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ARCHIVES

アーカイヴと再制作

建築デジタル・アーカイブの可能性寄稿: 中原まり(米国議会図書館司書、建築アーキヴィスト)

2014 06 11

デジタル資料やデジタル・アーカイブが語られるようになってからかなりの年月が過ぎた。電子技術の進歩とともに、デジタル・アーカイブにも様々な可能性が与えられるようになってきた。建築資料の特性と社会的意義を考えた上で、今後建築デジタル・アーカイブは何を目標に発展していくべきだろうか。

建築アーカイブ関係者の間で、建築資料のデジタル化やデジタル・アーカイブの構築が話題に上るようになってから早20余年が経つ。当時デジタル資料はまだ余り普及しておらず、アーキヴィストたちは手探り状態。期待感と安堵感に揺れていた。長期保存というアーカイブのミッションを達成するためには、大容量の建築デジタル資料を新技術に対応しながら逐次フォーマット変換する必要があるのだが、その可不可が切実な疑問となり、デジタル化への移行に関し賛否両論、議論が飛び交った(※1)。アーカイブ側の準備が不十分な一方で、建築設計側は建築資料製作の媒体をアナログからデジタルへと急速に切り変え、「ボーン・デジタル(Born Digital)(※2)」の時代が到来した。この波に押されて、建築アーカイブは、従来のアナログ資料に加え、それらをデジタル変換した資料、更にボーン・デジタルの資料、それらすべての保存を余儀なくされることになった。

私が勤務する米国議会図書館の所蔵品は1億5千万点を越え、それらの中には、映像資料や音楽関係資料、地図や写真、そして建築資料など、書籍以外の特別な形態を持つ資料も含まれている。米国議会図書館では、1990年代半ばごろから所蔵品のデジタル化が開始された。デジタル化の第一優先資料には、言語の壁を超えて多くの人に利用される可能性が高い写真資料などが採択されたようだ。その後所蔵品のデジタル化は継続的に進行し、徐々に書籍もデジタル化されてきている。HathiTrust に掲載されている米国議会図書館所蔵の書籍数は、2014年5月時点で107,929点。そのうち100,835点については、書誌情報も公開されている。一方で、米国議会図書館の巨大な既存資料点数や、日々5千点というスピードで追加されていく資料、そして版権規約などを鑑みると、米国議会図書館の所蔵品すべてがデジタル化されるとは考えにくい。来館者の中には、所蔵品が既にすべてデジタル化されていると思い込んでいる人も少なからず居て、そういう利用者に遭遇すればするほど、今後電子ブックや電子データベースなどのデジタル資料が主流となり、またそれらをどこからでも容易に利用できる環境が望まれていることをひしひしと感じさせられる。

※1)建築アーキヴィストによるデジタル化に関する発表論文は、International Confederation of Architectural Museumのウェッブサイト を介して検索可能である。

※2)アナログ資料をデジタルに変換するのではなく、初めからデジタル資料として作成されたもの。


中原まり NAKAHARA Mari

中原まり NAKAHARA Mari

1994年東京都立大学大学院博士課程修了。1994-2000年同大学院助手。1996-1997年フルブライト若手研究員並びに文化庁派遣芸術家在外研修員として、コロンビア大学建築学部アーカイブ並びにニューヨーク近代美術館建築・美術部にて建築アーカイブ研修を行う。2000-2003年ニューヨーク居住。コロンビア大学ドナルド・キーン日本文化センター、ニューヨーク公共図書館、スカイスクレーパー・ミュージアム等に勤務。2003年ワシントンDCへ転居。オクタゴン美術館(米国建築家協会姉妹組織)の建築アーキヴィストを経て、2007年から米国議会図書館司書を務める。2009年Catholic University of America, 図書館情報学修士課程修了。

米国議会図書館
http://www.loc.gov/


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