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プログラミングを用いた映像制作のコツ 第3回 ~空間制作から考える~ 後半文:神田 竜/Kezzardrix(プログラマ/アーティスト)

2019 12 24

コンサート映像やVJなど、多方面で注目を集めている神田 竜/Kezzardrix氏に、映像制作のコツに関する記事をご寄稿いただく本連載。今回は「音楽に合わせる映像を作る際に、空間制作から映像を考えていく」という視点から、前後半に分けて執筆していただく。本記事のために制作した実践的なサンプルプロジェクトを例に、丁寧に解説していただいており、映像制作者にとって参考になることはもちろん、「プログラミングにおけるクリエイティビティとは何か」を考えるためのヒントとしても意義のある内容となっている。

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本稿はこちらの記事の後半である。今回は実践的な内容として、筆者が定番だと思う空間のパタンを紹介する。次に筆者が実際のコンサート案件で行ったアプローチを、サンプルファイルと共に紹介する。筆者は主にHoudiniとTouchDesigner(以下、TD)を使って制作している。本稿で紹介するサンプルもHoudiniとTDを組み合わせて制作したものだ。紙面の関係上、各ソフトの詳細な使い方は紹介しないことを了承いただきたい ※1

空間のパタン

以前、映像の中で頻出するものをパタンとして抽出し再利用する、というアプローチを紹介した ※2 。同様に、空間制作にもいくつかの再利用可能なパタンがある。ここで筆者が思う定番のパタンをいくつか紹介する。

トンネル

VJで動画検索をしてみる。トンネルのようなところを進む素材がいくつも見つかる。
トンネルは奥に進んでいく、というシンプルで力強いベクトルを持っているから使いやすい。手前に戻ったり、カメラをティルト/パンすることで左右や上下のベクトルに変えることも可能だ。
反面、トンネルの表現は非常によく見られる。そのため、あまり使い過ぎると陳腐な印象を与えてしまいかねない。空間設計という観点から考えた場合、トンネルの外側がどうなっているか、など外部に視点を持つと発展がさせやすいように思う。

道/パス

トンネルと同じく、道路上をカメラが移動していく、という表現も定番である。こちらもトンネルと同じ奥に進むベクトルが強いが、道を曲がりくねらせて迷路のようにするなど、工夫出来る幅が広い。トンネルは多くの場合、カメラがトンネル内部にいるため、上下左右の方向が無くなりがちだが、道の場合は地面があり、空があり、周りに構造物を置くことも可能なため、バリエーションが作りやすい。トンネルよりもルールと制約が強い分、発想の発展が容易である。もちろん、その分の工数は増える。今回の作例ではこちらを使う。

宇宙に浮かんだ構造物

『Gants Graph』 ※3 に代表されるように、宇宙空間のような場所に謎の構造物が浮いている、という表現も定番の一つである。こちらは総じて背景が黒になるためクラブでのVJと相性が良い ※4
前半記事でも記述したように、かっこいい構造物を一つ置く、というのはジェネ系で多く試みられている表現だが、発展が難しい場合がある。DCCツール ※5 を使って、構造物の周りに何があるか、構造物をどういう角度で切りとればベクトルが作れるか、といった設計を最初におこなうことで、発展させやすくなる。こちらも次章で作例を載せる。

部屋

前半記事でのHEXPIXELSの例のように、クラブやライブハウスをモデリングする、もしくは簡易的に部屋の内部にいる、といった空間設計をする。地面と壁と天井はルールと制約になる。天井や壁がギザギザすればオーディオリアクティブ ※6 的な表現になるし、床や壁を這いずり回るクリーチャーのようなものも出しやすい。天井や壁の一部を壊してそこから何かが飛び込んでくる、カメラが部屋の外に飛び出して部屋外の空間を見せる、など部屋があることによって可能になる表現が多々ある。

テライン

地形である。ジェネ系がまずやる表現として、ノイズをXZ平面グリッドのY軸方向に加算しうねうねした地面を作る、というのがある。ノイズだけでなく、FFTの解析結果 ※7 やセンサから取れた時系列データをうねうねのソースにするなど汎用性も高い。

TDで1分で出来るテライン
TDで1分で出来るテライン

フォトリアルな地形を作る際も基本は同じで、複数のノイズ関数をかけ合わせる。最近ではHoudiniにテライン専用のSOP ※8 が登場したり、テラインを生成する専用のノードベースのアプリケーションがあるなど ※9 、リアルな地形の生成も個人で可能だ。
テラインは建築物や人物、植物等と組み合わせることで物体や距離のスケール感を表現できる。beepleに代表されるdaily rendering ※10 のプロジェクトでも、リアルスケールで作った地形と建物と人間を置くことで絵を成立させるアプローチがよく見られる。

※1 筆者の組んだノードはかなり汚いがそちらも了承いただきたい。

※2 神田 竜/Kezzardrix[2018].“プログラミングを用いた映像制作のコツ 第2回 ~コンポジションによる絵作り~”.AMeeT.2019-12-20参照.

※3 イギリスのエレクトロニカ・ユニットAutechreによる楽曲(2002年リリース)。PVは映像作家のAlex Rutterfordが制作。

※4 クラブやライブハウスは暗い空間であることが多いので、観客を音楽に集中させるため、映像が眩し過ぎないためにも、黒背景の映像の方が都合が良いことが多い。

※5 Digital Content Creationの略。ここではMaya、Houdini、Blenderなどモデリングからレンダリングまで統合的に作業できるツールを指す。

※6 音に反応して動く映像。音量や周波数など、何かしらの解析結果を使うことが多い。

※7 高速フーリエ変換。音声信号を周波数領域に変換する際に使われる。解析結果をテラインの変形に利用することで、周波数を可視化した表現が可能になる。

※8 Surface Operatorの通称。HoudiniやTDで使われる用語。主に頂点座標やポリゴンの加工など、モデリング領域で使用する機能を持ったノード群の相称。

※9 QuadSpinnerが2018年にリリースした Gaea

※10 近年、SNSに定期的にCGを作ってアップする個人活動が散見されている。言葉としては、どこかで見かけた物なので、一般的な用語ではないかもしれない。ここではそれらの活動の総称として書いた。

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