だもん(笑)。

(白石)
後はオークションサイトに上がっている商品写真を参考にしました。一度ヤフオクで違うエンジンを間違って買っちゃったんですよ。エンジンの型番まで一緒なんだけど、詳細な部分の品番がちょっと違ったみたいなんですね。よくよく調べていくと、生産されている最中にマイナーチェンジがあったみたいで。結局それは返品したんですが、その経験があったから精度が上がって正確に型番が特定できました。

(三原)
それは國府さんのPCのアカウントに入ってチェックしたということ?

(白石)
いや、していないです。だいたいの年代や検索に使える型番などのクエリ ※8 はわかっていたため、自動検索のスクリプトを書いて、定期的にオークションを巡回させておいて、ヒットしたら画像を見て確認していきました。
他のパーツについては、探偵みたいに伝票から型番を引っ張ったりもしました。國府が該当パーツを購入した業者に「國府が購入したのは恐らくこの日あたりだ」ということを伝えたら、業者が「伝票が出てきました」と。でも、それと同じ部品を納品してもらったら全然サイズが違っていた。「じゃあこれよりも小さいやつで」と、再度発注をかけて、最終的に同じものを手に入れることができました。

(三原)
伝票には記されていないサイズ表記があったのか...

(白石)
もしくは...

(古舘)
國府さんも間違えて買ったとか。

(三原)
なるほどね。

(白石)
特注品だったので。

(三原)
本人が残したスケッチブックなんかは見たんですか?

(白石)
見ました。ドローイングとかを見たんですけど、設計レベルの細かいドローイングは見つけられなかったですね。もしかしたらあるのかもしれないけど...

(三原)
ご遺族の方が管理している?

(白石)
ご遺族の方も見つけられていないのかもしれない。

(古舘)
本人がオンザフライ ※9 で作っていたのかもね。

(三原)
そもそも存在しないかもしれない。

(白石)
もしかしたらPCに設計図が残っているかもしれないけど、恐らくそれも完成系ではない。

(古舘)
特注品だったのならば、どこかに資料が残っているかもしれないですよね。

(白石)
手仕事的に作業していたので、部分々々しか設計していない可能性もあって...。

(古舘)
彫刻的に作っていたということですね。

(白石)
そうです。

(古舘)
『水中エンジン』の再制作は、『欲望のコード』と『LOVERS』の修復に比べてものすごくロマンティックな印象ですよね。遠藤(水城) ※10 さんのパーソナリティーが出ているのかもしれないですけど。

(白石)
確かにロマンティックな話ではあるんですけどね。

左から古舘健、三原聡一郎、白石晃一
左から古舘健、三原聡一郎、白石晃一

※8 ここでは「検索クエリ」の意。ユーザーが検索するときに入力する単語やフレーズのこと。

※9 ここでは「その場の判断で」などの意。

※10 國府理「水中エンジン」再制作プロジェクトのプロジェクト・ディレクター。『水中エンジン』の修復/再制作の概要は1-3章参照。

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