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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第3回(全3回)―遺し方に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 11 27

18. 判断基準、ディレクションのやり方、コミュニケーションの取り方の保存

――『欲望のコード』と『Eye-Tracking Informatics』の制作・再制作における、三上さんの判断基準やディレクションのやり方、コミュニケーションの取り方について、現在のメンバーは皆さんオリジナル・ヴァージョンを作った方々なので、ある程度はチーム内で共有できているし、その都度個々で判断することもできると思います。しかし村自体を継承していく場合、判断基準、ディレクションのやり方、コミュニケーションの取り方自体を保存する必要が出てきます。

(三原)
このプロジェクトをやっていたら自分が死んだ後のこととか考えたりするんだけど...それはなかなか難しいと思うな...。

(古舘)
ノリとかニュアンスとかね。

(三原)
できることと言えば、限りなく多くの資料を作っておくみたいなことかな...。さっきSketchUp ※8 で作った3Dのスケッチを見せたけど、部品の型番が全て記録してあるから、僕が死んでもそのパーツを買えば組み立てられるようになっている。そうすると空間把握能力が弱い人でも再制作できる。SketchUpが動作する環境さえあればまた書き直したりもできるし。
根拠を記すのが難しいのは金属の耐久性とか。「会期中にこのくらいの人がこのくらいの頻度で来るから、このくらいの金属の疲労があるだろう」「だからこのくらいの厚みが必要」みたいことの根拠は僕の経験値でしかない。それは僕の頭の中にありますよ(笑)。なぜその厚みになっているというのは図面を見てもわからないんだよね。本当に情報生命体のようなものをいかに共有するかだと思う。解はないけど、色々やってしかるべきなのかなとは思うな。

『欲望のコード』を2部屋で展開したヴァージョンのスケッチ。
『欲望のコード』を2部屋で展開したヴァージョンのスケッチ。

(古舘)
工学的に、ロジカルに割り出せたりしないの?

(三原)
計算はできると思うんだけど、でもそんなこといちいちやってたら大変やで。

――現状の体制では各役割における判断も、個々のメンバーに委ねているんですよね。

(三原)
この作品のソフトウェアとかビジュアルに関しては平川(紀道) ※9 さんに任せている。さっき言ったように、1人たりとも全体を完全に把握している人はいない。

(白石)
渡邉朋也 ※10 さんが『SEIKO MIKAMI 三上晴子 記録と記憶』の中で、「上手くコントロールしていたのが三上さんだった」 ※11 という書き方をされていましたけど...そういった部分が民間伝承的でおもしろいなと思いました。

(三原)
そう、上手くメディウムとして...。

(古舘)
全体を見ているのは作家本人だったわけだからね。

※8 直感的に3Dモデリングができる、パソコン用の3Dデザイン・ソフトウェア。

※9 『欲望のコード』再制作プロジェクトのメンバー。『欲望のコード』の修復/再制作のチーム体制と役割については第2章参照。

※10 『欲望のコード』再制作プロジェクトのメンバー。

※11 「一方で、各コラボレーターが他のコラボレーターの作業内容を知らない場合が多く、話を聞けば聞くほどそれぞれの成果が連動してひとつの作品を構成しているのがいささか不思議に思えるほどであった。ここに三上のディレクションの妙があるのだろうと思う。」(渡邉朋也[2019].三上晴子作品のそれから ―《欲望のコード》と《Eye-Tracking Informatics》.馬定延/渡邉朋也 編著『SEIKO MIKAMI 三上晴子 記録と記憶』 .NTT出版.218ページ.)

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