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ARCHIVES

アーカイヴと再制作

浮遊するアーカイブズとリポジトリ明貫紘子(キュレータ/アーカイブ研究/EizoWorkshop代表)

2021 04 21

3. 応答その1:オルタナティブなリポジトリ「Floating Archive Storage (FArS)」

このような問題意識に基づいて、2021年2月にアーカイブ・プロジェクト「Floating Archive Storage (FArS)」 ※6 のテストバージョンをオンライン上で公開した。FArSでは、行き場が定まっていない資料を「浮遊するアーカイブス」と呼び、それを保管するための第2の場所をオンライン空間に創出することを目的にしている。それを「浮遊する倉庫」ととらえ、しっかり管理されている公文書館や美術館の倉庫とは対照的に、可変的でオープンな保管庫について考察することもテーマである。プロジェクト・ロゴのデザインはアーカイバルな保管箱をモチーフにした。

Fig.8:FAsSのロゴ(デザイン:林洋介)

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Fig.9:アーカイブ・プロジェクト「浮遊するアーカイブズ倉庫:愛知県のメディア・アート」
『AICHI⇆ONLINE』より。同アーカイブサイト内では岩井俊雄「愛知芸術文化センター シンボル映像」(1992年)のウェブバージョンが公開された。
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Fig.10:資料専用のアーカイバルな保管箱(キヤノン・アートラボの資料)

FArSでは、資料のカタロギング(目録登録)およびパブリッシング(オンライン公開)のために、米国で開発されたオープン・ソフトウェア「Collective Access」を採用した。日本ではまだ利用実績がないソフトウェアだが、音声や映像などタイムベースド・メディアやボーンデジタルの資料整理に対応しているソフトとして注目され、New Museum Digital Archiveなど予算が少ない小規模な組織を中心に採用されている。今回のプロジェクトのために、エンジニアと共にソフトウェアの使い方を学び、サーバーを設定するところから始めた。今後、より幅広い資料を受け入れ、資料にアクセスしやすいインターフェイス・デザインを目指してリサーチと実践を続けていきたいと考えている。

今回公開したFArSは、現在のメディアアートを取り巻く資料不在の問題提起に重点を置いたテストバージョンであるため、網羅的に資料を公開するに至っていない。FArSは、愛知県で開催されたメディアアートの関連資料をデジタル化して公開することから始まった。ここで公開されている資料は大きく3種類で、出版物(展覧会カタログ)/エフェメラ(チラシ、ブローシャなど)/クリッピング(新聞記事やレビューなど)である。

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Fig.11:愛知県名古屋市で開催されたメディアアートのフェスティバル「名古屋国際ビエンナーレARTEC」(1989-1997)に関連する中日新聞の記事。中日新聞社は同フェスティバルをサポートした地元企業であった。
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Fig.12:各資料は拡大して閲覧できる。
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Fig.13:「名古屋国際ビエンナーレARTEC」のチラシ。カタログやチラシなどの資料は、関係者の森茂樹氏(元中日新聞社)にお借りした。第1回目(1985年)のチラシがなく、デジタル化できていない。

FArSの特徴は、まず、オリジナル資料の所在と持ち主が外部に分散している点、次に、複製を扱うデジタル・アーカイブである点、最後に、オンライン上で資料のカタロギングとパブリッシングをしている点である。つまり、FArS自身はオリジナル資料を保有せず、デジタル化に伴う現場は実空間にあるものの、資料の保管と管理、そして、公開のための場所はデジタル空間に存在する。一方で、現代社会ではデジタルメディアで対話し、デジタル資料のやりとりを行う以上、100年後の人々が過去を辿ろうとすれば、ボーン・デジタルデータのアーカイブを扱わざるを得ないことについてもっと想像すべきだろう。その未来に対して実験的に向き合う場として、メディアアートとその資料をめぐるFArSのような実践は有効だと考える。

※6 コロナ禍における文化活動の継続を目的とした、愛知県主催オンライン・アートプロジェクト「AICHI⇆ONLINE」(2021年2月1日から3月21日)の一環で実施された。会期終了後もFArSは継続予定。

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