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KYOTO STEAM 特集「国際アートコンペティション スタートアップ展」第6回:一滴の血液から広がる世界をミクロな視点で見つめ、描くインタビュー:大和美緒(美術家)

2020 03 06

2020年3~4月に第1回が開催される、アート×サイエンス・テクノロジーをテーマにした文化・芸術の祭典「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-」。同フェスティバルでは、京都市内複数会場にて11プログラムが企画される予定。AMeeTでは、その中から新進気鋭のアーティストと企業・研究機関のコラボレーションにより制作した作品を展覧する「国際アートコンペティション スタートアップ展」に注目し、全7コラボレーションのインタビュー記事を連載する。第6弾となる今回は、株式会社島津製作所とコラボレーションを行う美術家の大和美緒さんにインタビュー。大和さんのアトリエを訪れ、制作過程について話を伺った。

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インタビュアー・編集・撮影:杉谷紗香(piknik)
取材日:2020年1月28日(火)

1. 「反復」で普遍的な世界を表現

大きなキャンバスに、繰り返し赤いドットを描く。あるいは、一定の曲線を画面いっぱい無数に引く。大和美緒さんは、「ドット」や「曲線」など、ある単位やパターンの反復によって画面を覆い尽くし、抽象的なイメージを浮かび上がらせる美術家だ。そこには、画面に向き合った大和さん自身の身体性や、心身のゆらぎが、単純な行為をひたすら繰り返すうちに刻み込まれている。

「作品に、自分の意思や意図ができるだけ“介入”しないように心がけているんです。制作作業に没頭していると、勝手に絵が育っていくような方法論を組み立て、作品が自律して育っていく様子を観察しながら制作しています。とはいえ、完全に自律しているかというと、そうでもなく、どこかで少し私の意識も介在しています。全体のコントロールができるかできないか、というギリギリの線を狙うことが、私の制作における方法論と言えるかもしれません」と語る大和さん。何かを繰り返し描くという制作のルールは学生時代から取り入れていたそうで、

「当時は、手をひたすら動かし、細かい仕事に没入することに安心感を得ていました。学生時代はドットや線のほかに、言葉をモチーフにしたこともありました。白いトルソーに同じ単語をひたすら書いたり、部屋の壁全部を同じ言葉で埋め尽くしたり。
その頃から意識していたのは、最小単位のものを繰り返し描けば、普遍的なイメージに近づいていけるかもしれないということ。『DOT』『LINE』シリーズも、無機的な反復プロセスの結果が画面にあらわれていますが、できあがってから見てみると、地層や鉱物のような有機的なイメージが思い浮かぶような気がします。自然と人との関係を考えながら制作することが多いです」。

「REPETITION RED (DOT)32」
「REPETITION RED (DOT)32」2017 acrylic on window, sunrise
REPETITION BLACK (line)5
REPETITION BLACK (line)5
「REPETITION BLACK (line)5 #A,#B」2018 offset lithograph 各919mm✕623mm

印象的なのは、『DOT』シリーズの鮮やかな赤色。しかし、この赤を選んだ理由を大和さんに聞くと、
「『RED DOT』の色を最初に選んだ理由は、直観でしたが、どこかに必然性を感じていて、いまも同じ色を使い続けています。数年間、制作を続けながら、直観で選んだ意味の背景を模索してきましたが、最近ようやく、“生命の営み”というキーワードが自分の中で立ち上がってきています。たとえば、赤は私たちの血液を連想させる色ですが、いまでも作品を作りながら、『なぜこの色を選んだんだろう?』と考え続けています」。

そんな大和さんと今回コラボレーションするのは、京都を代表する企業の一つ、株式会社島津製作所だ。創業100年を超える計測機器と医療機器のパイオニアとのコラボレーションは、どのように進んでいったのだろう?

「2019年11月にコラボレーションすることが決まって、すぐに島津製作所の広報担当の榎本さんと打ち合わせをして、相談しながら作品プランを練っていきました。島津製作所には、驚くほどたくさんの技術があり、プラン段階でいくつも試してみたいものがありましたね。
たとえば、分子一つ分の重さを測る機械。分子は、モノを構成する最小単位ですが、そんなミクロな世界を緻密に調べる技術がある。そのほか、ノーベル賞受賞に貢献した精密機器や、非破壊検査ができる機械、血管や細胞を調べる医療機器など、さまざまな専門的領域に特化したものが、ほんとうにたくさんありました。
“目に見えないものを、手に取るようにありありと知ることができる仕組みをつくる”という島津製作所さんの技術開発の理念に触発され、私自身が興味を惹かれた技術や機器の中から、具体的な作品プランとして展開できるものを、榎本さんと相談しながら進めていきました。榎本さんは、私の作品コンセプトを理解してくださるのがすごく早い方で、プランの具体化をスムーズに進めていくことができました」。

大和美緒さんのアトリエにて。スタートアップ展で公開される、島津製作所とのコラボレーション作品の一部分と大和さん。
大和美緒さんのアトリエにて。スタートアップ展で公開される、島津製作所とのコラボレーション作品の一部分と大和さん。
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