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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第3回(全3回)―遺し方に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 11 27

16. ノウハウの共有

(白石)
アーティスト自身が仕様書のようなものをちゃんと残しておく...つまり本人が再現性を担保するということを真面目にやろうと思ったら、すごい量の資料を残さないといけないため、生前のうちに記録できている方は少数かと思います。そこで、今日お話を聞いていて思ったのは、「べからず集」を残すだけでもいいのかもしれないということです。「これをやっちゃダメ」というNGだけ書いておいて、それ以外は改変・拡張OKとする。そうすることで再制作や再演が少しでもやりやすくなるのかなと。僕自身作家として活動していく中で、「これはダメ」というのは判断しやすいけど、「これがよいか」というのはやってみないとわからない部分が多分にある。もし、自分がいなくなったとして、一部改変や拡張をしながら、エッセンスをうまく引き継がれた新たな作品ができるのならばそれを見てみたいとも思います。

(三原)
アーティストが生きている間は「べからず集」でいけるかもしれないけど、ちょっと長い時間軸で考えると「その時代の当たり前」に次の時代の人は苦しむかもしれない。

(白石)
なるほど。

(古舘)
時代考証が必要になる。

(三原)
「ガラスが無くなっちゃってるかもしれない」とか。基本的なものがなくなっているかどうかの想定すらできないから。

――「これはよい」「これはダメだ」ということを判断するために、アーティストが生きているうちに再制作をしてみる必要はありますよね。

(古舘)
ここで改めてそもそも論になっちゃうけど、こういう作品たちをどういうふうに残していくのかっていうことについては、すでに取り組んでいる研究機関があるので、そういうところにある程度は任せちゃっていいかなと思いますけどね。僕らの経験の中で、ああかなこうかなという話はできるけど、ジェネラル(一般的)にできるできないの話になってくると...実際に研究機関の方でどのくらいノウハウがあるかというのはわからないですが。

(三原)
でも、そのノウハウがユニーク(同じようなものが他にあまり見られない)になっちゃうよね。

(古舘)
僕らが再制作に関わった作品は全部そうだよね。ただユニークであるにせよ、「あの作品ではこうしていた」というような事例を参照することで判断できる部分もある気はする。京都で『LOVERS』の修復・保存を行うにあたって京都市立芸大芸術資源研究センター ※6 (以下、芸資研)は海外でリサーチを行っている。そのリサーチの報告を聞きたかったんだけど、僕らにそういう共有はなく...「どのように『LOVERS』のアイデンティティを担保するか」とか「記録としてどういうものが残っていればいいのか」ということを僕は直接芸資研と一切話さずに修復を行って...。

(三原)
芸資研から高谷さんには報告があったんじゃない?

(古舘)
リサーチの結果については話してないと思う。「あの研究機関では、こういった作品はこういうふうに仕様書を作っていた」「それは『LOVERS』においてこういうふうに適応できる」みたいな、具体的な意見が研究者の人からほしかったんですよね。

(三原)
京都と同時期にMOMAでも修復をしていたんだよね。

(古舘)
そうそう。

(三原)
そんなエクステンション、双方の作業内容の視野を拡げてくれる何かがあったらいいね。

(古舘)
確かにね。高谷さんはMOMAでの修復の最終的な仕上がりを確認しに2回ほどMOMAを訪れている。だから高谷さんの中ではエクステンションはできていると思う。

左から古舘健、三原聡一郎、白石晃一
左から古舘健、三原聡一郎、白石晃一

※6 京都での『LOVERS』の修復・保存は、京都市立芸術大学 芸術資源研究センターが中心となって行った。

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