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KYOTO STEAM 特集「国際アートコンペティション スタートアップ展」第4回:斬新な発想で生み出された最新の西陣織で、自然現象がもつ“美しさ”を魅せるインタビュー:鈴木太朗(メディア・アーティスト)、福岡裕典(有限会社フクオカ機業)

2020 02 13

2020年3~4月に第1回が開催される、アート×サイエンス・テクノロジーをテーマにした文化・芸術の祭典「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-」。同フェスティバルでは、京都市内複数会場にて11プログラムが実施される予定。AMeeTでは、その中から新進気鋭のアーティストと企業・研究機関のコラボレーションにより制作した作品を展覧する「国際アートコンペティション スタートアップ展」に注目し、全7コラボレーションのインタビュー記事を連載する。第4弾のインタビューは、メディア・アーティストの鈴木太朗さんと、先端技術を用いた西陣織を提案する有限会社フクオカ機業の福岡裕典さんに話を伺った。

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インタビュアー・編集:杉谷紗香(piknik)
取材日:2020年1月7日(火)

1. 透明チューブで伝統的な西陣織を織る!?

――鈴木さんは、今回のスタートアップ展のプレイベントとして2019年3月に実施された「STEAM THINKING -未来を創るアート京都からの挑戦 アートコンペティション・プレビュー」において、招待作家として作品を発表されています。その時に発表されたのが、フクオカ機業とのコラボレーションによるコンセプト作品『水を織る―西陣織の新たなる表現―』でした。今年の展示作品はフクオカ機業との2年目のコラボレーションの成果となりますが、まずは2019年に発表された第一弾の作品について伺えますか?

(鈴木)
『水を織る―西陣織の新たなる表現―』のアイデアを思いついたのは、フクオカ機業の福岡裕典さんとの打ち合わせで、福岡さんが「西陣織とは“技術”のことで、私のところでは織れないものは無いですよ」とおっしゃったこと。ものすごく高い技術力をもっておられるんだなと驚いたんですが、それを受けて、「水も織れますか?」と提案したことがきっかけですね。
私自身はこれまで、水や風、光といった自然現象を取り込んだ作品を数多く発表していますが、もしも、チューブを使って西陣織が織れるなら、チューブの中に水を通すことで、これまでにない表現ができるのでは?と思ったんです。

Liquidscape / Atelier OMOYA
Liquidscape / Atelier OMOYA
WATER LOGO / Atelier OMOYA + NIPPON DESIGN CENTER
WATER LOGO / Atelier OMOYA + NIPPON DESIGN CENTER

――「チューブを織る」という着想を聞いて、福岡さんは最初どのように感じましたか?

(福岡)
我々にとっても挑戦だな、と思いました。ですが、鈴木さんのアイデアに触発されて、新たな技術が生まれるかもしれないと感じ、初心に戻って一からやってみよう!と決断しました。確かに、何でも織れる高い技術はもっているんですが、繊維糸以外の素材を織った実績はそれほど多くありません。たとえば、光ファイバーを織ったことはこれまでにもありましたが、チューブを織るのは初めて。
糸とは違って、チューブの場合は“管”なので中に液体が流れますよね。チューブのための織り方そのものを編み出さないといけません。そこで、このコラボレーションのために専属の職人を一人付けて、従業員みんなでアイデアを出しながら、少しずつチューブを織る方法を探っていきました。

――特に苦労した点は、どのようなことでしょうか?

(鈴木)
一番大変だったのは、「作り方そのものを一から作る」必要があったことですね。『水を織る』という着想を元に、具体的にどのような作品を作るかを検討したとき、水をどのような技術で流すべきか、素材は何を使うべきか、といったところから福岡さんと一緒に議論を重ねていきました。
最終的に作品『水を織る』として公開したのは、「伝統的な西陣織の形式を利用して2つの柄を織り、生地に織り込んだ透明なチューブに、色水を流して伝統柄を浮かび上がらせる」というもの。青色の水が流れると青海波柄が浮かび上がり、徐々に消えていくと同時に橙色の水が流れて、今度は亀甲柄が浮かび上がっては消えていく…という構造の作品です。お互いにアイデアをぶつけて実現可能かどうかをその都度、探っていったのですが、制作はトライ&エラーの連続で、なかなか容易には進みませんでした。

(福岡)
そうですね。一つ目の大きなハードルは、先ほども申し上げたように、チューブの織り方を新たに作ること。西陣織では、タテ糸とヨコ糸の組み合わせで柄を織り上げていくのですが、『水を織る』の制作ではツヤのある白いポリエステルの糸をタテ糸に、透明なチューブをヨコ糸にして、1m幅まで織れる織機で「手織り」しました。
西陣織らしい柄を織物生地としてきれいに見せつつも、チューブの機能は保てるように、糸のテンションや間隔を整える調整は、職人の指先の繊細な感覚が頼りで、機械織りではできないことでした。チューブを潰さずに、織物生地としてのクオリティもしっかり高めながら織るために、かなりの試行錯誤を重ねましたね。

織機と技術力について解説する、フクオカ機業代表取締役の福岡裕典さん。
織機と技術力について解説する、フクオカ機業代表取締役の福岡裕典さん。
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