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KYOTO STEAM 特集「国際アートコンペティション スタートアップ展」第7回:妄想を先端テクノロジーで現実化した令和の“奇祭”インタビュー:市原えつこ(メディア・アーティスト)

2020 03 18

2. 現代的な“伝承”を都市に根付かせたい

企業とのコラボレーションは、これまでにも多数経験しているという市原さん。大学卒業後、会社員として勤務しながら、並行して作品制作にも取り組んだ経歴について話してくれた。

「卒業後、Yahoo! JAPANでUI/UXデザイナーとして5年勤務した後、2016年に独立して、現在はフリーランスとして活動しています。企業の方と商談したり、コラボレーションしたりするのは、これまでの業務で何度も経験してきているので、自分にとっては特別なことではなく平常運転に近いかもしれないですね。
これまでの制作でも、企業だけでなく、ロボットプログラミングやハードウェアの実装などの技術をもったクリエイターと共同制作することが多いです。コラボレーションすることで、自分の得意分野である“妄想”を思う存分、発揮し、実現することができているように思います。

一作家の妄想を、企業がバックアップしてくださった例として紹介したいのは、2016年に発表した『都市のナマハゲ - Namahage in Tokyo』。電通グループのテクノロジー企業ISIDによるオープンイノベーションラボ『ISIDイノラボ』の皆さまとともに『日本のまつり RE-DESIGNプロジェクト』を立ち上げ、その第一弾として発表した映像作品です。大企業とのコラボレーションでは、予算の決裁など調整が大変だったと思うのですが、間に入ってくださった担当の方が協業をがんばってくださったおかげで、自分だけでは作ることのできない超大作になりました」。

『都市のナマハゲ - Namahage in Tokyo』(2016年)
『都市のナマハゲ - Namahage in Tokyo』(2016年)

『ナマハゲ、東京に現る。 Japanese traditional visiting deity "Namahage" appeared in Tokyo...』(YouTubeより)

スタートアップ展では、デジタルハリウッド大学院、株式会社ハコスコとのコラボレーションによる新作を含めたインスタレーションを発表する、と語る市原さん。

「昨年11月に開催した、“キャッシュレス時代の新しい奇祭”というコンセプトの『仮想通貨奉納祭』のアーカイブや新作のVR作品などを展示します。このプロジェクトを始めたのは、『都市のナマハゲ』の制作で得た手応えから、実在する伝承をモチーフにするのではなく、実際に“伝承”そのものを作ってみたくなったのがきっかけなんです」。

市原えつこ+渡井大己《サーバー神輿》(「仮想通貨奉納祭」より。2019年/撮影:黒羽政士)
市原えつこ+渡井大己《サーバー神輿》(「仮想通貨奉納祭」より。2019年/撮影:黒羽政士)

「『仮想通貨奉納祭』では、令和元年という節目の年に、キャッシュレス時代にふさわしい新たな奇祭をつくりあげることを目指して、世界中からビットコインを奉納できる『サーバー神輿』を開発し、参加者でかついで商店街を練り歩きました。また、『バイオ御神体』や『天狗ロボット』など、現代的に解釈した神事をふんだんに取り込んで構成しました。祭りにちなんで“奉納品”を作ってくれたクリエイターやデザイナーたちとのコラボレーションは、新たなコミュニティづくりにつながっていったように感じています」。

「サーバー神輿」が商店街を行き来し、「セイヤ!」という神輿の掛け声は、キャッシュレス時代にちなんで「ペイヤ!」に。(「仮想通貨奉納祭」より。2019年/撮影:黒羽政士)
「サーバー神輿」が商店街を行き来し、「セイヤ!」という神輿の掛け声は、キャッシュレス時代にちなんで「ペイヤ!」に。(「仮想通貨奉納祭」より。2019年/撮影:黒羽政士)

「『仮想通貨奉納祭』を開催するための資金調達は、日本最大のクラウドファンディングサービスReadyforを通して募ったのですが、クラウドファンディング終了後にスポンサードを名乗り出てくださったのもデジタルハリウッド大学院でした。資金面で支援してくださっただけでなく、『仮想通貨奉納祭』のためのあれこれを作るためのスペースとして、学内のデジタルファブリケーションラボを使わせていただけるというオファーもいただいて、本当にありがたかったです。
『変なことをしているクリエイターを応援しよう』という校内の雰囲気が自分と合うのか、デジタルファブリケーションラボは本当に居心地良かったです。ラボで制作している学生さんも皆、優秀で、やりとりしながらたくさん刺激をもらいました。『バカにされよう。世界を変えよう。』というデジタルハリウッド大学院のキャッチコピー通りのバイブスがあふれるラボで、開催に向けて制作に集中して取り組むことができました」。

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