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KYOTO STEAM-世界文化交流祭- プロデューサーに聞く

2020 01 16

文化庁が2021年度中に全面的に移転するなど、文化芸術の拠点としての「京都」に期待が集まっている。2020年春には、京都発の新たなフェスティバル「KYOTO STEAM-世界文化交流祭- 2020」が開催され、アートとサイエンス・テクノロジーをテーマとした企画を京都から発信する。京都が目指す都市像とは? なぜ、アートとサイエンス・テクノロジーに着目するのか? 同フェスティバルのプロデューサーで、ロームシアター京都館長の平竹耕三さんに話を伺った。

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聞き手:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)
編集・撮影:杉谷紗香(piknik)

1. 先端科学・技術・芸術を通して“未来”を耕し、育む

――まず、「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-」の概要について伺えますでしょうか。

「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-(以下、KYOTO STEAM)」のタイトルにあるSTEAM(スティーム)は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)という、5つの単語の頭文字を組み合わせた言葉です。
京都には、1200年を超える歴史と伝統によって培われ、継承されてきた文化芸術の「知」と「感性」の蓄積があります。そして、大学を中心に、科学・技術の研究も盛んに行われています。さらに京都には、「京都賞」という科学や技術、思想・芸術の分野に大きく貢献した方々に贈られる日本発の国際賞があり、先端技術部門、基礎科学部門、思想・芸術部門の3部門を通して、人類の未来への願いを先駆的に示してきています。
そんな中、京都市では「KYOTO CULTIVATES」という基本理念を掲げ、さまざまな事業を行っており、「KYOTO STEAM」はこの事業の一つとして展開しています。「CULTIVATE(カルティベート)」は「耕す、育む、磨く」という意味をもつ英単語ですが、まさに、京都という土壌でアートとサイエンス・テクノロジーを融合させることで、未来に向けて耕し、育んでいくことによって、未来に希望がもてる社会を構想し、発信していこう!という取組です。

「KYOTO STEAM―世界文化交流祭―2020」メーンビジュアル
「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-2020」メーンビジュアル

――1回で終わりではなく、未来に向かって続いていくプロジェクトなんですね。「STEAM」という視点は興味深いです。具体的にどのような企画が予定されているのでしょうか?

「KYOTO STEAM」は、定期定常開催を見据えたビエンナーレ形式のフェスティバルとして今後も実施していく予定で、2020年3月に第一回フェスティバルを開催します。会期中の3月21日には、京都市美術館が「京都市京セラ美術館」としてリニューアルオープンし、館内では「KYOTO STEAM」のプログラムの一つ、「STEAM THINKING ―未来を創るアート 京都からの挑戦 国際アートコンペティション スタートアップ展(以下、スタートアップ展)」が行われます。2021年から「KYOTO STEAM」では、アーティストと企業等のコラボレーション作品を公募するという、日本でも類を見ない国際的なアートコンペティションを開催しますが、今回の展覧会はそのスタートアップと位置づけ、新進気鋭のアーティストと企業・研究機関のコラボレーション作品を展示します。
さらに、文化芸術事業だけでなく、芸産学公連携による社会変革のための人材育成事業や、STEAMの視点で多分野の融合を促進するネットワーク構築事業も同時に展開し、3つの事業が段階的に成長して、広がって行くことを期待しています。

2020年3月21日にリニューアルオープンする京都市京セラ美術館
2020年3月21日にリニューアルオープンする京都市京セラ美術館

――メイン会場となる岡崎エリアは、ここ数年のアップデートやにぎわい創出で、過去の遺産をそのまま使うのではなく、新しい創造をしていくエリアになった、という認識が定着したように感じています。その点では、美術館がリニューアルオープンし、「KYOTO STEAM」が開催される2020年3月で、岡崎地域のアップデートはひとまず完成するのでしょうか?

