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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第2回(全3回)―修復・再制作の方法・方針と、アップデート・改変の判断に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 09 04

11. 巡回展示の柔軟性

(古舘)
三上さんの作品もよく巡回展示をやっているけれど、パッケージ化という面ではまた『LOVERS』とは状況が違うよね。

(三原)
『LOVERS』は映像の画角や投影距離の問題で、何m×何m×何mという空間のサイズが厳密に決まっているじゃん。

(古舘)
そうそう『LOVERS』は「どういうサイズの箱で、壁の素材はこうで、床の素材はこうで」ということが厳格に決まっているんですよ。だからそこに迷いはない。条件に当てはまらない空間での展示依頼があれば断る。

(三原)
わかりやすいよね。『欲望のコード』にはそれがないんですよ。その場所に合わせて壁のサーボ ※18 ・ユニットのグリッドの数からプロジェクションのサイズからアームの本数まで全て変えられる。

(白石)
今後巡回展示を行う際、今までにないような箱が与えられた場合、どういうふうなコンポジションにするかは誰がディシジョン・メイキングしていくのでしょうか。

(三原)
なかなか悩ましい問題ですね。四角い部屋に展示する場合には、比率が変わるだけなので、基本的に配置のバランスをいじるだけです。サーボ・デバイスのグリッド同士の間隔はけっこう細かく変えていて、数をなるべく変えずに展示ごとの異なったサイズの壁に対しての分布比率を一律にしています。あと数は極力オリジナルの90個にしたく、まず間隔で検討し、更に難しい場合のみ列を減らす選択をとるなどの判断する場合もあります。

(白石)
例えば円柱状の空間とかはどうでしょうか。
僕らが再制作した『水中エンジン』を展示したのはオリジナルヴァージョンを展示したアートスペース虹と、そんなに条件の変わらない(小山市立)車屋美術館の展示室だったため、そういった面で大きな迷いはなかったんですね。でも完全にオープンエアー(野外)であったり、細長い廊下に展示しますということになっていたらちょっと迷ったかもしれない。そういった場合には、どういうふうに判断していくべきなのかなと。

(三原)
『欲望のコード』の修復の際に、いくつかスケッチを起こした。こちらがフラットな壁面に設置しているヴァージョン。いくつか想定した中で、おもしろそうだと思っているのは円柱状の空間の真ん中にサーチアームが設置されているヴァージョン。

『欲望のコード』の蠢く壁面のスケッチ
『欲望のコード』の蠢く壁面のスケッチ。フラットな壁面に設置された、オリジナル・ヴァージョンに準じたコンポジション。
『欲望のコード』の蠢く壁面のスケッチ
同じく『欲望のコード』の蠢く壁面のスケッチ。円柱状の空間を囲むように設置されるという、オリジナル・ヴァージョンとは大きく異なるコンポジション。

(白石)
このスケッチはいつ制作したんですか?

(三原)
昨年かな。

(古舘)
これは三上さんが考えたわけではないでしょ?

(三原)
そう、僕が勝手に考えた。

――『欲望のコード』の巡回対応について、三上さんの生前、三原さんと三上さんがコミュニケーションをとってきたからこそ、「こういうコンポジションは三上さんならOKだろう」という想像ができるということですよね。

(三原)
ここまでアグレッシヴな空間は提案されたことがないから半分遊んでるだけなんだけど...もし提案があったら自分はやってみたいなと思う。これがイキかどうかは何とも言えないな。

――円注のコンポジションはガイドライン上はOKなんですか?

(三原)
そもそもガイドラインというものがなくて。このコンポジションであれば赤外線が干渉しないから...

(古舘)
センサーのレンジであるとか分布比率であるとか、そういったテクニカルな面においては可能だと。

※18 「サーボ機構(サーボきこう, 追従機構, servo mechanism)は、物体の位置、方位、姿勢などを制御量として、目標値に追従するように自動で作動する仕組み。」(“サーボ機構”.ウィキペディア日本語版.参照2019-07-02.)

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