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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第2回(全3回)―修復・再制作の方法・方針と、アップデート・改変の判断に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 09 04

12. 巡回展示を繰り返すことで許容範囲を明らかにしていく

――三上さんの生前、『欲望のコード』を巡回展示した際、オリジナル・ヴァージョンと同じような環境が与えられなかった場合に、三上さんはどのような判断されていましたか。

(三原)
オリジナルの展示空間はYCAMのスタジオAという劇場機能を持つ大きな空間だったので、15x22x5mという作品スペースが入り込んでも余白が生まれる状況でした。当たり前ですが、同じ状況のスペースが用意されることはないので、先方と交渉を重ね、あくまで印象の変わらない微修正で済む空間を候補から探っていました。まずはオリジナルの基本形を基に僕が提案して、それを三上さんに判断をしてもらうという流れです。オリジナルと同じ条件を保持することがどうにも難しい場合には、蠢く壁面のサーボ・デバイスの配置間隔や個数変更などを検討しました。実際に都合上、サーボ・デバイスやサーチアームを減らしたこともありました。
またオリジナルでは完全暗転が可能なように壁面は全て黒で統一していたため、ホワイトキューブがベースの美術館に納めることに無理が生じる場合がありました。三上さんは壁面の黒色指定を行わない時もあり、壁色など仕様の変化を三上さんが気に入ることもありました。

スタジオA
スタジオA
撮影:勝村祐紀 写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]

――三上さん自身がNGとした項目もありましたか。

(三原)
生前、巡回を続ける過程でいくつかのNG項目が出てきました。最初期の巡回では3要素 ※19 のうち、蠢く壁面と複眼スクリーンのみ、またサーチアームのみで展示したことがありました。蠢く壁面と複眼スクリーンのみ展示したのは、ドイツで2010年に開催されたISEA(The International Symposium on Electronic Art) ※20 の『TRUST』展で、サーチアームのみ展示したのは同時期にウィーンで開催された『SPACE INVENTIONS』展です。これがとても狭い展示環境で、セットアップもYCAMスタッフのオンサイトサポート無かったため、全プロセスと展示にロスが大きくてオリジナルと体験がかけ離れていた。 こうした経験があったので、三上さんの判断で、ある特定の要素だけ展示するということはしないようになりました。

三原聡一郎
三原聡一郎

※19 『欲望のコード』は「蠢く壁面」「多視点を持った触覚的サーチアーム」「巡視する複眼スクリーン」の3要素から成る。詳細な作品概要は、山口情報芸術センター[YCAM]の「欲望のコード」紹介ページや、「欲望のコード」特設サイトのWORKSなど参照。

※20 「デジタルおよびエレクトロニックアートに関する最も重要なフェスティバルの1つです。正式名称はシンポジウムとなっていますが、作品展示やイベント等も充実しています。」(“[フェス] メディアアートキュレーターへの道”.DEPARTURE.参照2019-08-23.)

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