そうですね。ご存知のように、794年に平安京が誕生して、その1100年後、1895年に「第4回内国勧業博覧会」が建都1100年記念事業として岡崎公園で開催されました。それまでの岡崎は、本当に何もない場所でしたが、首都が東京に移って危機的な状況にあった1895年、博覧会を機に平安神宮が創建され、琵琶湖疎水の完成や市街電車の運行など、近代化を牽引していく場所となりました。東京に対抗するのではなく、世界の中で自分たちの良さをアピールして存在感を高めていくには、そのような背景のある岡崎は、今日でもとてもふさわしい場所だと考えています。もうおわかりのように、岡崎地域のアップデートはひとまず美術館で終わりですが、時代に応じて役割を求められていく場所だと思います。

――歴史的な経緯が、岡崎という地域の発信力につながっている、と聞くと、ここで実施される理由に納得できます。「KYOTO STEAM」のプログラムを見ると、一帯にあるさまざまな文化発信拠点を効果的に使う構成になっていますね。

せっかく京都という場所で実施するのですから、他地域の芸術祭とは一味違うことをしていきたいと考えています。KYOTO STEAMに協力いただいている施設や団体の通常業務とタイアップすることで、従来のプログラムに“STEAM”の観点をプラスして、それぞれの施設にとってもメリットや価値のある取組にしたいですね。
たとえば京都市動物園では、「アート✕サイエンス IN 京都市動物園 アートで感じる?チンパンジーの気持ち」と題したプログラムを期間中に展開します。チンパンジーや来園者の動きによって変化するインタラクティブな映像作品を制作・展示して、アートがチンパンジーやヒトに与える影響を検証するというものです。

――通常業務とうまくタイアップすることで、時間をかけてしっかり取り組んでいけるのは、すばらしいことですね。そのほかにも、数多くの施設と結びついて一緒にやっていかれるんですね。

やはり、いろいろなセクターの方々と一緒に進めていかないとできないこともたくさんありますし、最初に申し上げましたように、人材育成やネットワーク構築という目的も、この事業の柱になっています。たとえばアーティストだけじゃなくてアートコーディネーターも、サイエンティストだけでなくサイエンスコミュニケーターも……というように、いろいろな人たちが育っていくことがこの事業の一つの大きな目的ですね。
人材育成については継続性が必要なので、いろいろなところに関与していただけたらいいなと思っています。そのほかにもセミナーやワークショップなど、「KYOTO STEAM」を機に取り組んだことが、今後も残っていくものになるとうれしいですね。

――18年ぶりに新作を発表するダムタイプの公演にも注目が集まっていますね。

京都で「アート×サイエンス・テクノロジー」というテーマを持ったフェスティバルを開催しようと考えたときに、やはり、ダムタイプは外すことができませんでした。ダムタイプには2年がかりで新作を作ってもらっていて、2019年3月の「KYOTO STEAM -世界文化交流祭- prologue」の際には「ダムタイプ 新作ワークインプログレス 2019」と題した公演を行なったのですが、そのときから今年の公演に大きな期待を寄せてもらっていると感じています。
ダムタイプ以外にも、「古典文学×伝統芸能×新技術 新猿楽記~cirque de kyoto~」という舞台公演を行います。こちらは平安時代に藤原明衡(ふじわらのあきひら)が著した『新猿楽記』という書物に着想を得て作られるパフォーマンス作品です。『新猿楽記』の中には、平安時代の京都の人たちが触れた舞踊、歌謡、人形劇、奇術といった色々な芸能が書かれているのですが、「古典文学×伝統芸能×新技術 新猿楽記~cirque de kyoto~」は、それと同じく、様々なジャンルの芸能が交差する舞台作品になります。
また、フェスティバル期間中には、「食」をテーマに、大人から子どもまで楽しめるワークショップやシンポジウムを実施する「アート×フードマーケット」なども開催します。

Dumb Type, Voyage Photo by Kazuo Fukunaga
ダムタイプ 新作パフォーマンス『2020』通し稽古からの抜粋
撮影:井上 嘉和
「古典文学×伝統芸能×新技術 新猿楽記~cirque de kyoto~」2019年のワークインプログレスの様子
「古典文学×伝統芸能×新技術 新猿楽記~cirque de kyoto~」2019年のワークインプログレスの様子
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