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KYOTO STEAM 特集「国際アートコンペティション スタートアップ展」第5回:iPS細胞の倫理的問題などをテーマにした映像作品インタビュー:林勇気(映像作家)、三嶋雄太(iPS細胞研究所)

2020 02 26

2020年3~4月に第1回が開催される、アート×サイエンス・テクノロジーをテーマにした文化・芸術の祭典「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-」。同フェスティバルでは、京都市内複数会場にて11プログラムが企画される予定。AMeeTでは、その中から新進気鋭のアーティストと企業・研究機関のコラボレーションにより制作した作品を展覧する「国際アートコンペティション スタートアップ展」に注目し、全7コラボレーションのインタビュー記事を連載する。第5弾となる今回は、映像作家の林勇気氏と、同氏とコラボレーションする京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の三嶋雄太氏にお話を伺った。

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インタビュアー・編集:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
取材撮影:表恒匡
取材日:2020年1月28日(火)

1. 社会とのインターフェース(接点)としての倫理研究

――三嶋さんは、京都大学iPS細胞研究所 (CiRA、通称サイラ) ※1 において、普段どのような研究をされていますか。

(三嶋)
僕が所属しているのはCiRAの金子新研究室です。同研究室は「どうすればよりよい細胞やアンテナが作れるか」といった基礎研究から、「どうすれば細胞を癌化させずに大量培養できるか」といった応用研究、さらに非臨床試験 ※2 、臨床試験 ※3 まで、すべての過程に携わっています。僕は研究室で、iPS細胞から癌だけを攻撃する免疫細胞を作るプロジェクトに参加しています。ドナーさんからiPS細胞を作り、正しく免疫細胞に変え、その免疫細胞に癌だけを認識できるようなアンテナを導入して大量に増やす。それを凍結して医療用製品として製薬会社から販売してもらうというプロジェクトです。
公共の研究所の多くは英名が「Research Center」などですが、iPS細胞研究所の英名は「Center for iPS Cell Research and Application」で、名前に「Application」を冠していますす。「Application」は「応用」という意味ですが、基礎的なリサーチで終わらせず、実用化まで目指す研究組織は珍しく、CiRAの大きな特徴といえます。

CiRA紹介映像

――今回のコラボレーションには、上廣(うえひろ)倫理研究部門の八田太一さんも参加されます。倫理研究部門があるという点もCiRAの大きな特徴ですが、同部門ではどのような研究を行っているのでしょうか。

(三嶋)
CiRAでは幹細胞や遺伝子編集など、一個体の人生、または人類に対して大きな影響を与える研究を扱います。例えば、2018年に中国で遺伝子編集ベビーが生まれ、話題を集めました ※4 。世界には様々な宗教を信仰する方、様々な思想を持つ方が共存しています。中には受精卵を使った研究や遺伝子編集技術に対して「神の領域に踏み込むべきではない」と考える方もおられます。そういった方々の感情を無視して研究を進めることは社会理念に反するし、社会に不利益をもたらすかもしれない。
さらに我々は公的な機関ですので税金でも研究を行っています。研究所の財源にも一部に税金は使われているし、それぞれの先生が文部科学省に研究費を申請する場合もあります。税金を財源としている以上、一研究者や一部の人たちの意志で強制的に推し進めるわけにはいきません。しっかり社会とのインターフェース(接点)を持つことが重要です。
「社会のことを考えている」と口で言うのは簡単ですが、「何%の人がどのように考えているのか」を調査したり、実際に様々な人と対話するためにはそれなりのリソースを割かなければならない。上廣(うえひろ)倫理研究部門はそうしたことに重要性を見出して立ち上げられた、社会とコミュニケーションを取ることに特化した部門で、倫理学の分野で博士をもつ先生や、統計解析を専門とする先生がおられます。

左から三嶋雄太、林勇気
左から三嶋雄太、林勇気

※1 記事末尾のプロフィールを参照。

※2 「医薬品の研究開発において、動物を用いて薬効薬理作用、生体内での動態、有害な作用などを調べる試験。」(“非臨床試験”.公益社団法人日本薬学会.参照2020-02-04.)

※3 「医薬品や治療技術などの人間への影響を調べる科学的試験。」(“臨床試験”.公益社団法人日本薬学会.参照2020-02-04.)

※4 “【論点】中国の科学者がゲノム編集技術を用いて双子を誕生させたという報告について”.京都大学 iPS細胞研究所 上廣倫理研究部門.参照2020-02-04.)

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