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アーカイヴと再制作

文化とコンピューティング
-日本の人文学研究とコンピュータ利用の課題-當山日出夫(立命館大学グローバルCOE 日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点 客員研究員)

2010 03 05

人文学研究においてコンピュータの登場は何をもたらしたのだろうか。文化とコンピュータはどのような関係にあるのだろうか。その最先端の事例あるいは根本的な問題点を、最近開催されたいくつかのシンポジウムや研究会の活動から考える。

1. 文化とコンピューティング国際会議

研究者が個人のレベルで使用するパーソナルコンピュータ(パソコン)が登場してからでも、20年以上の年月がたつ。一世代が経過している。その間、人文学研究、そして、その研究対象であるとことの「文化」は、コンピュータによってどのような影響をこうむってきているか(あるいは、いないのか)、これが、いわゆる「WEB2.0」といわれる新しいコンピュータ社会のなかで問われている。

2010年2月22・23日と、京都大学で「第11回情報学シンポジウム」が開催された(情報学研究科主催、於百周年時計台記念館)。そのテーマは「文化とコンピューティング」であった。まず、このことの意義を確認しておきたいと思う。えてして理工系の発想にながれがちな情報学の立場から、あえて「文化」に正面からとりくんだこころみとして、きわめて高く評価できるものである。

シンポジウムは、2日間にわたって開催された。その特徴としては、国際性と多様性にあるといえよう。

まず、第一に、国際会議と称するようにきわめて国際色ゆたかな会議であったことがある。以下に述べるように、このシンポジウムは、複数の研究会などを並行してすすめる形式でおこなわれた。その総体を俯瞰するならば、欧米のみならず、アジアなどふくめて、多文化・多言語を視野にいれた、国際的なものであったこことが重要な意味をもっている。

第二には、中軸となるシンポジウムの他に、同時並行で、多様な研究会などが開催されたことである。そのプログラムを概略するならば、おおむね以下のようになる。

中軸として、情報学シンポジウム「文化とコンピューティング」が二日間にわたって開催された。その他にも、次にしめすような多彩なもよおしが同時に並行しておこなわれた。

  • 特別企画:パネル「人文科学の新展開:立命館大学におけるデジタル
  • ヒューマニティーズ」
  • 特別企画:パネル「京都の職人
  • 神主とのカルチュラルコンピューティング」
  • 情報処理学会 人文科学とコンピュータ研究会「日本における人文科学とコンピュータ研究の現状と課題」
  • 電子情報通信学会 人工知能と知識処理
  • 異文化コラボレーション合同研究会「言語グリッドと異文化コラボレーション」特集
  • SAT 大蔵経テキストデータベース研究会 国際ワークショップ「仏教学学術知識基盤の形成」
  • 多文化共生センターきょうと「医療の多言語支援」
  • 京都仏教文化フォーラム「仏教文化とコンピューティング」
  • International Workshop on Agents in Cultural Context
  • APAN eCulture Workshop "The scope and Perspectives of APAN eCulture WG"
  • 展示(※詳細は省略)
  • レセプション(呈茶席)
  • エクスカーション「島原角屋」

このように多彩な行事や展示が、二日間にわたり集中的に開催されたのである。

これだけの行事が同時並行で進められると、とても一人の人間が全部をカバーすることはできない。ここは、筆者が年来より関心のある、人文学研究におけるコンピュータ利用の観点から、出席することのできたいくつかのシンポジウム・パネル・研究会について、言及するにとどめることをお許しねがいたい。

また、これと並行してであるが、国立国会図書館において、テーマとして関連するシンポジウムなどが相次いで開催されている。たとえば、
・ディジタル情報資源の長期保存とディジタルアーカイブの長期利用に関する国際シンポジウム(2月19日)
・デジタル情報資源ラウンドテーブル発足記念講演会「知的資産を繋ぐ―ヨーロッパの実践」(3月2日)
が開催されている。

これらについてもふれながら、日本における人文学研究とコンピュータ利用の抱える問題点について、以下、いささかの私見をのべることとしたい。

なお、「文化とコンピューティング」の全体については、次のURLをご参照ねがいたい。
http://www.ai.soc.i.kyoto-u.ac.jp/culture2010/


當山日出夫 TOUYAMA Hideo

當山日出夫 TOUYAMA Hideo

1955年、京都生。慶應義塾大学文学部(国文学専攻)。専門は、日本語学 (日本語の歴史的研究)。最近の研究テーマは、主に文字についてのこと。人文学研究でのコンピュータ利用に、初期のパソコンの時代からかかわる。情報処理学会の人文科学とコンピュータ研究会運営委員など。文字研究会代表。J ADS(アート・ドキュメンテーション学会)は創立当初の研究会のときからの会員。個人ブログ「やまもも書斎記」では、主に人文情報学をテーマにあつかっている。

個人ブログ「やまもも書斎記」

http://yamamomo.asablo.jp/blog/


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