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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第2回(全3回)―修復・再制作の方法・方針と、アップデート・改変の判断に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 09 04

9. 実機を解析して制御システムを再構築する

(三原)
再制作の際、高谷さんがオリジナル・ヴァージョンを制作した時のことを「どうだっただろう...」と思い返しながら作業するようなシーンはあった?

(古舘)
そういうフェーズもなくはなかったけど、「それがわからないから進められない」ということはなかった。『LOVERS』は実際に動作する実機があるから。

(三原)
それを見て検証すればいいのか。

(古舘)
京都での修復でもモーターのタイムラインを書き起こした。なぜ書き起こさなければいけなかったかというと、そもそも、2001年に仙台で再制作した時に現場でちょこちょこシーケンスを直しているからというのが一つ。

ムービーファイルとモーターの動きの対応を起こしたグラフの一部。
ムービーファイルとモーターの動きの対応を起こしたグラフの一部。
資料提供: Dumb Type

(三原)
その記録が残っていない。

(古舘)
仙台で再制作した際、業者に渡したタイムラインは残っているんだけど、そこから変わっていた。ビデオの内容からモーターの動きを書き起こして、業者に渡したみたいなんだけど、実際に動かしてみるとずれてたりしてたみたいで、その辺を現場で微調整している。無門館で実寸の空間を用意して、そこで人が実際に歩いて、それに合わせてカメラを手動でパンして撮った映像だから。

(三原)
それは吸いだせないんだ。

(古舘)
モーターに入っているシーケンスは別の業者の人に吸いだしてもらったけど、それはそのままだと単なる数字の羅列で、どの数字が何を表しているのかということまでは当初はわからなかった。作業を進めていくうちにどの数字がスピードで、どの数字がモーターの角度なのかっていうのはわかったんだけど、同時に直しきれてない、人の動きとモーターがずれてる箇所が気になって、じゃあ本当に理想的な動きはどうなんだろう。そういう経緯でシミュレーター ※11 には「アイディアル」と「アクチュアル」の2種類 ※12 が存在する。

(三原)
それをそのまま焼けば、その通り動く...?

(古舘)
いや、モーターを制御しているブラックボックス ※13 が別にあって、モーターに入っているシーケンスをそのブラックボックスがトリガー ※14 している。そのブラックボックスはほんとにブラックボックスだったから、実際に直そうと思うとそもそも作り直した方が早い。

(三原)
だからタイムラインを書き起こして、キューを割り出し、もう一度制御システムを作る必要があったと。

(古舘)
スコアとして書き起こして、シミュレーターまでは作ったけど、実際にシステムを作り直すとこまではやってない。そのブラックボックスを作った会社というのはまだ存在していて、その会社を呼ぶという話もあった。でも出張費が高かったから、その話も流れたっていう話だったかな。

(三原)
村の外だったからレートが違った(笑)。

(古舘)
『LOVERS』の修復でも、予算がもっとあればまた違った方法があったのかもしれない。

古舘健
古舘健

※11 京都での修復作業の過程で、将来の更なる修復のために、コンピュータ上の仮想空間で作品を再現するためのシミュレーターが制作された。このシミュレーターによって、「それぞれのハードがどのような仕組みで動いているのか」というロジックを保存することが可能となった。

※12 「『Actual』は,現行の《LOVERS》におけるパフォーマーの実際の動きに基づくもので,『Ideal』は古橋が編集したヴィデオに基づき,彼が制作時に思い描いていたであろう理想的な動作をシミュレートするものである。」(石谷治寛 執筆.“古橋悌二《LOVERS—永遠の恋人たち》展示・修復資料展示の報告”.京都市立芸大芸術資源研究センター.参照2019-08-23.)

※13 「内部機構を見ることができないよう密閉された機械装置」(“ブラックボックス”.ウィキペディア日本語版.参照2019-08-12.)

※14 「何らかの動作を開始するためのきっかけとなる命令や信号のこと。ハードウェアでは電気信号、ソフトウェアでは何らかの処理を開始するためにシステムから出されるリクエストなどがこれに相当する。」(“トリガー”.コトバンク.参照2019-08-12.)

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