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KYOTO STEAM 特集「国際アートコンペティション スタートアップ展」第4回:斬新な発想で生み出された最新の西陣織で、自然現象がもつ“美しさ”を魅せるインタビュー:鈴木太朗(メディア・アーティスト)、福岡裕典(有限会社フクオカ機業)

2020 02 13

2. 水が流れると柄が変わる西陣織

――伝統柄を表示させるためのシステム開発を鈴木さんが担当されたそうですが、詳しく教えていただけますでしょうか?

(鈴木)
織物生地を織る作業と同時進行で、私の方で試行錯誤していたのは、チューブに通す色水を注水・排水するための構造や、それらを制御するためのコンピュータプログラムの開発。構造開発で問題が出てくると、解決のためには福岡さんのほうで調整をしてもらう必要がありました。第一弾の『水を織る』の織物生地は60cm✕60cmの正方形で、ヨコ糸にする透明チューブの太さは2.5mmとかなり細いものを使用したため、織る作業も大変だったと思います。

(福岡)
ちゃんと織物生地として美しく仕上げるために、柄のデザインからやりなおしたこともありましたね。たとえば、チューブとチューブの間を詰めると柄の解像度が上がって、柄がしっかり見えるようになるんですが、そうするとその変更が水のコントロールシステムにも影響を与えてしまって。でもお互いの意志としては解像度を上げていきたい。制作に使ったチューブは通常の業務では取り扱うことのないほどの太さだったため、職人にとっても未知の経験ばかり。公開ギリギリまで調整を重ねて、ようやく公開にたどりつきました。

(鈴木)
公開前日にギリギリで完成しましたね。設営中もホームセンターに駆け込んで調整したり……。試行錯誤が大変だった分、より思い入れの強い作品となりました。
フクオカ機業がこれまで培ってきた高い技術力や、時代に先駆けた開発力があったからこそ、自分自身がこれまでの制作でも扱ってきた「水」を用いて、自分の中にあった着想を実現することができたんじゃないかと、振り返ってみて思います。企業とアーティストそれぞれが、コラボレーションを通してお互いに触発しあうことで、これまでにない新しい発想や技術を得ることができるのは、大きなメリットですよね。

鈴木太朗+フクオカ機業『水を織る―西陣織の新たなる表現―』作品紹介動画(YouTubeより)
https://youtu.be/yPS71_wi0no
鈴木太朗+フクオカ機業『水を織る―西陣織の新たなる表現―』作品紹介動画(YouTubeより)

――今回のスタートアップ展では、第二弾となるコラボレーションを展開されるそうですね。どんな表現に挑戦されるのでしょうか?

(鈴木)
『水を織る』第一弾をパワーアップさせた作品制作に、2019年の夏からチャレンジしていて、3つの大きなアップデートを予定しています。1つ目の変化は、織物生地のサイズです。第一弾では表現面は60cm正方でしたが、今回は幅80cm✕縦170cmとかなり大きくなる予定です。

(福岡)
このコラボレーションで使う織機が1m織のため、最大値に挑んでいます。前回よりも幅が広くなり、長さも約3倍になることで、糸のテンションや柄の見え方などが変わってくるので、蓄積したノウハウで美しい織物生地に仕上げていきたいと思っています。チューブの形や機能をしっかり保つためには、織物生地にも強度をもたせる必要がありますし、糸よりも太いチューブを織った生地を巻き取り装置に巻いていけるかな?という不安もありますが、やってみないことにはわかりません。今回も試行錯誤が続きそうです。

『水を織る』制作に用いる西陣織の織機。幅1mまでの織物生地を織ることができる。
『水を織る』制作に用いる西陣織の織機。幅1mまでの織物生地を織ることができる。
『水を織る』のための試し織り。太さの異なる糸とチューブを一緒に織るのは至難の業。
『水を織る』のための試し織り。太さの異なる糸とチューブを一緒に織るのは至難の業。

(鈴木)
2つ目のアップデートは、展示する織物生地の柄と数です。今回は3枚の大きな織物生地をシンボリックに展示して、3枚の柄が連動したり、3種の異なる柄を表示したりして、さまざまなイメージを見せるような構造を検討しています。
柄の表示構造は前回と同様、コンピュータプログラムで制御しますが、柄が増えることでインパクトを与えることができる一方、システムの複雑化という課題もありますね。柄が同期してキレイに現れるよう、チューブの中を通す水と、空気の圧力実験などを私のアトリエで行っています。
さらに、チューブの中を通す色水もアップデートするつもりです。色水は、色が残りにくい特性をもつ絵の具を水に溶かして調色していますが、第一弾では、会期最終日になるとチューブ内部に絵の具の粒子が残ってしまい、透明性が損なわれて浮き上がる柄の色が薄くなってしまいました。今回はそのあたりも改善したいです。

フクオカ機業で、『水を織る』第二弾のコンセプトを解説する鈴木太朗さん。
フクオカ機業で、『水を織る』第二弾のコンセプトを解説する鈴木太朗さん。
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