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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第2回(全3回)―修復・再制作の方法・方針と、アップデート・改変の判断に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 09 04

10. 作家のプロセスを追体験する

(白石)
『水中エンジン』の場合、ほとんど関連資料が残っていなかったということもあって、プロジェクト・メンバーのはが(みちこ)、高嶋(慈) ※15 が中心となり様々な方にヒアリングを行いました。話を聞いていると、インタビュイーの潜在的な記憶の中からきっかけとなるものが出てきた瞬間にワーっと膨らむ感覚がありました。そこから膨らんだ話の中からディシジョン・メイキングするための素材が揃っていくことがかなりあったし、それぞれの方が思い出話的に語る「國府さんだったらこういうものを選んでいたはずだよね」みたいなところから制作の判断に繋がるということもあった。
あとは実際にやってみるということもすごく重要で、映像資料などを見るだけではわからない部分がいっぱいある。演繹 ※16 的なエンジンを水中で動かすためにはこうあるべきとかのルールベースでの仮説を立て、実際にやってみて、自分たちが失敗することではじめて「ここがこの形になっているのにはこういう理由があったんだ!」という帰納 ※17 的な形で結論を理解する。結果論ではあるんですけど、そうした経験があったからこそ、作品への理解が深まりました。そういう意味で追体験が非常に重要だったと感じています。

(三原)
「だからこうなっているんだ!」と。

(白石)
そうした体験があると、「ここでこういう判断をしていたんだとしたら、別の部分でもこういう方向性の判断をしたはずだ」というふうに、それ以外の部分も判断できるようになってくるんですね。そういうことが成功失敗を繰り返す中でたくさん起こった。そして、そこで費やされた時間は、自分たちの判断を咀嚼していくための猶予になったとも思っています。

(三原)
成功というのは、「アートの作品の体として皆が納得した」という意味なのか、それとも「そのファンクションはこの素材や尺ではないと成り立たない」ということだったのかどちらですか?

(白石)
ファンクションの方ですね。アートとしてはずっと疑問のままです。作品としてあれで成り立っているのかどうかというのはわからないし、当然賛否両論どちらもある。それはやる前からわかっていたことですし、あって然るべきだとも思っています。

(三原)
すごく納得できました。

白石晃一
白石晃一

※15 國府理「水中エンジン」再制作プロジェクトのチーム体制と役割については2章参照。

※16 「与えられた命題から、論理的形式に頼って推論を重ね、結論を導き出すこと。」(“演繹”.コトバンク.参照2019-06-30.)

※17 「個々の具体的な事例から一般に通用するような原理・法則などを導き出すこと。」(“帰納”.コトバンク.参照2019-06-30.)

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