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アーカイヴと再制作

修復・再制作プロジェクトにエンジニアとして関わった3人による対談:第3回(全3回)―遺し方に関する8つの議論対談:古舘健×三原聡一郎×白石晃一

2019 11 27

21. 収蔵・再制作されることを意識して作品を作る

(古舘)
ここにいる3人はみんな作家としても活動していると思うんだけど、僕個人、一作家として自分の作品について考えれば、そもそも無理して作品を保存しておく必要がそんなにないんじゃないかとも思う。朽ちていくものは朽ちていき、忘れられるものは忘れられたらいい。批評的な意味での問題意識としてはわかる部分もあるし、美術館の制度的なところで修復・保存というのが重要なのはわかるんだけど、個人レベル、僕らのような、いってみれば土着で修復・保存をするっていうことが、そんなに行われる機会自体ない気はするんですよね。そういう意味では、厳密に修復・保存するっていうことは、美術館や研究機関にメインで動いてもらう。そして個人レベルで取り組む修復や保存については、さっき話したみたいに、「俺が観てみたいから作る」というような付き合い方が提案できるといい気がしますね。

(三原)
個人の規模では限られているよね。今困っているのは、たぶん「電球や蛍光灯が手に入らなくなったらどうするか」とか、そのレベルからだもんね。その時代のプロダクトとかスイッチとか。ソフトウェア以前の問題で「どうしよう」ってなってしまっているんだと思う。

(古舘)
電球も確かにやばいよね。ヨーロッパではもう白熱球作っていないから。

(三原)
蛍光灯もどうなるかわからないしね。そうなると松明(たいまつ)か...(笑)。

(白石)
制作者側も作品を残したいなら積極的になくならない材料を選んでいかなくてはいけないということですよね。

(古舘)
幻灯機とかだったら...

(三原)
『LOVERS』なら幻灯機でできそうじゃない?

(古舘)
あー!できそう(笑)。

(白石)
よりプリミティヴに(笑)。

(三原)
回転体で...

(古舘)
水車駆動ね!

(高嶋)
今話されている保存についての話題に関連して1つ伺いたいことがあります。國府さんの作品を巡る議論の中で、特に車や植物を使った作品では、そもそも美術館に保存されるということを前提に作っていなかったんじゃないかという意見を聞きます。美術館に自分の作品が収蔵されるということについて、三上さんはどのように考えていたのでしょうか。

(三原)
そのようなニュアンスの話はほとんど聞いたことがないけど、恐らくあまり考えていなかったんじゃないかな。前提にしていたら「蚊蜻蛉のようなものを飛ばしたい」とか言わないと思うんですよね ※18 。保存することに対してアンチになっていたとも思わないんだけど...今高嶋さんからの質問を聞いてびっくりしたのは、「ギャラリーとか美術館に収蔵される前提で作品を作る」という発想があるということ。そういう発想は僕にないからすごく驚いた。作家業というのが、そういう前提があって業として成り立っているのだとしたら、かなり自由が制限されると思った。そういう意味では、三上さんが美術館に収蔵されることを前提に作品を作っていたということはないだろうなと感じてます。

――美術家、映像ディレクターの山城大督さんは、これまでに4つのタイムベースド・メディア・インスタレーション作品を制作しています。その2作目である『HUMAN EMOTIONS』はサイトスペシフィック ※19 だということもあって完全な状態での再制作は不可能であり、つまり完全な状態で収蔵することができない作品といえます。作家本人にはそれに対する反省があったようで、森美術館で展示した3作目の作品『TALKING LIGHTS / トーキング・ライツ』では、「再制作しやすいことを意識して作った」と言っていました ※20 。作家としてしっかり美術のフィールドを意識している人は、現行の美術館システムを意識して作品を作っているように思います。

(三原)
それは本当にプロフェッショナルな姿勢だと思う。目標をもってトライしていることはすごい。さっき言ったように、僕は作品が生きれば「芸術じゃなくてもいい」と思っているので。そもそもの設定がないんですよね。

※18 詳細は第6章参照。

※19 「サイトスペシフィック・アート(英: Site-specific Art)とは、特定の場所に存在するために制作された美術作品および経過のことをさす。」(“サイトスペシフィック・アート”.ウィキペディア日本語版.参照2019-10-23.)

※20 「それ(再制作しやすさ)はめちゃくちゃ意識して作りましたね。やっぱり『HUMAN EMOTIONS』ではあまりにも再制作できないことをやってしまったなと思っていて...。」(中本真生 監修・編集・執筆・インタビュー[2018].“タイムベースド・メディア・インスタレーション『HUMAN EMOTIONS』の再制作・修復・保存に関する資料と議論 (全4回) ―『HUMAN EMOTIONS』とは何なのか 第2回:作品の定義、芸術的意図、作品において核となる要素を保存するためのインタビュー”.AMeeT.参照2019-10-23.)

PROFILE プロフィール

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古舘 健 | FURUDATE Kenアーティスト/ミュージシャン/エンジニア

サインウェーブ、電子的なパルス、シンプルなノイズ関数など技術的にミニマルな要素を用い、その特性を強調しつつ複雑な現象を作り出す作品をインスタレーションやライブパフォーマンスの形で発表する。個人の活動に加えて、2002年よりThe SINE WAVE ORCHESTRAを主宰。2006年より、エンジニア/コラボレーターとして他作家の舞台作品・インスタレーションなどに多く関わる。2013年よりDumb Typeメンバー。

Ken FURUDATE 公式サイト

The SINE WAVE ORCHESTRA 公式サイト

三原 聡一郎 | MIHARA Soichiroアーティスト

世界に対して開かれたシステムを提示し、音、泡、放射線、虹、微生物、苔、気流、土そして電子など、物質や現象の「芸術」への読みかえを試みている。2011年より、テクノロジーと社会の関係性を考察するために空白をテーマにしたプロジェクトを国内外で展開中。2013年より滞在制作として北極圏から熱帯雨林、軍事境界からバイオアートラボまで、芸術の中心から極限環境に至るまで、これまでに計8カ国11箇所を渡ってきた。
2018年秋、京都で企画した展覧会『空白より感得する』の展覧会アーカイブを複数展開中。

『空白より感得する』公式サイト

白石 晃一 | SHIRAISHI Koichiアーティスト

ファブラボ北加賀屋 共同設立者・美術家・京都造形芸術大学 専任講師。造形学修士(工芸・鋳金)・ファブアカデミー 修了。あらゆる人たちと共にプロジェクトを実践する場を求め、デジタルファブリケーションを使い誰もが共創できる市民工房、ファブラボ北加賀屋(2013〜)を共同設立。 近年はインターネットを使った知識・技術伝承システムの開発、共創活動の持続的組織構造の構築と実践、公共空間における芸術表現を実現する方法論とその影響について研究を行っている。

FabLab Kitakagaya

中本 真生 | NAKAMOTO MasakiUNGLOBAL STUDIO KYOTO

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。インタビュアー・編集を担当した再制作に関する記事に“悪魔のしるし『搬入プロジェクト』のオープン化に関するインタビュー”“タイムベースド・メディア・インスタレーション『HUMAN EMOTIONS』の再制作・修復・保存に関する資料と議論”などがある。

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