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ARCHIVES

アーカイヴと再制作

世界の博物館をデジタルアーカイブする
─どのようなデジタル化が求められているのか─赤間 亮(立命館大学文学部教授)

2011 05 30

デジタル・アーカイブという言葉が1990年代中ごろに日本で生まれて、現在では世界 に通用するようになったが、次第に言葉が一人歩きして、意味が膨らんでいっている ようである。同じデジタル・アーカイブという言葉を使いながら、内実は大きく異な る場面に遭遇することが頻繁になり、混乱のもととなってきた。デジタルアーカイブ をめぐる経緯・歴史と現在の潮流について、立命館大学・赤間亮教授が検証する。

1. デジタル・ヒューマニティーズ(DH)という潮流

立命館大学アート・リサーチセンター

立命館大学アート・リサーチセンター
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/

筆者のように大学を活動の場としている人間にとって、世俗の動向から隔離された生活も可能である。いったん、研究の場に納まると、特に文学部のような学部では、仙人のようなスタイルをとる学者もいる。emailを使わない同僚がいたとしても、それが甚だ迷惑なことでありながらも、その人の研究が取り分けて内容が劣っているわけでもなく、むしろ彼らの方が新たな成果を次々と生んでいるという時期もあったように思い出される。
いつの間にか、そうした仙人のような研究生活を目指す若手研究者は姿を消した。デジタル環境、ネットワーク環境が日常生活の中に定着し、この部分では、おそらく後退することなど考えられない。この環境をないものと考え、対立するものとする時代は完全に終焉したのである。人文科学の領域でも知的生産を志す人間にとって、これらの環境とどのように向き合っていくのか、どのように自らの研究と親和性を保っていくのか、自らの問題として常に問い続ける必要があると研究者たちは感じている。この「潮流」を我々は、デジタル・ヒューマニティーズと呼んでおり、この言葉は、日本ではようやく市民権を得たかの段階であるが、既に欧米では定着した感がある。

アメリカの首都ワシントンに、スミソニアン博物館という世界最大規模のMuseum群がある。そこには、日本・東アジア関連のMuseumが2館もあり、筆者らはその1つ、フリア美術館と現在共同研究を開始しつつあり、訪問する機会が数回あった。情報技術の最も進んだアメリカのMuseumは、資金的にも潤沢であり、どこを訪れてもその最新鋭の機器や環境に驚かされるが、フリア美術館では、所蔵品のデジタル公開をデジタル・ヒューマニティーズの教育プログラムを持っている大学との連携で進めようとしているという。デジタル公開を単に文化財デジタル化の専門業者に丸投げする感覚はもはやないという。

そして、この流れの上に立って日本でデジタル・ヒューマニティーズの拠点として展開する立命館大学との連携が発想されたわけである。立命館大学アート・リサーチセンターにおいて展開するプログラムは「日本文化デジタル・ヒューマニティーズ」といい、人文科学の研究にデジタル技術を取り込むという方法を実践してきている。
本稿では、このデジタル・ヒューマニティーズをバックグラウンドにおいて、記述していくことになるであろう。


赤間 亮 Ryo Akama

赤間 亮 Ryo Akama

立命館大学文学部教授、文部科学省「グローバルCOEプログラム」では、日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点リーダーを務める。出版メディア論、浮世絵・近世文学、演劇・映像の研究が専門。なかでも、古典芸能の文化史・文学的な役割を舞台映像・文献両面から研究。古典演劇の世界をいかに保存し、次世代に伝えていくかを問う。文化の伝達の手段として出版史、ネットワークの応用についても力を入れる。最近は、欧米の博物館に所蔵される日本の文化財をデジタル化し、その活用を軸とした研究資源共有化に力を注いでいる。

立命館大学アート・リサーチセンター

http://www.arc.ritsumei.ac.jp/


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